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魅力的な舞台を設計した上田早夕里著『華竜の宮』

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 2011年の第32回日本SF大賞受賞作品である、上田早夕里著『華竜の宮』を読んだ。同回の大賞候補作品には『魔法少女まどか☆マギカ』も入っていたのだが、そうした有力作品を押しのけて満場一致で大賞に選ばれたというだけあって、構想力がすばらしい。

 舞台は海面上昇で陸地の多くが失われた未来の地球。陸で住む人々と、海で住む人々との軋轢がテーマである。人間を補佐するアシスタント知性体、海の住民たちが操る魚舟……など魅力的な設定の数々。

 ただ一方で、設定は面白いのだが、劇的な展開や驚きの結末といったものはみられない。SFというのは構想力であって、設定を語り終えてしまうと、とたんに輝きを失ってしまうものなんだなと感じたりもした。

 もちろん、これはほかのジャンルの小説でも言えること。そもそも人との付き合いでも、人となりを理解すると、新鮮な驚きを感じることがなくなってしまうことはよくある話である。

 そういう意味では、設定の深みと物語としての面白さをあわせ持った貴志祐介著『新世界より』はすばらしかったんだなと改めて思うところである。

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)