通信教育のZ会とアニメーション作家の新海誠さんがコラボして生まれたアニメCM『クロスロード』。離島から進学での上京を目指す女の子と、都会でバイトしながら進学を目指す男の子を描いたわずか120秒の物語です。
ブコメなどを見ていると、細かなこだわりがたくさんあるようなので、箇条書きのような形でまとめてみます。筆者の推測も混じっているので、正しくない部分もあるかもしれませんが、そのあたりはご容赦いただければ。
冒頭、女の子が住む海のシーンからスタート。離島という設定らしいのですが、具体的な場所は分からないですね。
男の子は都会に住んでいます。JR中央線が走っていて、線路がこれだけ並んでいると言うことは新宿駅ですかね。
(追記)「三鷹電車区ではないですか」というコメントをいただいたので、行ってみました(→「Z会×新海誠のアニメCM『クロスロード』の舞台になった三鷹電車区に聖地巡礼してきた」)
男の子がバイトしているコンビニは、セブンイレブンかな。都心のコンビニで、高校生の店員ってあんまり見ないんですけどね。
男の子の自宅には、勉強机がキッチンのすぐ側にあります。ということは一人暮らしなのかなと思ったのですが、棚に皿がたくさん入っているので、そうではなさそう。
カレンダーには2014の文字。男の子が半袖であることから、2014年夏の話であることが分かります。『クロスロード』は国立大学の前期試験に合わせて公開されたのですが、来年度の受験生へのPRということが明確です。
男の子が向かっているのは、Z会の受験総合コース。
でも、Z会のサイトを見ると、受験総合コースって一番下のコースなんですよね。最終的に東大を受験するわけですが、Z会的には夏休みに受験総合コースを真面目にやれば、東大に受かると訴えたいのかもしれません。
一方、離島の女の子は答案をポストに入れるシーン。封筒の「答案提出係行」を、「答案提出係御中」にちゃんと書き直しているあたりに育ちの良さを感じます。
男の子が投函するのは渋谷駅前のポスト。JR山手線が見えるところからすると、宮益坂下の信号付近でしょう。UNIQLOがUNIQUE、109が100、H&MがH&Nと、微妙に変わっています。
Z会の添削者がいるのは、Z会本社がある静岡県三島市でしょう。窓から富士山が見えますね。
主人公たちがずっと半袖だったのが、中盤にきて長袖に変化。時間の流れを感じさせてくれます。
よく見ると、女の子の部屋に鉄道の路線図が貼ってあります。離島で鉄道はないはずなので、恐らく志望校付近のものでしょう。関東っぽいのですが、該当する路線が見つからないんですよね。
(追記)こちらもコメントをいただいたのですが、東京メトロを含めた路線図で、浦安周辺の部分のようです。
受験シーズンに雪が降る離島。今年のような異常気象はないとすると、日本海側の離島と考えるのが正しそうです。瀬戸内の可能性もあるといえばあるのですが。『秒速5センチメートル』の舞台となった種子島は外れそう。
新海さんのツイートによると、架空の場所ということですが、ゼロから作り出すのは難しいので、どこかにモデルはありそうですね。
海帆の島については、完全に架空の場所なんです。なんだかすみませんー! RT @miya0327: 新海監督、こんばんわ。クロスロードの美帆さんが住んでる島が気になって気になって。自分なりに調べてみたのですが、どうもしっくりきません。映像の中の情報から広島県の大崎上島という島かな?
— 新海誠 (@shinkaimakoto) 2014, 2月 27
男の子が住む東京も雪。電車は東急東横線の渋谷行。電信柱に広告が載っている「輪和」はこの店かも。
試験を受けるのは、東京大学駒場キャンパス。8時10分に開門した瞬間です。同じシーンが動画であがっています。調べてみると、2012年ごろから開門時間は8時20分に繰り下がっているようです。
東京大学では文科一類・二類・三類は駒場キャンパス、理科一類・二類は本郷キャンパス、理科三類は弥生キャンパスで受験するので、この時点で主人公たちは文系受験することが分かります。
東大入試の1時間目は国語。ただ、配点120点なのは合っているのですが、過去問と見比べると、縦書きなのが横書きになっているなど、結構違いがあるような。
作中に明確に受験大学名が出ていないので、東大がモデルにはなっているけど、東大を受験しているわけではないですよ、というエクスキューズなのかもしれません。
一番、「おっ」と思ったのがここ。受験生の半分以上を女子が占めています。
確かに東大でも文系は女子が多めなのですが、2010年の場合、合格者の女子の割合は文一が16.7%、文二が9.5%、文三が32.3%と半数に遠く及びません。見栄えを考えると、女の子を多くするのは仕方のないことですが。
合格発表を見に行く女の子。急にコミカルなキャラになるのは、羽海野チカさんの作品っぽいです。
男の子の方も合格発表を見に行きます。「行ってきます」と言い残していることからすると、家族と同居してそう(大穴で彼女と同居)。ということは、前半で使っていた勉強机は、リビングの共用机なのかもしれません。
JR御茶ノ水駅近くの聖橋から東を望んだ風景。もう少し引きで撮ると、秋葉原の電気街が見えます。
さっき添削していたZ会のおっちゃんがなぜかJR中央線に。スーツなので出張ですかね。もしかすると、偉い人なのかも。
JR御茶ノ水駅は、一応、JRでは東京大学本郷キャンパスの最寄り駅になります。ちなみにホームにある学部問吉の広告は、Z会の広告です。
そして、合格発表の掲示板で文一(法学部)を受験していたことが判明。離島の女の子が何を思って、この選択をしたのかが気になるところ。
「別に幸せになりたいわけじゃないし、確かな約束が欲しいわけでもない。それよりももっと遠くにあるはずのどこか、私はそこに行きたいんだ」という冒頭のモノローグから想像するに、単純に一番難しいところ(文系で)に挑戦したいという気持ちがあったからなのかもしれません。文一だと、進振りで法学部以外にも行きやすいですし。
ちなみに総合図書館工事のため、2014年度から3年間は本郷キャンパスでの合格発表は行われないようです。
ぶつかったことから、ちょっといい雰囲気になる主人公たち。
末永く爆発してください!
都心だと普通は塾に行くけどバイトで行けないので、いつでもできる通信教育、離島だと塾がないので通信教育という流れ。若干苦しいのですが、高校生がZ会を利用する必然性を作り出すに当たっての苦心が垣間見えました。実際は進学校の生徒が塾と併用するパターンが多いと思うんですけどね。
アニメーションがビジネスとして成立するにあたっては、こうした企業とのタイアップCMが増えていくのも大切なこと。新海さんに限らず、ほかのアニメーション作家の作品ももっと見てみたいですね。
15秒バージョンや30秒バージョンのCMもあるようなので、張っておきます。