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トヨタ自動車株主総会2025|豊田章男会長「この不確実な時代だからこそ、トヨタは推測はしないが準備はする。準備をしっかりしていれば、推測は当たらない時があるが、みなさんと力を合わせていけば必ずや笑顔の量産はできると信じている」

 6月12日10時から行われたトヨタ自動車の株主総会。自動車業界の雄で、東海地方をけん引するグローバル企業です。

直近経営資料 2025年3月期決算短信 決算説明会資料
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回 株主総会2024|トヨタイムズ

 業績は増収減益。来期は増収減益見込み。

- 売上 営業利益 純利益 PER PBR 時価総額
トヨタ自動車・23年3月期 371542億円 27250億円 24513億円      
トヨタ自動車・24年3月期 450953億円 53529億円 49449億円      
トヨタ自動車・25年3月期 480367億円 47955億円 47650億円 11.18倍 0.96倍 419514億円
トヨタ自動車・26年3月期予想 485000億円 38000億円 31000億円      
ホンダ・25年3月期 216887億円 12134億円 8358億円 24.56倍 0.50倍 74580億円
日産・25年3月期 126332億円 697億円 ▼6708億円 -倍 0.26倍 13537億円

※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績

 トヨタの歴史は公式のこの画像が一番分かりやすいでしょう。生産台数はリーマンショックやコロナ禍で一時的に減少しているものの、基本的には上昇基調です。

 多くの企業は株主総会の前に想定問答集を作ります。

 トヨタの場合、想定問答集の中から関心が高そうな項目について、株主総会前に意図的にトヨタイムズで説明している雰囲気があります。今回だと「豊田自動織機の株式非公開化」「トランプ関税」などがそうですね。

 北米の販売台数は来期伸びると見込んでいるのですが、トランプ関税の影響がどうなるか見通せない状況なので、「ここ実際どうなの?」というのはFAQになるんじゃないかとは思います。

ここ一年の主な動き

2024年1月30日 グループビジョン「次の道を発明しよう」を発表

7月26日 トヨタ、福岡にEV電池工場 完成車のアジア供給網構築(日本経済新聞)

8月27日 電気自動車失速、水素使用の燃料電池車見直しの契機に トヨタとBMW全面提携(日本経済新聞)

9月6日 トヨタ、電気自動車の世界生産3割縮小 市場減速で26年100万台(日本経済新聞)

2025年2月26日 ウーブン・シティの第1期が完成、2025年秋から本格稼働:モビリティサービス(MONOist)

4月14日 新番組「トヨタイムズビジネス」スタート

5月9日 今期2つの重点テーマ トヨタ変革へ佐藤社長が示したこと(トヨタイズム)

6月3日 豊田自動織機株式に対する公開買付けおよび同社の非公開化を目的とした一連の取引に参画

6月5日 豊田章男は創業家の精神を守りながら、トヨタの未来を見据えている(トヨタイムズ)

6月6日 【緊急特番】豊田自動織機の株式非公開化 豊田会長が語った真意(トヨタイムズ)

6月9日 米国関税措置 自動車産業のこれからを考える(トヨタイムズ)

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 有利子負債が多めで、攻めた経営をしています

- 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
営業CF +29550億円 +42063億円 +36969億円
投資CF -15988億円 -49987億円 -41897億円
財務CF -561億円 +94120億円 +89824億円
- 2023年3月末 2024年3月末 2025年3月末
現預金 75169億円 94120億円 89824億円
有利子負債 293802億円 365617億円 287928億円
ネットキャッシュ -218633億円 -271497億円 -298104億円

議案

(1)定款一部変更→監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行することにともなう変更

(2)取締役(監査等委員である取締役を除く)6名選任

(3)監査等委員である取締役4名選任

前年株主総会 今回候補者
豊田章男 豊田章男(会長、創業家)
▼早川茂(副会長) 佐藤恒治(社長)
佐藤恒治 中嶋裕樹(副社長、CTO)
中嶋裕樹 宮崎洋一(副社長、CFO)
宮崎洋一 △【社外】岡本薫明(元財務事務次官)
▼Simon Humphries(CBO) △【社外】藤沢久美(ソフィアバンク代表取締役)
▼【社外】菅原郁郎(元経済産業省事務次官) △Christopher P. Reynolds(監査等委員、法務)
▼【社外】Sir Philip Craven
(元国際パラリンピック委員会会長)
△【社外】George Olcott
(監査等委員、元日本UBSブリンソングループ社長)
【社外】大島眞彦 【社外】大島眞彦(監査等委員、元三井住友銀行副会長)
▼【社外】大薗恵美(一橋大学大学院教授) 【社外】△長田弘己(監査等委員、元中日新聞社)

(4)取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬枠決定→取締役(監査等委員である取締役を除く)の現金報酬枠を年額30億円以内(うち社外取締役は年額3億円以内)に

(5)監査等委員である取締役の報酬枠決定→年額3.6億円以内に

(6)取締役(社外取締役および監査等委員である取締役を除く)に対する譲渡制限付株式報酬等の額および内容決定→取締役(社外取締役および監査等委員である取締役を除く。)の株式報酬枠を年額40億円以内に

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#トヨタ株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

Q 昨年の株主総会で、認証不正問題への対策についての発言があった。招集通知に「認証業務は現場の頑張りに支えられていること、現場では設備や備品の老朽化が業務に大きな影響を与えていることなどが明らかになった」とある。具体的な対策の効果を教えてほしい

中嶋裕樹:認証問題は指摘いただいた通り、非常にたくさんの人が携わってる仕事。開発の初期段階の企画から製造、販売、と非常に長い工程がある。

 その工程ひとつひとつを見ていくと、非常に多くの人が認証という作業に携わっており、部署間での情報のやり取りが非常に複雑であることも分かってきた。

 トヨタとしての一番つらい反省は、「我々経営陣が現場にしっかりと足を運び、現場の声を吸い上げることができていなかったこと」に尽きると感じている。

 さまざまな目に見える形での施策はやってきたが、最も大事だと思っているのが風土改革。これに関しては会長の豊田がリーダーとなって現場へ実際に行って、工程ひとつひとつを見ながら問題をつまびらかにする。トヨタではTPS(トヨタ生産方式)自主研という言い方をしているが、トヨタ自動車だけでなく、関係各社も集まって一堂に会して今やっている状況。

 ひとつ事例を申し上げると、毎月のようにやっている会場に行った時、各社のユニフォームが入り乱れて、ひとつの問題点について、みんなで知恵を出し合って解決しようという取り組みがなされていることを目の当たりにして、正直、非常に感激した。ただ、やはり我々が、いかに現場に足を運んで来なかったかが分かった。

 私個人の話では、現場に行って「問題はないか?」と聞けばいいと思っていた。ただ、こんな大きな体の副社長が行って「何でも言っていいよ」と言っても、現場の最前線の方はなかなか言えるものではないと思う。日ごろから行っていると、現場の異常に気付ける。

 例えば、「いつもきれいに溶接されてるのにされていないな」とか、そういう異常値を僕たちがセンサーを持って感じることができるようにならない限り、「現場の声を聞く」と言っても、きれいごとに終わってしまうと思っている。

 今、佐藤社長や役員が、日ごろから現場に行って本当に問題がないか調べて、結果として現場とのコミュニケーションも改善しながら進めていきたい。正直まだまだ道半ば。この風土改革に終わりはないと認識している

Q トヨタと日野自動車の関係というか、これからの付き合い方について。6月10日にダイムラートラック、三菱ふそう、日野、トヨタの4社で、三菱ふそうと日野の統合
に関する最終合意を締結した
。今後、どのようになっていくのか

中嶋:日野自動車との提携に関して歴史をひも解くと、1960年代に通商産業省の呼びかけによって資本業務提携をスタートした。

 その後、トラックの部分に関しては日野がプロフェッショナルなので、しっかりとトラックをやってもらったが、トヨタとの連携という意味では小型トラックの「ハイラックス」、大型の「ランドクルーザープラド」で協業してきた。

 ただ、正直、我々がトラックに関与できる範囲は非常に小さくて、特に大型トラックについては知見も経験もない。また、乗用車と顧客構成も違うこともあって、人の派遣もしたが、トラックビジネスに関しては基本的に日野にお任せしてきた。

 今回、ダイムラートラックからの声かけもあり、新たな提携をすることに至った。

 経緯を申し上げると、我々は先ほど申し上げた通り、大型トラックに関しては素人。カーボンニュートラルやドライバー不足、サービスの問題といったところに、なかなか力を発揮しづらいというのもあった。

 今回はダイムラートラックだが、違った会社との提携も視野に入れたり、トヨタがもっと積極的にトラックを勉強して入り込んだらどうかといったことも検討してきたが、残念ながらそれらが実を結ぶことはなかった。

 そういった時に、ダイムラートラックからの申し出があった。ダイムラートラックは世界でも大手のトラック業界のプロの集団。

 向こうのマーティン・ダウムCEOと豊田会長(当時は社長)が会った時の私の印象は、超トラックガイのダウムCEOに対して、超カーガイの豊田会長。「お互いの顧客を第一に考え、地域に根差した仕事をしていくんだ」という考えが見事に一致した瞬間に私も立ち会った。

 6月10日に記者発表があったが、ダイムラートラックとトヨタは自分たちの持っている様々な技術を、日野と三菱ふそうの統合会社に対して惜しみなく提供していく。

 我々乗用車は非常にタフな環境で使われるので、自分たちの技術を磨く道場という意味では学びが多い。ダイムラートラックの方も、持っている大型トラックの技を日本やアジアに展開するのに大きく役立つという思いも一致した。

 我々としては、今後もしっかりと技術面で新しい会社を応援していきたいし、お客さまからお声がけいただけるように、しっかりサポートしていきたい。

豊田:1966年の日野自動車との業務提携に関する共同声明には「両社はその特色を生かしつつ、それぞれの経営責任を持って運営する」とある。

 ただ、私は「トラックはよく分かんないな」と、ずっと心に引っかかっていた。私はクルマ屋を自称していて、クルマのことは分かるが、トラックのことは不勉強で、分からないのが実態。

 経営責任を持ってというより、日野というブランドが日本に4社あるトラックメーカーの中で輝くために、トヨタはどういう支援をすればいいのかを悩みに悩んでいた。

 そんな時、ダイムラーから話があった。私のダイムラーの印象は「とにかく主導権を握りたい」という印象だった。しかし、ダウムCEOに会うとまったく違って、まさしくトラックガイという印象を強烈に持った。「このブランドはどうするの?」と聞くと、「もちろん日野と三菱ふそうは残していきたい」という声をいただいた。

 そこで私もここに賭けるかと交渉を続けた結果、三菱ふそうと日野の努力のおかげで、日本に4社あるトラックメーカーが実質2グループになる大編成が民間主導でできたような気がする。

 民間主導でできたということは、それぞれの覚悟を持ってそれぞれの会社が決めているということ。トヨタはCJPTという会社もあり、協調すべきは強調して日本連合を頑張っていく。

 形は変わるが、トラックに対する愛、自動車業界に対する愛、働くクルマを何とか供給していこうという気持ちはトヨタ自動車は一切変わらないので、ぜひとも応援いただきたい

 

Q 四国の田舎から来た。ここ(豊田市)も田舎だと思うが、森の先の道路に、すごいコース(下山のテストコース)ができたと聞いている。ルマンでの5連覇を超える6連覇を達成するため、ここでどのようなクルマ作りをしていくのか

高橋智也:「モータースポーツ起点のもっと良いクルマ作り」ということを、会長のトヨタマスタードライバー・モリゾーのもとで進めている。

 モータースポーツ起点のクルマ作りの目的は大きく2つ。「クルマを鍛えること」「人を鍛えること」の2点で取り組んでいる。

 クルマ作りについては、通常、社内のテストコースでクルマを開発していると、毎週同じ環境で変化がない状況になる。もちろん安定してデータを取れるメリットはあるが、モータースポーツのレースシーンでは、競争があり、ライバルがいるのでそれではいけない。

 毎週違った環境でクルマを走らせることになるが、ものすごく過酷な状況なので、私たちが想定していない課題がたくさん出る。想定していない課題を早く見つけて対策して、より信頼性を高めた商品をお客さまへ届ける。

 もう一点、人作りについては、申し上げた通り、想定しない課題が出てくる。

 モータースポーツの現場だと、1秒でも早くクルマをコースに戻したいことがある。それは現場のメンバーが行うが、その現場がトヨタの仕事と違うのは、上司がいないということ。

 私たちは日々、上司の指示を受けて仕事をする、上司の承認を受けて仕事をするやり方に慣れているが、モータースポーツの現場には上司がいない。そこにいるメンバーが自分で考えて自分で行動する。これでメンバーが鍛えられることが一番だと思っている。

 それを続けることによって、鍛えられた人がトヨタのクルマ全体に関わっていく。そうするとトヨタのクルマがもっともっと良いクルマになっていく。そう信じて私たちはモータースポーツ起点のクルマ作りに取り組んでいる。

 

Q トヨタ自動車には「みんなに喜んでもらえるクルマを作る」という印象がある。過去の不具合対応や品質、人の安全など、モノ作りでどのようなことを考えているのかを聞きたい

宮崎洋一:我々のクルマ作りの基本は、安全、品質、量、種類という順番で考えている。

 我々が目指すところは「お客さまの幸せの量産」。このためには、やはり人が原動力。人をしっかり育てていくことで、安全品質を確保していきたい。

 足元では、我々なかなか人手が足らないという報道もあり、現実にその難しさに直面もしている。そのためにも、「トヨタに入って働きたい」「一緒に頑張りたい」と思ってもらえるような環境整備を今進めている。

 加えて、一度会社に入っていただいた上では、やりがいを持って長く一緒に働いていただけるような仕組みの浸透についても進めてきている。ダイバーシティが進む中、多くのみなさまが安心して働けるような職場環境を整えてるところ。

 人の確保は、我々だけでなく、取引先も含めた重要課題となっている。産業全体の魅力を上げていくため、我々としてはティアの深いところまで賃上げをしっかり浸透させていく取り組みを意識して進めている。トヨタは人は宝、従業員は家族だと思っている。

 自動車産業の発展は我々だけではできない。多くの関係するステークホルダーとともに、これからも日本の伝統技能、技術をさらに発展させていけるよう、しっかりと取り組みを進めていきたい。

 

Q 豊田会長に質問。先般、白鵬さんが日本相撲協会を退会して、世界に相撲を広める新しい取り組みを始めるとおっしゃっていて、豊田会長が応援するというニュースを拝見した。支援する背景とトヨタグループへの影響を教えてほしい。

豊田:横綱白鵬時代、私が初めて会ったのは2010年の名古屋場所。当時は、野球賭博問題で相撲界が荒れに荒れていた時。それで賜杯が出ないという決定があったが、私が賜杯のない全勝優勝をテレビで見ていた時に、白鵬が非常に悲しそうな顔をしていた。

 当時、私たちの会社の中でハイブリッドを広めるため、販売店と一緒にプリウスカップというモータースポーツをやっていた。その優勝カップは技能員の手作りで、非常にモノが良かった。そこでそのカップの下の名前を変えて、優勝杯に代えて持っていった。その時に白鵬さんが涙を流して喜ばれたことが、最初の出会い。

 その次の年に東日本大震災があった。それまでの間、白鵬さんと私は一切お付き合いがなかったが、宮城野部屋におられるということで、トヨタの宮城県の工場が大変なことになってるということで、その工場に行って、全従業員と握手してくれた。それでどれだけその時従業員が勇気づけられたか。そこから我々の付き合いが始まったと思う。

 私はトヨタ自動車の会長ではあるが、白鵬さんを友人だと思っている。友人として、そしてお互いアスリートとして、本気でその道の勝負をかけているというところで、いろんな共通項があるし、モンゴル出身横綱として、他の人には分からない孤独、悔しさを抱えながら、自分のためではなく相撲界のため、ファンのためにということを絶えず考えている大横綱だったと思う。

 そんな中、「こんな終わり方ないよね」というのが私の正直な気持ち。日本の国技である相撲を支えてきた大横綱。私は今後も個人として応援していきたいと思う。

 日本の相撲を支えた大横綱が、立場は変わるが、相撲に対する愛、相撲を世界に広げていきたいという気持ちに、私は大いに共感した。相撲を世界に広め、「こんなスポーツがあるんだよ」ということを白鵬さんと共にやっていく。トヨタの株主総会で決意表明するのはアレだが、ぜひとも応援いただきたい。

