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coly株主総会2022レポ|中島瑞木社長「二次創作については見る専門で、私はしていない」

 4月27日10時から行われたcoly(コリー)の株主総会。

直近経営資料 2022年1月期決算短信決算説明会資料決算説明会質疑応答決算説明会書き起こし上場申請資料
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回株主総会 今回が上場後、一般株主も参加できる初めての株主総会

 colyは2021年2月に上場したばかりで、今回が一般株主も参加できる初めての株主総会。

 女性向けスマホゲームが事業の中核で、初作品『ドラッグ王子とマトリ姫』がスマッシュヒット。その後、『ドラッグ王子とマトリ姫』の世界観を広げた『スタンドマイヒーローズ』が大ヒット、続く『魔法使いの約束』も大ヒットさせて、上場に至りました

 大会社からの受託案件ではなく、オリジナルIPを作り出して、成長してきたというのはかなりスゴイです

 個別作品を見ていくと、アイデアが光る部分があります。

 出世作となった『スタンドマイヒーローズ(スタマイ)』はまず声優の豪華さが驚き。ベテランから若手まで実力派がそろっています。

 特に花江夏樹さんは当時すでにいくつか主役を演じていたとはいえ、Twitterのフォロワー数的にはまだ中堅。竈門炭治郎役を演じた鬼滅の刃ブームの前から準主役に起用しているのが目を引きます

 初めて声優を起用する作品でこんな人選ができるのはどうなってるんだと思うのですが、経緯を知りたいところです

 スタマイはパズルに女性向け要素を乗せたゲームなのですが、パズルに3マッチパズルを選んだのも慧眼。

 当時、女性ユーザーが多かったLINE ポコポコやLINE POP2といったLINEゲームとシステムが同じなので、あまりゲームに馴染みのない女性でも入りやすかったんですよね。LINE ポコポコなどではステージをクリアしても大した報酬はもらえないのですが、スタマイではご褒美にストーリーが見られるというだけでも喜んだ人は多いはずです

 パズルが苦手な人でも課金するとステージを強制クリアできる仕組みなのも、女性向けゲームらしい優しさ。

 システムとしてはジークレストの『夢王国と眠れる100人の王子様』(2015年リリース)を参考にしている雰囲気もありますが、スタマイは登場人物の年齢層が高めなのが特徴ではあります。

 直近タイトル『魔法使いの約束(まほやく)』はファンタジー世界が舞台。

 そして、まほやくの育成システムはパワプロと同じ――つまりウマ娘と同じです。まほやくは2019年11月リリースで、2021年2月リリースのウマ娘の1年以上前なので、システム採用の目利きもすごいなと思ったりしました。

 ウマ娘と同じく、育成にさまざまな男性キャラを参加させられるので、そこでさまざまな関わりを生み出せます。

 まほやくの特徴は“恋愛要素なし”をうたっていること。

 それで女性向け作品が成立するのかという感じですが、恋愛要素をなくすことで、逆に夢女子(好きな男性キャラと自分の恋愛を好む)や腐女子(男性キャラ同士の恋愛を好む)の想像を喚起できる側面があるとのこと。主人公含め、さまざまなキャラが関わり合う育成システムとの相性がいいですね。

 ただ、上場申請資料に「腐女子がメインターゲット」と書いてしまったがゆえに、「私は普通にゲームの世界を楽しんでいるだけなので、そういう側面があると公式で明言しないでください」と、一般ユーザーの反発を招いてしまったこともありました(後にお詫びのリリースを出しています)。投資家としては説明してもらえてありがたいのですが、この辺は難しいところです。

 最新の有価証券報告書ではこんな感じに説明を変えています。

 実際はどうなっているのかと、ピクシブでの主な二次創作の数を見ると、確かにまほやくのBL作品はそこそこ多くなっています。なお、coly作品は小説の二次創作の割合が高めですが、識者いわく「夢女子作品は自分のイラストを出せないため、二次創作は小説に偏りがち」とのことなので、夢女子が多いとも言えるかもしれません。

 二次創作の盛り上がりは、公式のストーリー更新の合い間を埋める役割も果たすので、各社ともガイドラインを設けて、二次創作をしやすくしています。ちなみに女性向けゲームの競合『ツイステッドワンダーランド』も恋愛要素はありません。

タグ(作品)名 イラスト マンガ 小説 (イラスト+マンガ)÷小説
【2015~】ドラッグ王子とマトリ姫 462 73 2811 0.11
【2016~】スタンドマイヒーローズ 4966 775 12847 0.44
腐タマイ(BLタグ) 76 20 490 0.19
スタマイ夢(夢タグ) 4 0 165 0.02
【2018~】オンエア! 1948 164 1338 1.57
OA!【腐】(BLタグ) 468 162 1112 0.56
【2019~】魔法使いの約束 6616 844 5973 1.24
まほや腐(BLタグ) 3554 1504 9928 0.50
まほやく夢(夢タグ) 24 7 529 0.05
【2015~】あんさんぶるスターズ!(他社) 69474 5881 19211 3.92
あんさん腐るスターズ!(BLタグ) 30666 10407 47476 0.86
【2015~】刀剣乱舞(他社) 276163 44020 187270 1.70
刀剣乱腐(BLタグ) 73597 32136 155716 0.67
刀剣乱夢(夢タグ) 9450 5092 127637 0.11
創剣乱舞(独自解釈タグ) 1743 1308 54453 0.05
【2020~】ツイステッドワンダーランド(他社) 66248 6851 13927 5.24
ツイ腐テ(BLタグ) 20718 11924 64511 0.50
【2018?~】ウマ娘(一般作品、他社) 144475 14800 62863 2.53

 女性向けゲームの中での位置付けを見ると、Twitterのフォロワー数ではcoly作品は中堅どころ。

 これはスマホゲーム全体にも言えることですが、黎明期はアイデア次第で有象無象が成り上がれたのですが、現在は作り込みが求められるようになっており、女性向けゲームの開発費は高騰。3Dを使用したビジュアル、イラストやストーリーの高品質化だけでなくコンプライアンス面、トレパクが起こらないような体制作りなども必要になってきています。

 IPの強さも重要で、ディズニーという強力なIPで丁寧に作り込まれている『ツイステッドワンダーランド』が伸びていることが、その象徴でしょう。

 colyはまほやくのメインストーリーの更新間隔が長かったことで批判されており(ストーリーメインのゲームではよくある)、開発費や開発体制の未成熟さが課題となっています。アニメ化や舞台化、コラボなど、大規模化するメディアミックスに対応できるようにすることも大事ですね。

 スマホゲームのアニメ化では「キャラが多すぎて分からん」問題がよく発生して、スタマイのアニメ化でもそのミスを犯していたので、戦線が広がる中でクオリティが担保できるかは心配されるところです。

 経営に話を戻すと、取締役が全員30代、社長と副社長が双子の姉妹、もう一人の社内取締役も将棋の人気若手棋士と名前が同じという面白構成(?)が特徴。

 上場まで投資資金を入れずに、創業役員3人だけが株を持っていたという珍しいパターン。上場後の2022年1月末時点でも、社内取締役3人が7割以上の株を保有しています(中島瑞木社長32.53%、中島杏奈副社長32.53%、佐々木大地取締役7.23%)

 一方で2022年1月期の業績は増収減益。100人ほど採用して販売管理費及び一般管理費が前年度比6億1600万円増の18億800万円と大幅に増加した一方、売上がほぼ横ばいだったことが要因。期待値が高すぎたことから、株価が上場時の8450円から2000円ほどにまで右肩下がりに暴落しているのが大変なところです。

 来期予想はゲームの売上には振れ幅が大きいことや、店舗運営でコロナの影響が見通しにくいことなどから、非開示です

ここ一年の主な動き

2021年2月26日 東証マザーズ上場

5月10日 『スタンドマイヒーローズ』OVA制作決定

9月14日 フジテレビジョンと協業開始

12月17日 堀江貴文氏らが関わるロケット開発ベンチャーのインターステラテクノロジズに出資

2022年2月28日 「オリジナルIP×VRゲーム×コミュニティ」をグローバルに展開する MyDearestに投資

3月18日 『魔法使いの約束』メインストーリー第2部の配信を開始

3月30日 「ドラッグ王子とマトリ姫 for Nintendo Switch」開発決定

4月1日 初の常設店舗「coly more! 池袋 PARCO 店」オープン

春 新作スマホゲーム「&0(アンドゼロ)」リリース予定

年内 『スタンドマイヒーローズ』大型リニューアル

冬以降 フジテレビジョンとの協業によるゲームのリリース

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 マザーズ上場で資金調達したことにより、手元資金を表すネットキャッシュ(現預金+短期有価証券-有利子負債)は約70億円に。調達資金はゲーム運営に10~15億円、広告宣伝に5~10億円、研究開発に5~10億円、プラスで人材採用に使っていくようです

- 2020年1月期 2021年1月期 2022年1月期
営業CF -0.14億円 +21.35億円 +5.65億円
投資CF -0.75億円 -0.02億円 -0.33億円
財務CF -0.06億円 -0.06億円 +37.87億円
- 2020年1月末 2021年1月末 2022年1月末
現預金 4.53億円 25.8億円 68.99億円
短期有価証券 0円 0円 0円
有利子負債 0.15億円 0.09億円 0.03億円
ネットキャッシュ 4.38億円 25.71億円 68.96億円

議案

(1)定款一部変更→事業目的に飲食店経営や雑貨販売、FC運営などを追加&株主総会資料の電子提供

(2)取締役4名選任→近藤氏は2021年5月末に一身上の都合で辞任

前年株主総会 今回候補者
中島瑞木 中島瑞木(代表取締役社長、モルガン・スタンレー出身)
中島杏奈 中島杏奈(代表取締役副社長、産経新聞出身)
佐々木大地 佐々木大地(ゲームプロデューサー)
▼近藤俊彦(管理本部長)  
【社外】秋山裕俊 【社外】秋山裕俊(レイヤーズ・コンサルティング)

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#coly株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます