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GMOインターネットグループ株主総会2025|熊谷正寿社長「日本の産業の歴史は親子上場の歴史。グループ企業の上場というのは歴史が証明していて正しいと強く信じている。今後もグループ会社上場の方針は続けていく」

 3月21日10時から行われたGMOインターネットグループの株主総会。インターネット関連事業などを手掛けるグループの持株会社です。

直近経営資料 2024年12月期決算短信決算説明会資料質疑応答
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回 レポートは見当たらず

 業績は増収増益(純利益ベースでは減益)。

 「インターネット金融事業」「暗号資産事業」「インキュベーション事業」は、 経済情勢や金融市場、暗号資産など市場環境の影響を受け、業績予想を行うことが困難であるという理由で、来期予想は非開示です。

- 売上 営業利益 純利益 PER PBR 時価総額
GMOインターネットG・22年12月期 2456億円 437億円 132億円      
GMOインターネットG・23年12月期 2586億円 424億円 141億円      
GMOインターネットG・24年12月期 2774億円 466億円 133億円 -倍 3.97倍 3574億円
GMOインターネットG・25年12月期予想 非開示 非開示 非開示      
さくらインターネット・24年3月期 218億円 8億円 6億円 75.8倍 5.72倍 1721億円
SBIホールディングス・24年3月期 12105億円 1415億円 872億円 -倍 0.98倍 13015億円
サイバーエージェント・24年9月期 8029億円 418億円 162億円 29.0倍 3.90倍 6105億円

※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績

 多岐にわたる事業に携わっている企業で、大枠だけでも「ネットインフラ」「ネット広告・メディア」「ネット金融」「暗号資産」といった事業があります。

 従来は「ネット金融」が売上・営業利益のそれなりに多くの割合を占めていたのですが、足元では「ネットインフラ」の割合が大きくなっています。

ここ一年の主な動き

2024年2月23日 2024年度AI活用方針「AIで未来を創るNo.1企業グループへ」 AIにより年間18億円相当の業務効率化を目標に設定

3月1日 3DCG・VFX技術を取り入れたハイブリッド型イベントスペース 「GMOグローバルスタジオ」を正式オープン

4月24日 『パルワールド』公認 マルチプレイ専用サーバープランを国内企業で唯一提供

6月18日 GMO AI&ロボティクス商事設立

2025年1月27日 【スクープ】GMOが900億円超の巨額賠償訴訟!熊谷氏“肝いり”の仮想通貨マイニング事業失敗で米企業と泥沼トラブル | 上場廃止ラッシュ2025 東証の淘汰がついに始まる!(ダイヤモンド・オンライン)

1月28日 連結子会社(タイ証券子会社)の事業廃止に関するお知らせ

1月29日 ダイヤモンド・オンラインにおける事実誤認に関して

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 現預金は多めですが、手元資金はそれほど余裕があるわけではありません。

- 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
営業CF +2564億円 +1491億円 +847億円
投資CF -28億円 -163億円 -714億円
財務CF +624億円 +649億円 +607億円
- 2022年12月末 2023年12月末 2024年12月末
現預金 3222億円 3889億円 4665億円
有利子負債 3911億円 4735億円 5548億円
ネットキャッシュ -689億円 -846億円 -883億円

議案

(1)定款一部変更→GMOイズムの明記と事業目的を持株会社体制移行後の事業に合わせて変更

(2)取締役(監査等委員であるものを除く。)5名選任

(3)監査等委員である取締役1名選任

前年株主総会 今回候補者
熊谷正寿 熊谷正寿(会長兼社長、創業者)
安田昌史 安田昌史(グループ管理部門統括)
西山裕之 西山裕之(グループ人財開発統括)
相浦一成 相浦一成(グループ決済部門統括)
伊藤正 伊藤正(インフラ部門統括)
松井秀行 松井秀行(元りそな銀行)
【社外】小倉啓吾 【社外】小倉啓吾(公認会計士)
【社外】郡司掛孝 【社外】郡司掛孝(元東京国税局)
【社外】増田要 【社外】増田要(弁護士)

株主総会のTwitter実況

 開催形式はバーチャルオンリー株主総会。僕は現状のバーチャルオンリー株主総会は、質疑応答での質問の取捨選択が適切か株主視点で分からない等のことから、あまり推進するべきではないとの立場です。

 現在、内閣府の規制改革推進会議ではバーチャルオンリー株主総会の環境整備について議論が行われており、GMOも意見を述べていたりするのですが、株主サイドの声を反映する機会が設けられていないんですよね。

 株主総会映像の即時公開、質疑応答の透明性や利便性を高めるために届いている質問を全表示などは、わりと簡単にできるのに議論の俎上に挙がっていないのは良くないなと思っています。

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#GMO株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

 最初にネットだけで完結するバーチャルオンリー株主総会をGMOグループ各社が開催する理由と、運営に関して寄せられた意見へ回答

熊谷:まず前提としてバーチャル株主総会はまだまだ歴史の浅い制度。リアル株主総会の実施回数は、歴史的、世界的には100万回を超えると言っても過言ではないが、バーチャル株主総会の実施回数はハイブリッド型を含めても100万分の1程度と考えられる。バーチャル株主総会について評価するには、まだ判断材料の集積が少ないものと考えている。

 私たちGMOインターネットグループは、インターネットテクノロジーで世の中を変えていきたいと考えている企業集団。バーチャル株主総会のようなインターネットの進化による新しい取り組みには、果敢にチャレンジをしていくことが存在意義だと考えている。新しい制度のため、良い面も悪い面もある。良い面は次に生かし、悪い面は改善を図っていきたい。

 株主から頂戴したご意見4点について、具体的に回答申し上げる。

 1点目は当日質問の形式について。「質問は300字までに制限されていたが、議長が概略を述べただけで読み上げていなかった。文字数制限を設けるなら全文読み上げてほしい」という意見。

 意見を踏まえ、2024年9月以降に実施している当社グループの株主総会では、質問の記載形式を変更。質問内容は150文字までで簡潔に記載をお願いして、質疑応答の際に読み上げる質問はその内容とさせていただきます。合わせて、その下に質問をいただいた理由や背景、詳細を記載いただけるようにしました。文字数はシステムの関係上、合計2000文字となります。

 2点目は当日質問の運用について。「当日質問に回答する前に質問の受付が終了しており、追加質問ができない」という意見をいただきました。

 円滑な株主総会の運営のため、当日質問は1人1問としており、これはバーチャル総会になる前から同じ運用です。また、当日質問の受け付けについては、事前質問への回答の後、バーチャル出席株主のみなさまとの質疑応答に入る時点で締め切らせていただきます。当日の質疑について追加で質問がある場合には、IRまでご連絡お願いいたします。

 3点目、株主総会動画のコーポレートサイトへのアップロードについて。「株主総会の動画をアップロードする際は、無編集でアップロードしてほしい」という意見をいただきました。

 昨年3月までは、株主のプライバシーへの配慮や冗長な間をカットするなど、見やすさを重視した編集をしていましたが、今後はカットせずアップロードいたします。

 4点目、GMOインターネットグループがバーチャルオンリー株主総会を実施する理由について。

 私たちGMOインターネットグループはこれまで、リアル開催、ハイブリッド型開催、バーチャルオンリー型開催の3つの形態で株主総会を開催してきました。それぞれの形態にメリットとデメリットがあり、現時点ではどの形態が最適か判断するのは早計であると考えています。

 バーチャルオンリー型開催は、インターネット環境さえあれば、世界中のどこにいても出席いただくことができます。実際に遠方から出席いただき、好意的な意見を頂戴したケースもありました。

 また、リアル開催やハイブリッド型開催に比べて、不規則発言などの議場の混乱となる原因リスクを低減でき、その結果、出席いただいている株主を長時間拘束せずに済むというメリットもあります。

 一方、株主とのコミュニケーションが薄くなってしまうという指摘もあります。こちらについては、株主総会、決算説明会や各種IRにおけるコンテンツの充実化を図ることで、問題を解消できればと思っています。

 今後も、株主との対話、指摘を通じて、より良いバーチャルオンリー株主総会の実施、実現に向けて、経験を集積した上で改善を続けていきたい。GMOインターネットグループの趣旨に賛同いただき、一緒にバーチャルオンリー株主総会をより盛り上げていただければ幸いです。

Q(事前質問)他社と比較した時の、GMOインターネットグループのAI戦略の強みは

熊谷:質問の意図が、AI活用戦略なのか、AIの関わる事業の戦略なのかはっきりしないので、両面から説明します。

 AI活用戦略については、2022年11月30日にサム・アルトマン氏率いるOpenAI社がChatGPTをリリースしました。

 私はインターネットと出会った時と同じような衝撃を受けて、直ちに全グループに対して「AI活用ナンバーワン企業グループになるんだ」と、AI活用のさまざまな取り組みを行ってきました。