 トヨタ自動車の支援という意味では、実は優勝パレードのオープンカーは古くは日本のクルマではなかった。

 私たちは「クラウン使ってくれよ」と、クラウンのオープンカーを作って持っていったが、「クラウンじゃないでしょ」と言われた。「日本を代表する車はセンチュリーでしょ」ということで、センチュリーのオープンカーを、この辺の人たち(役員)は文句ばかり言ったが、作ってもらった。

 それで、なんとか最近、優勝力士が世界に1台しかないセンチュリーのオープンカーで優勝パレードをやっている。ただ、あのクルマはトヨタ自動車保有で、トヨタから運転手も出している。

 トヨタの支援というとこういう形になるが、ちょっとそこは一回引き取らさせていただこうかと思っている。

 これを「世界に相撲を」と思っている白鵬が何と私に言ってくるか。その辺、みなさんぜひ関心を持っていただいて、相撲愛に強い人を応援いただきたいと思うので、よろしくお願いします

 

Q 先日、ちょっとがっかりする話を耳にした。トヨタ車でない知人がトヨタの販売店で、「次はトヨタ車が欲しい」と言ったら、見向きもされなかったと聞いた。パンフももらえなかったと。「残念、もう買わない」と言われた。販売店への教育はどうなっているのか

佐藤:ご不快の念をおかけしたこと、申しわけなく思う。

友山茂樹:私たちの販売店がそのようなご迷惑をおかけしたこと、当社を代表してお詫び申し上げる。

 トヨタのクルマは大変すばらしく、間違いないが、販売店が、きっちりしたメンテナンスをすることや、納車する際にきっちりした説明をすることが、お客さまとの関係を作る上で大変重要。

 そういった観点で、私たちは販売店での提供に至るまで、きっちりした研修をさせていただいているが、場合によってはこういったことが起こる。

 今回いただいたご意見は、貴重なご意見として、関係先に展開していく。これにこりずに、ぜひトヨタをご愛顧いただけるよう、知人の方にも言っていただきたいと思う。

 いずれにしても、トヨタとトヨタの販売店は一心同体で、私たちのクルマを使っていただくお客さまに対して、誠心誠意サービスさせていただくので、ぜひご理解、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

 

Q ヤリスクロスを昨年4月に契約、納車予定が10月だったが、認証不正問題で生産停止となり、その間、連絡がなかった。11月にキャンセルをお願いすると、「今キャンセルすると迷惑になる」と言われた。生産停止が長く続いたときの、顧客とのコミュニケーションについて

宮崎:個人ではなく、国内・グローバルのお客さまの声を代表したものだと受け止めている。

 コロナ禍が明けて以降、半導体不足の中で受注が先行し、お待たせする期間が続いてきた。早くお届けしたいという気持ちから、現場に少し無理をかけてしまったことが認証問題の発端にもつながっている。

 現場で多少無理したことで、いろんな面の品質・安全がおろそかになり、稼働が止まったりした。問題があったら立ち止まって、みんなで現場で行って確認するようにしている。

 販売店は人手不足の中、物事を伝える際に人を介すとタイムラグが生じたりする。国内では「J-SLIM」という、メーカーと販売店が同じ情報を管理できるシステムを導入して、「このクルマなら納期はこうなるよ」と注文の瞬間からメーカーに情報が飛んでくるような改善をしている。

 まだまだ道半ばで完ぺきにはほど遠いが、ご指摘、叱咤激励を改善のバネにして進めていく。忌憚のないお客さまの意見が改善の原動力となっている。

伊村隆博:トヨタ車を購入いただきありがとうございます。ご迷惑をおかけして申しわけない。

 前期の生産台数は936万台で過去2番目。この台数を生産できたことに改めてお礼申し上げる。

 生産現場については一台でも多くお届けするために作業時の1秒を縮めるとか、品質とか、日々改善を繰り返している。1台でも多く、お客さまに届けられるよう、稼働も設備改善も含めて努力している。

 投資面も稼働を上げるため、1台でも多くクルマをお客さまに届けられるよう、自動化やDXも駆使しながら改善を進めている。引き続きカスタマーサービスについては、販売店を含め、いいクルマを届けられるよう努力していく。

 

