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東宝株主総会2023レポ|松岡宏泰社長「ジャニーズ事務所についての報道が真実なら、決して許されることではない。一方、事務所が見解を出して、『改善していく』と言っていることも事実。ジャニーズ事務所がどのように変わっていくのか注視して、対応していきたい」

 5月25日10時から行われた東宝の株主総会。映画、演劇、不動産が事業の柱です

直近経営資料 2022年2月期決算短信決算説明会資料FactbookTOHO VISION 2032
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回株主総会 東宝株主総会2022レポ|島谷能成社長「制作現場でのハラスメント対策については通報窓口も含め、あるところでガイドラインを発表できると思う」

 映画業界全体の推移をみると、2022年の興行収入は2131億円と前年比31.7%増。記録的な当たり年だった2019年は例外とすると、ほぼコロナ前の水準まで戻しています。

 コロナ以降、洋画が配信に流れたこともあり、邦画のシェアが高い状況が続いています。

 日本映画製作者連盟興行通信社のデータをもとにした、2022年作品(2021年12月~2022年11月公開)の興行収入ランキングは以下の通り(※は上映中、5月21日時点)。

 トップの『ONE PIECE FILM RED』は東映配給。ヒロインのウタが紅白出演したことでも話題になりました。

順位 作品名(※は現在上映中) 配給会社 公開日 興行収入
1位 ONE PIECE FILM RED 東映 2022年8月6日 197.1億円
2位 すずめの戸締まり※ 東宝 2022年11月11日 147.1億円
3位 劇場版 呪術廻戦 0 東宝 2021年12月24日 138.0億円
4位 トップガン マーヴェリック※ 東和ピクチャーズ 2022年5月27日 137.0億円
5位 名探偵コナン ハロウィンの花嫁 東宝 2022年4月15日 97.8億円
6位 ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 東宝東和 2022年7月29日 63.2億円
7位 キングダム2 遥かなる大地へ 東宝/SPE 2022年7月15日 51.6億円
8位 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 WB 2022年4月8日 46.0億円
9位 シン・ウルトラマン 東宝 2022年5月13日 44.4億円
10位 ミニオンズ フィーバー 東宝東和 2022年7月15日 44.4億円

 邦画で東宝以外が配給する作品がトップをとったのは、1990年以来32年ぶり。

 そして今年も東映配給の『THE FIRST SLAM DUNK』が、邦画興行収入トップをとる可能性があります(『THE FIRST SLAM DUNK』は22年12月公開なので映画業界的には2023年扱い)

年度 邦画興行収入1位作品名 配給会社 公開日 興行収入
1990年 天と地と 東映 1990年6月23日 50.5億円
1991年 おもいでぽろぽろ 東宝 1991年7月20日 18.7億円
1992年 紅の豚 東宝 1992年7月18日 28.0億円
1993年 ゴジラVSモスラ 東宝 1992年12月12日 22.2億円
1994年 平成狸合戦ぽんぽこ 東宝 1994年7月16日 26.3億円
1995年 耳をすませば 東宝 1995年7月15日 18.5億円
1996年 ゴジラVSデストロイア 東宝 1995年12月9日 20.0億円
1997年 もののけ姫 東宝 1997年7月12日 117.6億円
1998年 踊る大捜査線 THE MOVIE 東宝 1998年10月31日 50.0億円
1999年 劇場版 ポケットモンスター  ルギア爆誕
ピカチュウたんけんたい
東宝 1999年7月17日 35.0億円
2000年 劇場版ポケットモンスター/ 結晶塔の帝王
劇場版ポケットモンスター/ピチュウとピカチュウ
東宝 2000年7月8日 48.5億円
2001年 千と千尋の神隠し 東宝 2001年7月20日 316.8億円
2002年 猫の恩返し/ギブリーズ episodeII 東宝 2002年7月20日 64.8億円
2003年 踊る大捜査線 THE MOVIE2
レインボーブリッジを封鎖せよ!
東宝 2003年7月19日 173.5億円
2004年 世界の中心で、愛をさけぶ 東宝 2004年5月8日 85.0億円
2005年 ハウルの動く城 東宝 2004年11月20日 196.0億円
2006年 ゲド戦記 東宝 2006年7月29日 78.4億円
2007年 HERO 東宝 2007年9月8日 81.5億円
2008年 崖の上のポニョ 東宝 2008年7月19日 155.0億円
2009年 ROOKIES−卒業− 東宝 2009年5月30日 85.5億円
2010年 借りぐらしのアリエッティ 東宝 2010年7月17日 92.6億円
2011年 コクリコ坂から 東宝 2011年7月16日 44.6億円
2012年 BRAVE HEARTS 海猿 東宝 2012年7月13日 73.3億円
2013年 風立ちぬ 東宝 2013年7月20日 120.2億円
2014年 永遠の0 東宝 2013年12月21日 87.6億円
2015年 映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン! 東宝 2014年12月20日 78.0億円
2016年 君の名は。 東宝 2016年8月26日 250.3億円
2017年 名探偵コナン から紅の恋歌 東宝 2017年4月15日 68.9億円
2018年 劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 東宝 2018年7月27日 93.0億円
2019年 天気の子 東宝 2019年7月19日 141.9億円
2020年 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 東宝/アニプレ 2020年10月16日 404.3億円
2021年 シン・エヴァンゲリオン劇場版 東宝 2021年3月8日 102.8億円
2022年 ONE PIECE FILM RED 東映 2022年8月6日 197.1億円
2023年 THE FIRST SLAM DUNK(現在上映中) 東映 2022年12月3日 141.0億円