 結果、現段階で8000人で1カ月間に合計100万時間近い節約を実現。AI活用においては国内有数のグループになってるのではと思っています。スピードがより早くなり、コスト削減を実現できていると考えています。

 AIの事業戦略という意味においては、このAIの登場でこの先3~10年の世の中がどうなるのか見通して、的確に手を打っています。

 結論、我々は生成AIの開発はせず、生成AIが増えるためのインフラの提供、あるいは多くのみなさまが生成AIをより便利に使うためのサービスインフラの提供、この2点に特化して事業展開を行っています。

 前者はNVIDIAと一緒にしている生成AIのインフラの提供、サーバー基盤の提供です。後者は天秤AIというサービスが典型ですが、みなさまが生成AIをより効率的に使うためのツールの提供、このような事業戦略を行っています。

 これは、かつてのゴールドラッシュに例えると、金を掘るのではなくて、ツルハシやスコップ、デニムの提供をすることで、その事業領域からの収益を上げていくという戦略です。

Q(事前質問)吸収分割でインフラ事業をGMOアドパートナーズに承継させたことは、グループ全体の競争力にどのような影響を与えるのか。特にネットインフラ事業やネット広告メディア事業の強化について

熊谷:頭が身軽になったのでグループ全体のスピードがより上がってくると考えています。

 今までGMOインターネットグループ本体は、1995年にインターネット事業に参入した日からずっと事業を行いながらグループを構築してきました。事業持株会社という業態です。私は事業をしながら、投資を行ってグループを作っていくという両輪で、脳内シェアを割いてきました。

 30年間これを行ってきたのは、その必要性に駆られてです。なぜなら、現在114社のグループ会社のどの社長もみんな起業家なんです。ちょっと言葉が悪いですが、サラリーマン社長は1人もいないんです。

 私は創業者で自分のグループが大好きなので、笑わないでほしいのですが、GMOインターネットグループは日本最強の起業家集団だと自負しています。

 従って、私が事業している姿を、グループ全体の社長のみなさまにお見せしないと、グループ全体を引っ張ることが叶わなかったと考えてます。

 投資だけして、会社の株主になりましたということで、みなさまから質問をいただいたり、アドバイスをいただきます。

 でも、私は日々、グループ114社を率いて、「こうした方がいいんじゃないか」「ああした方がいいんじゃないか」と仲間と話し合いしてるわけです。私が実績があるから、みなさん聞く耳を持っていただけます。私が何の実績もなかったら、「お前何言ってんだよ」「俺は一生懸命頑張って仕事を立ち上げてきた起業家なんだよ」「お前の言うことなんか聞かねえよ」となっちゃうじゃないですか。今まで私は自分で事業を成長させてきたことで、グループ全体に説得力を作ってきたわけです。

 30年経った今、徐々にその必要性は薄れてきており、むしろ各社にお任せした方がよりスピードが速くなり、高い成長ができると感じてきました。

 ということで今回、GMOインターネットグループは純粋持株会社の方向へ本格的にかじを切りました。本体が身軽になれば、意思決定も速くなり、動きも速くなり、ありとあらゆるところでスピードが上がるに決まっています。そういう意味において、グループ全体を加速する意思決定です。

 ネット広告メディア事業については、GMOインターネットに譲渡しました。

 祖業のインフラ事業は、成長を続けるためにメディアと広告事業の協力が必要です。今までは、ネット広告代理店や、集客を手伝っていただいたアフィリエイターに広告宣伝費を支払っていました。

 その払っていた先の1社がGMOインターネットです。そこと一緒になったわけなので、手数料コストが削減される。そして、インフラ事業が広告事業と一緒になって、よりスピードが速くなる。

 今回のアクションでGMOインターネットグループのスピードが速くなり、全体が加速し、GMOインターネットもスピードが速くなる。グループ再編においてこれ以上正しい策はないと考えているので、今後の業績の伸びをご期待いただければ。

Q(事前質問)既存のインフラ事業を移管したことは理解できるが、なぜそこで利用できる株主優待まで廃止したのか。グループ会社のサービスに使える優待券を復活してほしい。できないなら配当を増額してほしい

熊谷:株主優待については完全廃止ではなく、GMOクリック証券のものは残していますが、まずお詫び申しあげます。

 会社法では、全ての株主を平等に扱わなければいけない株主平等の原則というものがあります。株主優待は平等かというと、実は不平等なんです。

 なぜなら、すべての株主が使っているかというと、使っていないんですよ。一部の株主だけが得をしてる状況です。これは本来の株主平等の原則からして正しくないというのがそもそも論の話です。

 とはいえ、それを期待いただいて投資をされた株主も多数おられるので、そのみなさまの不満はおっしゃる通りでしょう。

 従って、私たちのグループでは、株主優待廃止と同時に現金配当を上げています。

 ただ、GMOインターネットグループの配当施策は現在変更していない。GMOインターネットグループはGMOインターネットに譲渡した事業を行っていたので、配当の原資となる収入と株主優待で使えるサービスがあったが、譲渡で収入もサービスも持っていない状態になった。よって、大変申しわけないが、GMOインターネットグループの株主優待は廃止した。

 代わりに商材を移したGMOインターネットでは、株主優待の復活はしてないものの、50%だった配当性向を今後2年間は100%まで増やす方策をとっている。これは株主平等の原則に基づいている。

 GMOインターネットグループはグループ各社からの配当が主な収入になるが、グループ各社が配当率を上げています。GMOインターネットは100パーセントに上げていて、その他の上場各社も各社の取締役会でこれは決めるので約束はしかねるが、発表がすでに終わっている上場企業は50→65%に変更しています。

 GMOインターネットグループは収入が増えた段階でまた取締役会で議論して、株主還元をどうすればいいか議論したいと考えています。

 本日の段階では何もお約束できませんが、今後も配当を中心とした株主還元の方針の検討を前向きにしていきたい。

Q(事前質問)機関投資家との面談や個人投資家向け会社説明会の回数など、当期におけるIR活動の実績を教えてほしい。プライム市場上場企業として、より投資家との対話が求められている中、どのような方針で臨んでいるのか

熊谷:四半期ごとの決算説明会に加えて、当社グループのホームページでの情報開示を充実させている。事業戦略、経営戦略は四半期ごとに更新しているので、ご確認いただきたい。

 2024年の機関投資家とのミーティングは、IRチームにおいて合計200回を超える面談を実施したと報告を受けている。IRに関しては、専門のチームがいて、積極的に行っている

Q(事前質問・すずき)事業承継について、どのように行っていこうと考えているのか。自身がトップとして、いつごろまで率いていくつもりかという目安は。会社が目指す姿と熊谷社長個人の人生の目標は違うと思うが、熊谷さん個人の人生の目標はどこに置いているのか

熊谷:大前提として、私はGMOインターネットグループが1000年継続していくと言いたいのですが、あまりに現実的でなくなってしまうので100年単位と申し上げますが、心の中では永遠にと思っています。

 多くのお客様、国、社会に貢献でき、笑顔を増やすことができる企業グループとして存続してほしい。これが、私の社会生活における唯一無二の夢であり、目標であり、私の社会生活の人生を捧げている目標です。私はそれを実現するために、この先の人生も全てその仕組み作りに捧げたいと願っています。

 100年に一度のインターネット革命に巡り会えたことを心の底から神様に感謝し、このような時代に生まれてきて命を授かったことのありがたみを心の底から感じ、「ここに命を賭けずして何が男だ」「このチャンスに気付かずして男じゃない」と心の底から思ってます。

 インターネット革命やAI革命の中で社会や世の中を良くし、人々に笑顔を増やせるということ。恐らく人生でこれほどのチャンスにはもう巡り合わないだろうと心の底から思ってます。

 私の人生の目標とこの会社の向かっている目標はイコールです。私は、私が亡き後もこの企業グループが社会に対して、この感動を伝え続けられるようになってほしいと思ってます。

 その仕組みを作ることこそ私の唯一の仕事で、それが完成したら、その運用を最もできる優れた経営者にバトンタッチを図ります。そして、それは1日でも早い方がいいと思っています。よって、私が引退する日をお約束するものではありませんが、仕組みを作り、1日も早く優秀な経営者にバトンタッチしたいと思っていることは説明申し上げます。

 そして、最後のご質問。熊谷さん個人の人生の目標はどこに置いてるのか。会社と人生の目標は一緒でございます。

Q サステナビリティ、人権の取り組みの一環として、拉致問題の啓発をしてはどうか。人権意識やブランドイメージの向上につながり、北朝鮮関連施設に当社サービスの提供をしないことも示せば、より人権に関する社会貢献につながるのでは

