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KADOKAWA株主総会2024レポ|夏野剛社長「サイバー攻撃の事業への影響については試算に至っていない。整い次第、発表する」

 6月18日14時から行われたKADOKAWAの株主総会。

 出版の角川グループとニコニコのドワンゴが合併して誕生した会社ですが、近年はゲームや教育など事業が多角化。ただ、足元ではサイバー攻撃で全社的に大変なことになっています。

直近経営資料 2024年3月期決算短信決算説明会資料中期経営計画
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回 KADOKAWA株主総会2023レポ|夏野剛社長「昨年の事案(東京五輪贈賄)もあったが、対コンシューマーというより、世界中の版元やライセンシーにとって存在感のある名前なので、今現在は社名変更等は考えていない」

 業績は増収減益。5月9日の通期決算発表時点では、来期は増収増益見込み。ただ、サイバー攻撃の影響が結構出てくるんじゃないかとは思います。

- 売上 営業利益 純利益 PER PBR 時価総額
KADOKAWA・22年3月期 2212億円 185億円 140億円      
KADOKAWA・23年3月期 2554億円 259億円 126億円      
KADOKAWA・24年3月期 2581億円 184億円 113億円 28.6倍 2.01倍 4042億円
サイバーエージェント・24年9月期予想 7500億円 300億円 80億円 61.6倍 3.32倍 4932億円
スクウェア・エニックスHD・24年3月期 3563億円 325億円 149億円 19.3倍 1.71倍 5527億円

※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績

 セグメント別にみると、売上は出版・IP創出>アニメ・実写映像>ゲーム>Webサービス>教育・EdTechの順ですが、営業利益は出版・IP創出>ゲーム>アニメ・実写映像>教育・EdTech>Webサービスの順。

 『ELDEN RING』や『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』のヒットが、ゲーム分野の好業績のけん引役となっています

 売上上位タイトルをみると、KADOKAWAのここ10年ほどの売上をけん引してきた『ソードアート・オンライン』が3位にランクダウン。同じくWeb小説発の『無職転生』が1位、絵本の『パンどろぼう』が2位となっています。

 KADOKAWAの場合は自前の雑誌などで育てた作品ではなく、小説投稿サイトなどでの人気上位を引っ張ってきた作品が目立ちます。

 なお『【推しの子】』は『週刊ヤングジャンプ』(集英社)の作品ですが、アニメでは製作委員会にKADOKAWAが入っています。

 目下の課題は、ニコニコを中⼼としたサービス群を標的としたサイバー攻撃。ニコニコだけではなく、出版事業や経理システムなどにも影響が出ているようです。

 復旧には1カ月以上かかる見込みで、補償も2カ月分行うとのこと。

 ニコニコが属するWebサービス分野の2024年3月期売上は213億円なので、2カ月分の売上だとここだけで35億円が失われる計算。

 KADOKAWAの営業利益は数百億円規模で、3月末時点の現預金も798億円あるので、致命傷になることはなさそうですが、影響が大きくなるとヤバいですね。

ここ一年の主な動き

2023年4~6月 アニメ『【推しの子】』放送

8月25日 『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』発売

2024年1~6月 アニメ『ダンジョン飯』放送

1月29日 漫画家・芦原妃名子さんが死亡 「セクシー田中さん」(小学館)など連載(日テレNEWS NNN)

3月1日 ニコニコのプレミアム会員料金を月550円→790円に値上げ

4月 「KADOKAWAアニメ・声優アカデミー」開校

5月15日 Visaでのニコニコプレミアム会員料金の決済一時停止について

5月29日 社員の主体的な学びと自律的なキャリア形成支援のため、資格取得支援の対象資格を139種へ拡大、支援金上限を最大1,000万円に

6月8日 サイバー攻撃でシステムがダウン

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 ここ数年、KADOKAWAは手持ち資金に窮していたのですが、2022年3月末にプラスになりました

- 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
営業CF +217億円 +175億円 +82億円
投資CF -79億円 -162億円 +34億円
財務CF +266億円 +307億円 -658億円
- 2022年3月末 2023年3月末 2024年3月末
現預金 975億円 1313億円 798億円
有利子負債 652億円 652億円 253億円
ネットキャッシュ 322億円 661億円 544億円

議案

(1)資本準備金の額の減少→機動的な資本政策に備えるため、資本準備金406億円のうち300億円を減少し、その減少額全額をその他資本剰余金に振り替え、減少後の資本準備金の額を106億円とする。

(2)取締役14名選任

前年株主総会 今回候補者
夏野剛 夏野剛(代表取締役社長、ドワンゴ社長)
山下直久 山下直久(代表取締役、角川書店系)
村川忍 村川忍(営業・マーケ、角川書店系)
加瀬典子 加瀬典子(アスキー総研社長)
川上量生 川上量生(元社長、ドワンゴ顧問)
周欣寧 周欣寧(海外担当)
【社外】鵜浦博夫 【社外】鵜浦博夫(元NTT社長)
【社外】ジャーマン・ルース マリー 【社外】ジャーマン・ルース マリー(海外)
【社外】杉山忠昭 【社外】杉山忠昭 (元花王法務・コンプラ部門統括)
【社外】笹本裕 【社外】笹本裕(元Twitter Japan代表取締役)
【社外】芝昭彦 【社外】芝昭彦(弁護士)
【社外】宇澤亜弓 【社外】宇澤亜弓(公認会計士)
【社外】M・デービッド 【社外】M・デービッド(元ディスカバリーJP社長)
  △【社外】岡島悦子(プロノバ社長)

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#KADOKAWA株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます