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ニコニコユーザーチャンネルの拡大とAppBank・マックスむらい部の衰退

 動画界の王者YouTubeとしのぎを削っているドワンゴのniconico。そこで扱っているサービスに有料課金モデルのニコニコチャンネル(ブロマガ)というものがあります。

 これは特定のニコニコチャンネルに会員登録し、月額料金を支払うと、会員限定の生放送や動画、ブログを閲覧できるというもの。

▼ニコニコユーザーチャンネルの拡大

 ニコニコチャンネルは2012年8月のサービス開始以降じわじわと成長し、2015年4月には有料登録者数が30万人を突破したというリリースをドワンゴが発表。その時、僕もニコニコチャンネルの収益性をYouTubeと比較したエントリを書きました。

 →ニコニコチャンネルの収益性をYouTubeと比較してみた

 それから8カ月、ちょっと状況が変化したと思ったので、改めて書くことにしました。きっかけとなったのは、Twitterで見かけた2015年10月28日時点のニコニコチャンネルの有料会員数ランキング(下表)。

 ニコニコチャンネルは当初は有名企業・団体にしか開設が認められなかったのですが、2013年12月以降、個人も“ユーザーチャンネル”を開設できるようになりました。そのユーザーチャンネルの1つである「キヨの人生あまちゃんネル」が有料会員数でトップになっていたのです。

順位チャンネル名会員数月額料金月間収益
1 (ユ)キヨの人生あまちゃんネル 16656 540円 899万4240円
2 マックスむらい部 16293 540円 879万8220円
3 (ユ)M.S.S.Projectチャンネル 16020 540円 865万800円
4 animeloLIVE! 11323 1100円 1245万5300円
5 (ユ)ニコレトチャンネル 9434 540円 509万4360円
6 CINDERELLA PARTY! 6985 540円 377万1900円
7 ニコニコゲーム実況チャンネル 5494 540円 296万6760円
8 鳥海浩輔・安元洋貴の禁断生ラジオ 5473 540円 295万5420円
9 アイドルマスター ミリオンラジオ! 5395 540円 291万3300円
10 週刊文春デジタル 5293 864円 457万3152円
11 MEGA地震予測チャンネル 4745 216円 102万4920円
12 堀江貴文 ブログでは言えないチャンネル 4474 864円 386万5536円

 2015年4月のリリースには「有料登録による平均収益受取額(年間)はユーザーチャンネル上位3チャンネルは4909万6152円」とありました。上位3チャンネルが指すのは「キヨの人生あまちゃんネル」「M.S.S.Projectチャンネル」「ニコレトチャンネル」で、月額料金などから逆算すると当時の会員数は平均7576人だったことが分かります。

 それから半年経った10月28日時点で、その3チャンネルの会員数は平均1万4036人とほぼ倍になっています。有料登録者数40万人突破のリリースがまだ出ていないことから推測するに、全体の伸びを大きく上回っていると言えるでしょう。

 もちろんすべてのユーザーチャンネルが伸びているわけではないですが、企業が運営するチャンネルと違い、ユーザーチャンネルでは出演者が直接収益を受け取れるため、何としてでも盛り上げてやろうという出演者の情熱を、放送頻度や内容から感じられることがあります(内容に賛否はあります)。

 最近では夜になると、ニコニコ生放送のトップページに、多くのユーザーチャンネルを含む数十のアイコンが並びます。どのチャンネルの会員にもなっていない僕のようなユーザーとしてはウザいと感じることもあるのですが、そうなった背景にはユーザーチャンネルの急成長があるのでしょう。

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▼AppBank・マックスむらい部の衰退

 ユーザーチャンネルが拡大する一方、苦しんでいるチャンネルもあります。その代表格が10月に東証マザーズに上場したAppBank(アップバンク)が運営する「マックスむらい部」。

 2014年6月に開設されたマックスむらい部は、ドワンゴが中條ディレクターや北野プロデューサーを送り込むといった特別扱いをしたこともあって、わずか2カ月で会員数が1万人を突破(リリース)。

 新規上場申請のための有価証券報告書を見ると、2014年12月31日時点で1万5000人(1000人未満切り捨て、報告書の11ページ目)、2015年7月31日時点で1万7000人(1000人未満切り捨て、報告書の6ページ目)と、その後も増やしています。このあたりではニコニコチャンネルの会員数トップだったでしょう。

 しかし、上場後に出した成⻑可能性に関する説明資料(下画像)によると、2015年10月10日時点の会員数は1万6526人と減少に転じています。前述の表はこの2週間半後なのですが、会員数は1万6293人と減少傾向は続いています。

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 減少の背景としては課金疑惑や情報流出、横領などAppBankをめぐる騒動もあるでしょうが、最大の原因はメインで取り上げているパズドラ(パズル&ドラゴンズ)の人気のピークアウトでしょう。モンスト(モンスターストライク)やクラクラ(クラッシュ・オブ・クラン)にも手を広げていますが、パズドラで落ち込んだ分を取り戻せていません。

 さらに11月6日に人気出演者のコスケさんが退社したことで、ガチ攻略がやりにくくなりAppBank運営のYouTubeチャンネル「パズドラ究極攻略TV」の登録者数が急減。コスケさんはAppBankのニコ生には出演し続けているのですが、マックスむらい部にも影響は出ているでしょう。

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 まだまだ会員数は多いとはいえ、AppBankも危機感を覚えているようで、毎週月曜のパズドラ放送「がんばれ!マックスむらいのパズドラ攻略!」を、10月に「パズドラ登竜門」へリニューアル。11月のAppBankゲーム祭り Vol.0での人狼生放送では本戦部分を有料、退場者部分を無料にして(普通は逆にする)、非会員の満足度を落としてでも会員を増やそうとする必死な姿勢もうかがえました(さすがにマズいと思ったのか12月のAppBank ゲーム祭り Vol.1では逆になった)。

 ただ、いろいろ問題はありますが、キャラクターの立て方や進行の慣れ、徹夜放送も辞さないブラックさ(?)は、ほかの企業が真似しにくいのは事実。僕も小さいながらもメディアを運営している身としては、参考にしている部分はあります。

 2016年3月に上場後初の株主総会が開催されるAppBank。僕も先週末の権利確定日に最低単元購入したことで参加できるので(今日の寄り付きで売却しましたが)、それまでにどういう策を打ってくるのか注目しています。

▼追記

 2015年1月14日にニコニコチャンネルの有料会員数40万突破のリリースが出たので追記を。

 →ニコニコチャンネルの有料会員数が40万突破、上位5チャンネルの平均売上1億円(株式会社ドワンゴ)

 有料会員数のこれまでの増加のペースは以下の通り。

2012年8月21日 サービススタート

2013年10月27日 10万人(432日間)

2014年8月14日 20万人(291日間)

2015年4月14日 30万人(243日間)

2015年12月末 40万人(12月31日に達成として261日間)

 30万人まではペースアップしているのですが、ここにきてペースダウンしてきましたね。あと上位30チャンネルを見ると、やはり「幕末志士」「牛沢の牛沢まみれ」などのユーザーチャンネルが増えています。「めいこいファンクラブ」「LOVE&ART」といった乙女系コンテンツのチャンネルが伸びているのが「おっ」というところですね。

 それから知らないうちに「マックスむらい部」が「AppBankの生放送チャンネル」と名前を変えていました。村井さんへの風当たりの強さから変えたのだと思うのですが、そこは本質的な部分じゃないんじゃないかなあと思ったりはします(村井さんが退社するからだったりしたら驚きですが)。