熊谷:ご質問とご提案をいただきまして誠にありがとうございます。この件に関しては、持ち帰り前向きに検討させていただきます。

 ご指摘いただいているサステナビリティの観点から、人権侵害しているところにサービス提供しないというのは当然のことなので、前向きに検討させていただきたいと思います。

 新たな視点でのご指摘、ご提案を心から感謝申し上げます。

Q 東証から親子上場に関して少数株主保護の点から問題提起されている。親子上場に関しての考え、今後の方針について教えてほしい

熊谷:私は「歴史に学ぶ」ということを常々経営で関係者に話をしています。雑誌のインタビューなどで話しているので、お読みになった方もおられるかもしれませんが、「長く続いてるものに学ぶ」という意味です。

 私はよく「一番長く続いているのは会社じゃなくて宗教なので、組織のあり方は宗教に学ぶ」という話をします。

 これは、会社は誰も失敗すると思って立ち上げないのに、ほとんどの方が失敗するからです。数字で言うと、5年で70%がなくなり、10年続くのは2~3%、20年続く会社は0.3パーセント。これは税務署の数字なので間違いないと思いますが、つまり300社に1社しか20年続かないのです。だから、誰も失敗しないと思っているのですが、ほとんどの経営者は失敗するんです。

 そういう意味において、ものすごく長く続いている組織って何か。20代のころに考えたのですが、宗教だと気付いたんですね。宗教は1000年単位で続いてます。

 会社はお金を払うのに全然続かない。宗教は寄付を受け取るという意味においてお金をもらうのに1000年単位で続いている。そこに関心を持って、研究したことがあります。

 宗教は2つの側面があります。一つは人を幸せにするという精神的な側面。これが一番大切です。

 もう一つは外形的な側面。組織として5つの共通点を見出しました。「定期的に集う」、例えばキリスト教だと日曜日に教会へ行く。「同じものを読み、歌う」、聖書や聖歌ですね。「同じものを身につける」、これは例えば十字架ですね。「同じポーズをする」、十字を切ったりしますね。そして「神話がある」。

 私は組織の在り方というのは、人を幸せにすることと外形的な5つの共通点を組織に実装することによって、組織が固まり、同じ方向を向き、スピードが速くなって存続する可能性が高くなるんじゃないかという仮説を持ちました。

 組織は宗教に学び、事業は財閥に学ぶと言っています。。

 みなさん、この株主総会が終わったら、ヤフーファイナンスで「三菱」「住友」「三井」といった旧財閥グループ各社の名前を検索して、何社出てくるか見てみてください。

 東証が「親子上場けしからん」というお話をされてますが、三菱と入れれば20社以上出てきます。住友も同じです。

 日本の産業の歴史は親子上場の歴史です。みなさん全員が三菱や住友といった旧財閥グループの会社にお世話になっているんじゃないですか。旧財閥グループなくして日本経済が成り立つんですか。私は違うと思います。

 GMOインターネットグループも現在2兆円のバランスシートを持ってますが、右側の負債の部の右上の資金調達のところでは、メガバンクのみなさまに大変お世話になっています。旧財閥グループの方々が立ち上げられた金融機関から資金を調達させていただき、それをバランスシートの左側に投資してPLを作っているわけです。

 私はグループ企業の上場というのは歴史が証明していて正しいと強く信じています。だから、インターネット革命の中で100年単位の成長を続けるため、長く続いている先輩企業に学び、実践した結果、これが私のグループ会社上場の基本的な考えであり、今後もこの方針は続けていくと考えています。

 GMOインターネットグループの最終利益だけを純粋に考えれば、親子上場と言われる手法は取らない方がいいのかもしれません。

 例えば、GMOペイメントゲートウェイという優秀なグループ会社があります。本体の役員も務めている相浦一成が率いていますが、相浦が上場企業を率いているからこそ、やる気満々でこの成長が叶えられてるわけです。彼がGMOインターネットグループの決済事業部部長だったらどうなるでしょうか。

 本人がいるので、聞いてみましょう。上場した方がスピードも早まるし、いい人も集まるし、自身のインセンティブにもなるし、いいんじゃないですか。

相浦:本音と建前でいきましょう。

 本音は、代表を支えるという思いがあるので、同等の気持ちでやりますよね。

 上場させていただくと、その株主の方に評価いただくので、やっぱり張りはありますよね。企業価値を上げたい、お客さまに喜んでもらいたいという強い思いが、高いモチベーションとなって今があるのは間違いありません。

熊谷:今は立派に上場して、高成長して、世界中の投資家から評価いただいていますが、もしGMOインターネットグループの決済事業部だったとしたら今の成長はありましたかね。

相浦:熊谷代表がおっしゃった通り、年に2回、欧州やニューヨークに機関投資家の方に事業説明や成長戦略をお話しにいくわけですよね。その時に学ぶことって多分にあります。

 上場したことによって、一事業部長の立場より、勉強すること、教えてもらうことが多分2~3倍違うと思います。

 例えば、会社の中で研修に力を入れているのですが、研修の充足度って、会社の中でより、お客さまや株主に学ぶことが多分にあるわけですよね。会社の中で学ぶことより、世界に出ていろんな情報を聞いて、刺激されて今があります。企業価値や自分のモチベーションは数倍違ってくると思います。

熊谷:事業を譲渡した旧GMOアドパートナーズ、現GMOインターネットの伊藤正社長もいますが、いかがですか。上場してどういう心境の変化が起こり、どのように事業展開が変わりそうかひと言。

伊藤:まずは自分のやっている役割が全然変わりました。今までは一事業担当なので、売上や利益をいかに伸ばしていくかのみに集中していたのですが、今は上場企業なので、株主の方にどう我々の会社を理解していただくのかとか、株式を買っていただけるのかとか、それをどういうふうに伝えればいいのかとか、成長戦略をどう伝えるのかとか、考えることがすごく多くなりました。

 いろんな方に見られている、期待をかけられているところに応えないといけないというところは、去年から全然違うかなと思ってます。

熊谷:子会社という言葉はうちは禁止用語なんで、私のグループ会社上場の戦略は以上です。

 グループ会社上場で本体の最終利益が流出することを懸念されている投資家の方もおられると思います。単純な算数ではそうかもしれませんが、上場した各社が二次曲線でスピード成長していく結果、本体の最終利益も指数関数的に増えていくだろうと思ってます。

 これからのこのグループ上場の作戦展開結果にぜひご期待いただきたいと思います。

Q 現在、想定している新規事業について教えてください

熊谷:発表していないことをここでお話しするとインサイダーになってしまうので、発表している中で一番力を入れていることに関して回答します。

 今年のPL戦略は「ネットのセキュリティもGMO」という戦略です。グループ全体で今年はサイバーセキュリティ事業に力を入れています。

 具体的には、第1弾で発表したサービスが「GMOセキュリティ24」です。メールアドレスやWebサイトのURLを入力すると、メールアドレスのパスワードの漏洩とか、Webサイトがハッキングされる可能性とかを無料で24時間診断して差し上げますというサービスです。

 私たちの8000人のパートナー(社員)のうち1100人がサイバーセキュリティー事業に関与していて、その中のホワイトハッカーと言われる高度な技術力を持った仲間たちが知見を合わせて作ったサイトです。これによりみなさまの安全をお守りすることが今年の事業戦略です。

 ぜひ株主のみなさまにお使いいただきたいのですが、「パスワードの漏えいがある」と診断されたら、直ちにパスワードの変更をしてください。また、WebサイトのURLを入力して、「危険です」と表示されたら、ぜひご対応いただきたいと思います。いわゆるサイバー攻撃の被害をみんなで協力してなくしていくということです。

 万が一みなさまができない、例えば危険性があるけれどもWebサイトの穴を埋められないという場合のみお問い合わせいただいて、私たちがプロフェッショナルとしてその穴を埋めるお手伝いをするという形のサービスです。

 第2弾が3月6日に第1本社のある地下のボールルームを貸し切って開催した「GMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式」というイベント。1000人以上の方にご来場いただき、YouTubeなどでの視聴数が24時間で3000回、今は1万回に向けて増えているという状況です。

 守るのは企業1社だけじゃ無理なんですね。産官学が協力して、インターネット社会を良くしていかなければならないということで、啓蒙活動のために開催させていただきました。

 私たちが目指しているのは第一想起企業。ホームセキュリティだったらセコムやアルソックといった第一想起企業がありますが、ネットセキュリティでは会社名が出てきませんよね。そこをGMOと思っていただけるような企業グループに成長させようというのがこの新プロジェクトです。

 私たちは1995年にネット事業を開始したので今年で30年目。この30年間で、日本で一番インターネットを広げてきた会社の1社です。

 みなさんはヤフーやグーグルで毎日検索されていらっしゃると思いますが、そのうちの80%以上のWebサイトに私たちのサービスを何らかの形でご利用いただいています。

 インターネットを一番広げた企業の一社として、日々のニュースに踊る「サイバー攻撃」「サイバー犯罪」という言葉を見て、私もグループのパートナーも全員胸を痛めています。本来、私たちが広げたインターネットは、悪者が悪事を働くためのツールじゃないんだ、世の中を良くするんだと思ってこの事業を展開してきたわけです。にもかかわらず、現実は厳しい。

 よって、インターネット革命の後半戦で、私たちはインターネットをより安全にし、多くの笑顔を見たいということで、「全ての人に安心な未来を」というキャッチコピーのもと、ネットのセキュリティもGMOプロジェクトを開始しました。これが今年、来年と最も注力する事業です。

Q(すずき) ドメイン事業でのお名前.com、ムームードメイン、バリュードメインなど、グループ内に同じ事業を営む企業が複数あるケースが多いと思う。これにはどういうメリットやデメリットがあるのか、整理統合についてどう考えているのか

熊谷:GMOインターネットグループの多ブランド戦略という事業戦略です。

 私たちは1995年に事業を開始して、1999年8月27日に独立系インターネット企業として日本で初めて上場しました。その時アナリストから「今後どうやって伸ばしていくんですか」という質問をいただいて、多ブランド戦略の説明をしたことを記憶しています。

 ほとんどの投資の専門家から否定されました。「どうして統合しないんですか」「コストがかかるばっかりじゃないですか」といろんなことを言われました。説明したのですが、理解いただけなかった。

 30年経って、例えばインターネットの住所であるドメインの国内マーケットシェア、我々8割以上です。私たちのデータセンターにお預かりしているWebサイトは54パーセントです。

 これは多ブランド戦略のなせる技で、単一ブランドではこんなことできません。よって、結果論ですが、多ブランド戦略は正しいということが歴史的に証明されたと考えています。なぜかというと、これだけで1時間以上話すことになるので説明は省略しますが、今後も多ブランド戦略は続けていくと考えています。

 インターネットの仕組みとインターネットのマーケティングを熟知しているグループだからこそかなう戦略です。

※「説明は省略」としたところを後日、IRに聞いてみました。↓のようなことだそうです

IR担当:1.マーケットニーズへの対応:
   異なるブランドを展開することで、各ブランドが異なるターゲット市場に適したサービスや製品を提供でき、市場の多様なニーズに柔軟に対応することができます。この戦略は、競争が激しいインターネット業界において特に重要です。

2. リスク分散:
   同じ事業領域でもブランドを分けることで、個別のブランドが直面するリスクを他のブランドでカバーすることができます。この結果、グループ全体としてのリスク分散が図られ、安定した経営が可能となります。

3. ブランドの強みを最大化:
   各ブランドが独自の特徴や強みを活かし、それぞれの市場で特化した戦略を展開することにより、他の競合企業と差別化を図ることができます。これにより、グループ全体としての競争力が向上します。検索の面を抑えるという効果もございます(Googleなどで検索すると、結果として当社グループのサービスが検索の最初の画面を占有するなど)

4.効率化とシナジー(デメリットの最小化
 対お客さまの観点ではマルチブランド戦略を取りつつ、仕入れは現GMOインターネット社が一括で行うことでスケールメリットを享受しています。ブランド間で競合が生じる可能性がありますが、各ブランドのターゲット市場や戦略が異なるため、直接的な競争は最小限にとどまります。また、リソースや運営の重複についても、効率化を進めることでデメリットを抑えることができます。

 このように、マルチブランド戦略の継続により、市場への柔軟な対応力や競争優位性を高めつつ、デメリットを最小限に抑え、効率的な運営を実現しています。

Q 招集通知掲載の株価の推移を見ると、この数年、成長が見られないと市場は判断しているように見える。一株当たりの配当額も年々下がっているが、今後どうやって再成長の軌道に持っていくのか。株主優待の廃止でさらに株価が低迷しないようにしてほしい

熊谷:印刷した時はご指摘通りでしたが、昨日までの株価をご覧いただくと、マーケットは私どもの事業戦略をきちんとご理解いただき、昨年来高値を突破する勢いになっていると思います。

 ご指摘の通り、確かに去年までは株価が冴えなかったかもしれません。

 AIの時代、大量上場の時代を迎え、私どもは上場から30年も経っているので、そういう意味では、ちょっと私どもに対する目というか、新しいものに対する目の方に移ったのかもかもしれません。

