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サイバーエージェント株主総会2023|藤田晋社長「ウマ娘の大ヒットで大きく上がった株価がようやく落ち着いた。増収増益を目指すよう全社的に意思統一しており、しっかり何期かこなしていくことで、株価を上昇させていく」

 12月8日13時から行われたサイバーエージェントの株主総会。

 ネット広告からゲームへと事業を拡げ、ここ数年はネットテレビ「ABEMA」に投資中。直近では藤田晋社長が、2026年にサイバーエージェントの新社長を内部昇格させる方針を発表したことが話題となっています。

直近経営資料 2023年9月期決算短信決算説明会資料CyberAgent Way 2022有価証券報告書
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回 サイバーエージェント株主総会2022|藤田晋社長「(ABEMAでカタールW杯を全試合無料放送したことで)道を歩いていても、たくさんの人から感謝される」

 業績は増収減益。創業以来、26期連続で増収で、来期も増収増益見込みです

- 売上 営業利益 純利益 PER PBR 時価総額
サイバーエージェント・21年9月期 6664億円 1043億円 415億円      
サイバーエージェント・22年9月期 7105億円 691億円 242億円      
サイバーエージェント・23年9月期 7202億円 245億円 53億円   2.88倍 4161億円
サイバーエージェント・24年9月期予想 7500億円 300億円 80億円 52.03倍    
電通グループ・22年12月期 12438億円 1176億円 659億円 30.43倍 1.1倍 10350億円
テレビ朝日HD・23年3月期 3045億円 145億円 166億円 11.03倍 0.42倍 1803億円
スクエニHD・23年6月期 3432億円 443億円 492億円 13.82倍 1.90倍 6210億円

※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績

 サイバーエージェントの事業は、広告、ゲーム、メディアの大きく3つに分かれています。

 祖業で売上最大の広告事業は、ネット広告業界大手として、業界全体が伸び続けている恩恵を受けています。

 ただし、直近ではAIやDXに投資していることから、営業利益率は低下しています

 メディア事業の中心はABEMA。毎年100~200億円の赤字を計上していて、2023年9月期も115億円の赤字。

 ただし、よくみると、赤字のほとんどは第1四半期のサッカーW杯放映権によるもので、直近の第4四半期の赤字はわずか0.6億円と黒字化がみえてきました。

 好調の要因と推測されるのが公営競技のネット投票サービス「WINTICKET」。決算説明会資料では、周辺事業に分類されています。

 広告ではなく、周辺事業で稼いでいこうという姿は、放送外収入の拡大を目指す昨今のテレビ局と重なるものがあります。

企業名 売上
(前年度比)
放送収入
(前年度比)
放送収入割合 主な放送外事業
フジ・ メディアHD 5356億円
+2.0%
1603億円
-6.6%
29.9% 都市開発・観光、通販
日本テレビHD 4139億円
+1.9%
2317億円
-5.8%
55.9% Hulu、フィットネスクラブ
TBSHD 3681億円
+2.8%
1628億円
-2.1%
44.2% 小売、不動産
テレビ朝日HD 3045億円
+2.1%
1719億円
-4.0%
56.4% ABEMA、音楽出版
テレビ東京HD 1509億円
+2.0%
729億円
-5.1%
48.3% アニメなどのライツ事業

 ゲーム事業は『ウマ娘 プリティーダービー』が減速したことが響いて、減収減益。売上利益ともに、2021年の『ウマ娘』リリース以前の水準に戻っています。

 『ウマ娘』はコナミデジタルエンタテインメントから特許権侵害の訴えも起こされています。訴えは全部で5件あって、1件目は『ウマ娘』の差し止めを求めるもの、残りは損害賠償を求めるものです

 裁判記録をみると、『ウマ娘』の差し止めを求める裁判でコナミ側が侵害されていると主張する特許は「特許第6940210号」「特許第6933420号」「特許第6975501号」「特許第6975502号」「特許第6969834号」「特許第6964852号」「特許第6969835号」の7つ。

 調べると分かるのですが、育成モードやチーム競技場、サポートカードなど根幹に関わる部分で、今後の推移が気になるところ。ただ、次回期日が2024年6月なので、そこそこ時間がかかりそうです

 減速したとはいえ、ウマ娘はアニメでABEMAに貢献したり、ユーザーをWINTICKETに流すなど、ゲーム事業以外への波及効果も大きいと思うんですよね。

 足元では11月21日にリリースされた『呪術廻戦 ファントムパレード』が好調。ただし、長期的にヒットを続けられるような作りではないので、ゲーム事業がどうなるかというのは大きな注目点です。

ここ一年の主な動き

2022年11月20日~12月18日 ABEMAで『2022 FIFAワールドカップ』を全試合生中継

2023年1月25日 ABEMAプレミアムを無料にする株主優待制度を導入

3月20日 ブログで2026年にサイバーエージェントの新社長を内部昇格させると発表

3月31日 スマホゲーム『ウマ娘』が特許権侵害としてコナミから訴訟提起

5月16日 楽天グループの増資に応じて約100億円を出資

5月19日 Mリーグで渋谷ABEMASが初優勝

6月5日 舞台制作会社ネルケプランニングがグループ入り

9月7日 スマホゲーム『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS』サービス開始

10月10日 興行本部を設立

11月21日 スマホゲーム『呪術廻戦 ファントムパレード』サービス開始

2024年2月20日 スマホゲーム『ワールドフリッパー』サービス終了

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 2021年の『ウマ娘』のヒットで手元資金(ネットキャッシュ)が大幅増。

 手元資金が多いと経営は安定するのですが、あまり多いと「資本効率が悪い! 使わないなら株主還元しろ」と、株主から怒られるんですよね。サイバーエージェントも上場直後、上場で調達した資金をため込んでいたら、村上ファンドからキレられたことがあります。

 サイバーエージェントは藤田晋社長の持ち株比率が17.5%に過ぎないので、機関投資家の要望が通る可能性があります。過去には社外取締役の比率が低いことから、藤田晋社長の取締役選任にノーが推奨されて、否決されかけたことも

 200億とも言われるカタールW杯の放映権が「割に合うのか」と言われていたりもしますが、「株主からの圧力で手元資金を配当として還元するよりはいい」という判断もあるんじゃないかとは思います。

- 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期
営業CF +1096億円 +179億円 +208億円
投資CF -285億円 -314億円 -402億円
財務CF +3.7億円 -28.0億円 +534億円
- 2021年9月末 2022年9月末 2023年9月末
現預金 1840億円 1680億円 2017億円
有利子負債 424億円 262億円 1070億円
ネットキャッシュ 1416億円 1418億円 946億円

議案

(1)剰余金処分→期末配当を1株につき15円に

(2)取締役(監査等委員である取締役を除く。) 3名選任

(3)監査等委員である取締役3名選任

前年株主総会 今回候補者
藤田晋 藤田晋(創業者、代表取締役社長)
日高裕介 日高裕介(共同創業者、ゲーム事業)
中山豪 中山豪(全社機能管轄)
【社外】中村恒一 【社外】中村恒一(元リクルート副社長)
【社外】高岡浩三 【社外】高岡浩三(元ネスレ日本CEO)
塩月燈子 塩月燈子 (監査等委員、会計士補)
【社外】堀内雅生 【社外】堀内雅生(監査等委員、税理士)
【社外】中村知己 【社外】中村知己(監査等委員、弁護士)

(4)補欠の監査等委員である取締役1名選任→神先孝裕さんが新任

(5)ストックオプションとして新株予約権を発行→対象は藤田晋さん、日高裕介さん、中山豪さんの3人

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#サイバーエージェント株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

※僕の認識違いで「(質問者が出資したフローラルカーヴの子の)ヒラリを浦和競馬で走らせてくれてありがとうございます」ということのようです