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サイバーエージェント株主総会2022|藤田晋社長「(ABEMAでカタールW杯を全試合無料放送したことで)道を歩いていても、たくさんの人から感謝される」

 12月9日13時から行われたサイバーエージェントの株主総会。

 ネット広告からゲームへと事業を拡げ、ここ数年はネットテレビ「ABEMA」に投資。今年は『ウマ娘』で得た資金を、カタールW杯の放映権に突っ込んでいます。

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前回 サイバーエージェント株主総会2021|藤田晋社長「GoogleやFacebookとは大きなサービスを一つ当てているかが決定的な差になっている。ABEMAへの注力は、もうひとつ大きな会社になるための先行投資」

 業績は増収減益。来期は増収減益見込みです

 事業別にみると、創業時からのインターネット広告事業は増収増益と堅調。

 電通のレポートによると、2021年のインターネット広告費は2兆7052億円なので、シェアは10%強。ただ、DXへの投資もあってか、ここ数年利益率が減少しているのが気になるところ。

 一方、ウマ娘の登場で前期に大きく伸びたゲーム事業は減収減益

 直近数カ月のセールスランキングを見ると、ウマ娘は決して悪くはありません。

 ただ、モンストやプロスピといった他社人気ゲームのほか、新しくリリースされる作品にも押されており、ウマ娘に次ぐ規模と推測されるグランブルーファンタジーも売上が落ちてそう。2020年リリースのプロジェクトセカイもそこそこ好調ですが、セガとの共同運営なので売上・利益は減るんですよね。

 国内スマホゲーム市場の成長が近年鈍化しているので、ゲーム事業は海外展開に成功しないと大きく伸びることは難しいかもしれません。

 ABEMAに投資中のメディア事業は、赤字ではあるものの増収増益。

  ここ2年で売上が急増しており、その最大の要因は周辺事業のWINTICKET。競輪やオートレースなどの公営競技をライブ映像を見ながら、賭けられるサービスです。「フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.朝倉未来」など、格闘技のペイパービュー(PPV)の売上増加も目立っています。

 ABEMAをサービス開始して以来、毎年100億円台後半の営業赤字を出していたのですが、今期は124億円の赤字にとどめています。

 注目されているのが200億円とも言われるカタールW杯放映権への投資

 ただし、無料放送のため、視聴そのもので売上をあげることはできません。ABEMAをメディアとして確立させることや、配信技術の向上などで、長期的に売上・利益に貢献することを狙っているようです。

 サイバーエージェントに対する好感度も上がってるので、直接収益はあがらなくても、営業や採用などにプラスの効果もあるように思います。

ここ一年の主な動き

2022年2月18日 アプリ『夢職人と忘れじの黒い妖精』配信開始

3月15日 アプリ『プラオレ!~SMILE PRINCESS~』配信開始

4月28日 KADOKAWAとの共同プロジェクト「アメカド」を開始

6月19日 『Yogibo presents THE MATCH 2022』那須川天心 対 武尊

6月29日 子会社のマイクロアドが上場(保有比率減少で持分法適用関連会社に)

8月6日~ ABEMAで「プレミアリーグ」 2022-23シーズン放送

9月25日 『超RIZIN』フロイド・メイウェザー 対 朝倉未来

11月17日 ABEMAトップ・藤田晋社長を直撃インタビュー「W杯全64試合を“無料生中継”する理由」そして「思い描くスポーツ観戦の未来像とは」(Number Web)

11月30日 アプリ『ドラガリアロスト』サービス終了

11月20日~12月18日 2022 FIFAワールドカップ

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 2021年の『ウマ娘』のヒットで手元資金(ネットキャッシュ)が大幅増。

 手元資金が多いと経営は安定するのですが、あまり多いと「資本効率が悪い! 使わないなら株主還元しろ」と、株主から怒られるんですよね。サイバーエージェントも上場直後、上場で調達した資金をため込んでいたら、村上ファンドからキレられたことがあります。

 サイバーエージェントは藤田晋社長の持ち株比率が17.5%に過ぎないので、機関投資家の要望が通る可能性があります。過去には社外取締役の比率が低いことから、藤田晋社長の取締役選任にノーが推奨されて、否決されかけたことも

 200億とも言われるカタールW杯の放映権が「割に合うのか」と言われていたりもしますが、「株主からの圧力で手元資金を配当として還元するよりはいい」という判断もあるんじゃないかとは思います。

- 2020年9月期 2021年9月期 2022年9月期
営業CF +370.2億円 +1096.0億円 +179.4億円
投資CF -166.2億円 -285.3億円 -314.1億円
財務CF -25.9億円 +3.7億円 -28.0億円
- 2020年9月末 2021年9月末 2022年9月末
現預金 1023.6億円 1840.8億円 1680.3億円
短期有価証券 0円 0円 0円
有利子負債 414.3億円 424.3億円 262.2億円
ネットキャッシュ 609.3億円 1416.4億円 1418.0億円

議案

(1)剰余金処分→期末配当を1株につき14円に

(2)定款の一部変更→株主総会資料の電子提供措置

(3)取締役(監査等委員である取締役を除く。) 5名選任

前年株主総会 今回候補者
藤田晋 藤田晋(創業者、代表取締役社長)
日高裕介 日高裕介(共同創業者)
中山豪 中山豪(全社機能管轄)
中村恒一 中村恒一(社外、元リクルート副社長)
高岡浩三 高岡浩三(社外、元ネスレ日本CEO)

(4)ストックオプションとして新株予約権を発行→社内取締役3人にストックオプション

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#サイバーエージェント株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

参考に読んだ本

ネット興亡記 敗れざる者たち (日本経済新聞出版)