※興行収入は、1999年以前は配給収入

 東宝配給の映画が邦画興行収入1位を取り続けた31年の1位作品のうち21本がアニメ映画、そして13本がスタジオジブリ作品。

 1990年以前は東宝以外が配給する1位作品もちょくちょく見るので、スタジオジブリの手助けを経て、東宝一強になった感があります(スタジオジブリ作品でも初期の『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』は東映配給)。

 スタジオジブリといえば、7月14日に宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』が公開予定。しかし、公開まで2カ月を切ったのに、公式サイトはなく、予告編も公開されていません。

 東宝の夏映画の予告編は春のコナン映画公開日に解禁になることが多いのですが、スタジオジブリ内部のゴタゴタが報道されるなど、いろいろあったからか遅れてそう(主演声優が木村拓哉さんという噂もあるので、ジャニーズ騒動も影響してるかも)。

 アニメ作品はここ数年、興行収入1位だけでなく、上位の多くを占めるようになっています。

 こうしたことから東宝は2022年から、「既存事業の3本柱である映画事業、演劇事業、不動産事業に加え、アニメ事業を第4の柱とする」方向性を示しています。

 今期からアニメ事業単体での売上も公開。

 アニメは海外でも人気で、『すずめの戸締まり』の中国興収が日本を超えたことでも話題になりました。

 東宝の業績に目を向けると増収増益。ほぼコロナ前の水準に戻しています。来期は増収減益見込み

 セグメント別の売上をみると、映画事業の中でも映画興行(映画館)が前年比23.2%増、演劇事業が同20.1%増と、大きく戻しているのが目立ちます。

 東宝はTOHOシネマズを全国に70館以上が抱えているので、実は自社配給以外の作品のヒットも業績のプラス要因となります。決算説明資料でも、東映配給の『THE FIRST SLAM DUNK』の名前がありました。

ここ一年の主な動き

2022年4月15日 『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(東宝配給)公開

5月27日 『トップガン マーヴェリック』(東和ピクチャーズ配給)日本公開

8月6日 『ONE PIECE FILM RED』(東映配給)公開

11月11日 新海誠監督『すずめの戸締まり』(東宝配給)公開

12月2日 『THE FIRST SLAM DUNK』(東映配給)公開

2023年4月14日 『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(東宝配給)公開

4月28日 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(東宝東和配給)公開

6月1日 映画料金を一般2000円に100円値上げ

7月14日 宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』(東宝配給)公開予定

12月22日 『劇場版 SPY×FAMILY CODE:White』(東宝配給)公開予定

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 コロナ禍で手元資金を減らしていましたが、ほぼコロナ前の水準に戻しています

- 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期
営業CF +125億円 +534億円 +454億円
投資CF -272億円 -360億円 -91億円
財務CF -172億円 -124億円 -191億円
- 2021年2月末 2022年2月末 2023年2月末
現預金 858億円 923億円 1121億円
短期有価証券 0円 0円 0円
有利子負債 2億円 1億円 4億円
ネットキャッシュ 855億円 921億円 1116億円

議案

(1)剰余金の処分→期末配当を1株につき40円に

(2)取締役(監査等委員である取締役を除く)5名選任

前年株主総会 今回候補者
島谷能成 島谷能成(代表取締役会長)
太古伸幸 松岡宏泰(代表取締役社長)
市川南 太古伸幸(コーポレート本部長)
松岡宏泰 市川南(エンタテインメントユニット映画本部長)
角和夫 角和夫(阪急阪神HD・CEO)

(3)監査等委員である取締役1名選任

前年株主総会 今回候補者
緒方栄一 緒方栄一(東宝映像美術社長)
【社外】小林節 【社外】小林節(パレスホテル会長)
【社外】安藤知史 【社外】安藤知史(弁護士)
【社外】折井雅子 【社外】折井雅子(サントリーHD元執行役員)

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#東宝株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしたので、まとめておきます