Q 私は日産のファンだったが、RAV4が気に入って「これでトヨタのファンになれる」と思った。ただ、足回りが悪い欠陥車だと思ったが、今では世界で売れている。トヨタに入れない人や取引できない会社のためにも、今後、頑張ってほしい(編注:よく聞き取れず)

佐藤:トヨタのクルマ作りに対する思いやご期待。貴重なご意見としてたまわり、今後の活動につなげたい

 

Q(すずき) 1949年の経営危機の時に住友系の大阪銀行から融資を受けられなかったことから、住友の人間が出禁になったと聞く。最近はSMBCになったこともあって取引や人の交流が復活しているとも聞くが、今でも敬遠する空気感があるという話も聞く。一般論として取引先候補が減ることはビジネスにとってマイナス、対抗措置を取る意味も分かるが、経営危機当時の人間はもう誰も生きていない。周りが勝手に忖度することもあるので、取引を正常化してるならしてると明言してほしい

宮崎:住友銀行とは公私ともども、大変良い関係でお付き合いさせていただいている。

我々は、どこの銀行もそうだが、みなさまと一緒になって日本の自動車産業を発展させていきたいと思っているし、我々がグローバルでビジネスをする上で、国民のみなさんが安心していろんなことに利用できるので、これからも他の銀行同様に、区別なく住友銀行とも付き合っていきたいと思っている。

 これからも日本産業、一緒になって経済発展に向かうので、みなさまのご理解と応援を何卒よろしくお願い申し上げる。

 

Q  元トヨタ社員だが現在はいち株主。株価が最近は下がっている。大きな理由は自動車産業が成長産業と信じられていないから。販売台数が何千万台ということでなく、技術面でどういうバリューを付ける活動をやっているのかといった話を聞きたい

宮崎:2025年3月期の決算の状況からお話させていただきたい。2025年3月期をスタートする時は、稼ぐ力5兆円を維持しながら、総合投資7000億円を加味して、4兆3000億円の営業利益という見通しからスタートした。

 その後、多くのみなさまのご支援とご理解をいただいて、最終的に5000億円上積みして、4兆8000億円の営業利益を出せた。仕入先のみなさま、販売店のみなさまのご尽力で原価低減、営業面での取り組みでプラスが出て稼げたのが大変大きいと思っている。

 一方、新たな財務基盤の柱となってきているのがバリューチェーンでの収入。新車を作って届けるだけの利益ではなく、我々はグローバルに1.5億台のトヨタ車を抱えているので、このみなさまとのお付き合いをより長く太くすることで、バリューチェーン収益を徐々に地道だが積み上げてきている。

 近年は月間1500億円ほど収益貢献できるところまでいっていて、今期の収益では2兆円台までバリューチェーン収益を伸ばすことができてきている。我々は電動化など新たなクルマ作りを続けているし、バリューチェーン領域の可能性も広げることができてきていると思っている。

 こうした取り組みを通じて、トヨタが新たなモビリティカンパニーに変わっていけるという実感を株主、投資家のみなさまに感じていただければ、株価は上がってくるものと信じて、取り組みを進めている。

 いずれにしても、グローバル38万人の従業員と心をひとつにして、株主のみなさまに長い目で振り返っていただいた時に「トヨタの株を持ち続けて良かったな」と思っていただけるような成長を目指して今後とも頑張っていく。

中嶋:宮崎からあったようにバリューチェーン、クルマの本体そのものではなく、その周辺でしっかりとお金をもうけ、お客さまにその価値を還元していくことが重要になっている。

 その中でソフトウェア。私の勝手な解釈だと、電話で言うと、「ガラケーからスマートフォンに代わってきたようなことが、クルマでもできるように」ということがソフトウェアを使った価値向上だと思う。

 ただ、電話だと、使い方が分かりにくいとか困った時に電源をリセットできるが、自動車の場合はお客さまの安全・安心を非常に重要視した商品なので、電源リセットは簡単にはできない。

 そのために今、自動車業界だけではなく、さまざまな業界のみなさまと一緒に開発しているのが実態。クルマ単体ではなく、人、インフラとの三位一体でさまざまな協調をしていくことで価値が上がる、より安全性が上がると考えている。