 しかし、企業はその瞬間では分かりません。例えば、先ほど社長がここに立ったGMOペイメントゲートウェイは、4000社ある上場企業の中で増収増益2位です。

 GMOインターネットグループはいくつもの事業を抱えています。増益という意味では2年前に止まりましたが、増収という意味では16期連続です。4000社の上場企業がありますが、16期連続増収している会社は1%ですよ。これが評価されない理由はありません。目先の株価は理解していないかもしれませんが、私は自信満々です。

 私は創業者であり、このGMOインターネットグループの最大の株主です。株価がきちんと正しく評価されることをもちろん望んでいますし、先ほど「このグループに命をかける。一生涯このグループ、インターネットあるいはAIの成長に自分の命を捧げる」とお話ししましたが、結果としてそれは必ずや株価に表現されると信じています。短期ではなく中長期でグループにご期待いただきたいと思います。

Q GMOインターネットグループとGMOインターネットの社名について

熊谷:これは社名が似てるということですかね。恐らくGMOインターネットグループとGMOインターネットという社名が似ているという質問をされたいと想像しますので回答させていただきます。

 事例を取ると、ソフトバンクとソフトバンクグループという関係と全く同じ考え方です。

 私たちは、このGMOインターネットという会社名に誇りを持っています。世の中を支えてインターネットを成長させてきたと。このGMOというブランドに誇りを持っています。そこで、GMOインターネットグループというのをグループ全体の社名としました。

 ちょっと分かりづらいかもしれませんが、グループの有無で社名を見分けていただいて、今後もこの社名で参りたいと考えています。

Q 数年前からバーチャルオンリー株主総会ですが、ぜひともリアルあるいはハイブリッド株主総会に戻してもらいたいです

熊谷:私たちはこのバーチャルオンリー株主総会に国内で最も取り組んでいる企業グループです。

 私たちがなぜこのバーチャルオンリー株主総会に取り組んでるのかというと、リアル株主総会は世界で何百万回もの開催実績があります。バーチャルオンリー株主総会はまだわずかしか開催実績がありません。

 今日も、役員が前に出てきて身振り手振り交えて説明したり、YouTubeでご覧になっている株主の方が3ケタいらっしゃいます。ランチを食べながら見てる方もいらっしゃるだろうし、お台所の仕事をされながら見ていらっしゃる主婦の方もおられるのかもしれません。

 新しい株主総会の形は政府も推進しているわけです。これの可能性をもっともっと追求してみたいと思います。私たちインターネットに関わる企業グループが実際やってみて、世の中にお示しして、比較の材料になりたいと思っています。

 ずっとリアルな株主総会をやってきました。ある時は、僕は株主総会にお越しいただく株主数こそ評価基準だと思って、個人投資家説明会だと思って、2000人以上の株主にお越しいただいたこともあります。

 その昔には、青山の青山ダイヤモンドホールの地下だったかを借りて、株主のみなさまに中華料理とお酒を振る舞って、酔っ払った株主のみなさまに最後に絡まれてえらいことになったこともありました。

 みなさまのお気持ちは分かるのですが、まずは我々企業グループにこのバーチャル株主総会の実験をさせてください。

 メリットデメリットはいっぱいありますが、今ご覧いただいております3ケタの株主の方には、海外から見ている方もいらっしゃいますよ。

 質問いただく場合でも、明確にテキストで思考を整理されて質問いただいてますから、十分手厚くきちんとした回答することが叶います。(リアル)株主総会だと、その場で手を挙げられて質問するので、私は過去の株主総会にグループ合わせて何十回も出席していますが、周りの方から「お前何言ってんだか分かんないからいい加減にしろ」とか野次を飛ばされるような質問も過去に多々ありました。そういうことが起こらないのが、このバーチャル株主総会なんですよ。みなさまも思考を整理できる、私も十分回答に時間を割ける。

 そういう意味において、リアルに行きたいというお話もわかります。けれども、この新しいやり方による良いところもたくさんあります。

 せっかく政府が推進しているので、私はこのバーチャル株主総会というインターネットを通じた株主総会を、より新しいところに昇華させていきたい、チャレンジしたいと思ってます。

 ご意見として、十分に検討させていただきますが、今後もバーチャル株主総会を続けていくつもりですので、ご理解をいただきたいと思います