 最近は、途切れない通信ということでNTTとか、通信衛星を打ち上げるためのロケットが必要なのでロケットの会社ともお付き合いしたり、人工知能を活用してドライバーがどういう行動をするのかを予測することで、より安全性を高めることも可能だと言われている。

 ある意味、少し上から目線かもしれないが、私たちはさまざまな産業をけん引していきながら、よりもっと良いクルマ作り、より良い社会作りに貢献できると信じている。これからも一生懸命開発を進めていくので、応援団としてぜひ見守っていただきたい。

Q  株式分割について。今、一単元26万円なので、2~3分割してもいいのでは

ヤマモト(山本圭司?):前回5分割した時(2021年)、多くの個人株主にトヨタ株を取得していただいた。今日もたくさんの株主のみなさまにご意見をいただけて、本当にありがたいと思っている。

 分割は、もちろん方法は考えていきたいが、ひとりひとりの株主のみなさまと対話し、ご意見を聞きながら、我々は成長していきたいと思っているので、貴重なご意見としてたまわるので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

Q トヨタが掲げる「幸せの量産」とは

宮崎:我々の自動車産業はすそ野が大変広くて、550万人のみなさまに支えていただきながら仕事をさせていただいている。その結果、自動車産業を通じて約20兆円の外貨を稼ぎ、日本が必要なエネルギー輸入額24兆円の大半を稼ぐ産業にまで育ってきている。自動車全体の出荷額は60兆円まで達していて、日本のGDPの約1割を占める。

 我々が目指す幸せの量産は、ひとりひとりのお客さまの笑顔を増やしていくことだが、その結果として、自動車産業が引き続き日本のど真ん中の産業として育っていくところを目指して進めていきたいと思っている。

 その中でトヨタが果たす役割としては、モビリティカンパニーへの変革を続けていくこと。「すべてのみなさまに移動の自由を」ということで、誰一人取り残さない形で移動を提供していく世界を目指して、日々取り組みを進めてきている。

 ゴールがここというわけではないが、我々にできることをしっかりと積み上げながら、移動の自由を実現するべく進めていくと、それが必ずやみなさまの幸せにつながると信じて頑張っていくので、これからもご支援を何卒よろしくお願い申し上げる。

Q 佐藤社長に聞きたい。トヨタ自動車は世界に冠たるグレートな会社だが、グレートなトヨタ自動車をさらにグレートにするための佐藤社長の一番のチャレンジは何か。佐藤社長がトヨタという巨大な会社の社長になって気が付いたことは

佐藤:社長の役目を拝命して約2年が経とうとしている。今もまだバトンタッチゾーンでもがきながら、豊田章男が積み上げてきた「トヨタらしい経営」を求めて日々もがいている。

 最も大切にすべきことはぶれない軸を守り続けること。商品と地域の軸でしっかりと経営していく。両副社長(中嶋裕樹、宮崎洋一)から地域の軸、商品の軸という話があったが、自分自身で気付いたこと、トライした中で心に残っているのはやはり認証の問題。

 新しいことをやらないといけないという中で、会長の豊田からの「佐藤、こういう時こそ社長は現場に行け」というたった一言のアドバイス。

 そのひと言で自分の時間の使い方を変え、現場を回って、みんなが何に苦しんでるのか、どんな思いで言うのか、なかなか結果につながらない、声が出せずにいるんだと分かってきた。

 大きい会社で多くの人が関わって仕事しているので、社長一人で仕事できることには限りがある。現場を回る中で気付いた一番大事なことは、現場のエネルギーを最大化できるよう、現場でやりたいことをやれるようにしてあげるのが社長の仕事だということ。社長が頑張って肩を回しているような会社では、一馬力でしか進められない。トヨタのグローバル37万人の仲間の力が最大限発揮できるようにすることが役割だと。

 豊田社長が14年築いてきた基盤があるからこそできる挑戦を、みんなに思う存分やってもらえるよう、現場を回って、ここに登壇している経営をリードしている仲間を信じて、チームで経営することを心掛けて努力を続けていきたい。ご質問に対する直接な回答になっていないかもしれないが、偽らざる私の思いとしてお話しする。

 

Q ちょっとお願いがありまして、娘に本当に株主総会に出ているか疑われている。社長と会長との写真をお願いしたいがいかがでしょうか

佐藤:質問は……

Q みなさん本当に申しわけないですが、以上です

佐藤:ご提案ありがとうございます。株主総会にご出席した証拠は、このやり取りで残ったと思う(笑)

 

Q 今朝、会長と写真を撮らせてもらった。全固体電池のチャレンジについて。全産業にインパクトがあるが、スケジュールは予定通り進むのか。ハイブリッドに「21世紀に間に合いました。」というキャッチコピーがあったが、全固体電池も「間に合った」という言葉を待っている

中嶋:全固体電池についてのご質問だが、その前に少し、トヨタが取り組んでいるマルチパスウェイ戦略についてお話しさせていただきたい。

 「各国・地域のエネルギー事情に応じて最適なクルマをお届けする」ということで、エンジン車はもちろんのこと、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、最近は水素自体を燃料として燃やすFCV(燃料電気車)にも取り組んでいる。カーボンニュートラル燃料という言い方もしているが、CO2を排出せずに作った燃料も提供していこうといった考えで取り組んでいる。

 その中で全固体電池というのもひとつ重要な要素。バッテリーEV(ガソリンを使用せず、バッテリーに蓄えた電気のみでモーターを動かし、走行するクルマ)の課題として、充電時間や航続距離の問題がある。全固体電池は、このバッテリーEVの問題を一気に解決できるということで開発を進めている。

 すなわち、充電時間が非常に短く、出力が高いので航続距離も長い、さらに非常に耐久性が良いということで、これはこの場で申し上げていいのかどうか、社長の顔が見えない中で言うが、実は全固体電池が台頭するタイミングで「これをやろう」というプロジェクトを決めている。しかし、このプロジェクトは全固体電池ができなければお釈迦になってしまうプロジェクトでもある。

 「開発していく中でちゃんと間に合うのか」というご質問だったと思うが、すみません、開発はいつも先が見えません。うまくいったとか、正直分かりません。

 ただ、会長からいつも激励されるのは、「失敗してもいいんじゃないか」ということ。失敗したからこそ経験が残る。若い開発者がそういう経験をすることで、次にまた新しい内容にチャレンジすることになればいいかなと思っている。

 ただ、個人的には、お約束した日程はぜひとも守って、全固体電池を次の未来の大きな用途としてお届けできればと思っている。

 株主さまからのひとつひとつの応援の言葉、今日たくさんいただきました。この言葉から、我々開発陣もここのメンバーも、次に向けて大きな1歩を踏み出そうという勇気をいただいています。

豊田:地球温暖化は地球人として取り組まないといけない問題で、自動車業界でも真正面から立ち向かっている。

 我々は当初から「敵は炭素である」「今すぐできることをやろう」と取り組んできた。

 これまでの電動車の累計販売台数はハイブリッド中心になるが2700万台で、2700万台で減らしてきたCO2はバッテリーEV換算で900万台の規模。

 世の中はどうしてもバッテリーEVやハイブリッドという言い方をするが、やはり地球温暖化に対して、我々の敵はまず炭素、現在できることからCO2を下げていこうと。これを着実にやっているのがこの会社だと思う。

 何でそんなことをするのか。世界を見渡すと、それぞれの国のエネルギー事業とかいろんな事情がある。私たちは、移動の自由はどの国どんな道でも確保しよう、誰一人残したくないという思いで、今の執行メンバーを始めとしたみなさんが頑張っている。

 そんな中、このフルラインアップをやっていけるのは、世界中に販売店というパートナー、クルマ作りを支えてくれる仕入れ先、設備がしっかり回るようにする設備屋、材料を供給してくれる方々、完成品を運んでくれる人、部品を運んでくれる人、そういうみんなのチームワークがあるからだと思う。

 この不確実な時代だからこそ、トヨタは推測はしないが準備はする。準備をしっかりしていれば、推測は当たらない時があるが、どんな状況においても、そういうみなさんと力を合わせていけば、必ずや笑顔の量産はできると信じている。

 今回、過去最高の6000人超の方々に株主総会に来ていただいた。本当にありがとうございます。この株主のみなさんに中長期的に我々を応援いただく、我々の現場を支えていただく、それだからこそ我々が準備できている。これからも変わらぬご支援、よろしくお願いします。