3月28日10時から行われた電通グループの株主総会。日本を代表する広告代理店です。
| 直近経営資料 | 2024年12月期決算短信、決算説明会資料、質疑応答、中期経営計画 |
|---|---|
| 株主総会資料 | 定時株主総会招集通知 |
| 前回 | 電通グループ株主総会2024|綿引義昌・電通取締役「(著名人を騙るネットの)詐欺広告やフェイクニュースについては、ゆゆしき問題ととらえている。電通だけでなく、日本インタラクティブ広告協会でもきっちりした対処をしないといけないとして働きかけしている」 |
業績は増収減益。赤字の大きな要因となったのは、海外事業でのれんの減損損失2101億円を計上したこと。来期は増収増益見込みです。
| - | 売上 | 営業利益 | 純利益 | PER | PBR | 時価総額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 電通グループ・22年12月期 | 12438億円 | 1176億円 | 598億円 | |||
| 電通グループ・23年12月期 | 13045億円 | 453億円 | -107億円 | |||
| 電通グループ・24年12月期 | 14109億円 | -1249億円 | -1397億円 | 88.0倍 | 1.26倍 | 9015億円 |
| 電通グループ・25年12月期予想 | 14940億円 | 660億円 | 193億円 | |||
| 博報堂DYHD・24年3月期 | 9467億円 | 342億円 | 249億円 | 27.6倍 | 1.10倍 | 4402億円 |
| サイバーエージェント・24年9月期 | 8029億円 | 418億円 | 162億円 | 30.2倍 | 4.06倍 | 6356億円 |
※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績
2013年にイージスを買収して以来、電通グループでは海外売り上げが国内を上回るようになりました。ただし、直近の売上成長率では海外の不調が目立っています。
ディールラボによると、広告代理店の世界市場シェア(2022年)は1位WPP(4.65%)、2位オムニコム・グループ(3.84%)、3位ピュブリシス・グループ(3.58%)、4位アクセンチュア(3.27%)、5位インターパブリック・グループ(2.93%)で、電通は6位(2.54%)。

日本の広告市場全体に目を向けると、2024年の総広告費は前年比4.9%増の7兆6730億円。1947年に推定を開始して以降、過去最高だった前年をさらに上回りました。
2023年は減少していたテレビの広告費が、パリ五輪などの影響でプラスに転じたことが、扱いの多い電通にとっては大きいです。

インターネット広告費は2023年は前年比7.8%増とやや伸び悩んでいたのですが、2024年は前年比9.6%増と2ケタ成長に近いところまで戻してきています。
2月に発表した新中期経営計画(2025-2027)では、過去のM&A偏重の成長戦略を見直すことを表明しました。

ここ一年の主な動き
2024年5月20日 2.5次元IPの運営・開発を行うウタイテ社に出資
7月3日 ピクシブ社およびambr社と、メタバース空間におけるアバターと3Dアイテムの利用拡大に向けた共同プロジェクトを開始
7~8月 パリオリンピック開催
2025年2月14日 中期経営計画 2025-2027を発表
2月27日 2024年日本の広告費
3月3日 電通を襲った再びの悪夢、「世界進出」の落とし穴 M&A連発の海外で巨額減損、過去最大赤字に(東洋経済オンライン)
3月14日 公正取引委員会が公表した企業は「コーナン商事」「電通」「日本通運」の3社(NHK)
3月19日 「電通総研 経済安全保障研究センター」を新設
手元資金(ネットキャッシュ)の推移
2021年に自社ビルをリースバックして手元資金を増やしたのですが、直近ではマイナスになっています
| - | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|
| 営業CF | +808億円 | +752億円 | +599億円 |
| 投資CF | -243億円 | -1462億円 | -309億円 |
| 財務CF | -1881億円 | -1536億円 | -657億円 |
| - | 2022年12月末 | 2023年12月末 | 2024年12月末 |
| 現預金 | 6037億円 | 3906億円 | 3719億円 |
| 有利子負債 | 5324億円 | 4944億円 | 3736億円 |
| ネットキャッシュ | 713億円 | -1037億円 | -16億円 |
議案
(1)取締役11名選任
| 前年株主総会 | 今回候補者 |
|---|---|
| ▼ティモシー・アンドレー(取締役会議長) | 【社外】松井巖(元福岡高等検察庁検事長) |
| 五十嵐博 | 五十嵐博(代表取締役社長CEO) |
| 曽我有信 | 曽我有信(チーフ・ガバナンス・オフィサー) |
| 【社外】松井巖 | 【社外】ポール・キャンドランド(元ディズニーJP社長) |
| 【社外】ポール・キャンドランド | 【社外】アンドリュー・ハウス(元SIE社長) |
| 【社外】アンドリュー・ハウス | 【社外】佐川恵一(元リクルートHD・CFO) |
| 【社外】佐川恵一 | 【社外】曽我辺美保子(公認会計士) |
| 【社外】曽我辺美保子 | 【社外】松田結花(公認会計士) |
| 【社外】松田結花 | △【社外】河村芳彦(元日立製作所CFO) |
| △【社外】高嶋智光(元法務事務次官) | |
| △【社外】市川奈緒子(元三菱ケミカルHD・執行役員CMO) |
株主総会のTwitter実況
株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#電通株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます
【アンケート】
— すずき (@michsuzu) March 27, 2025
あなたは電通のことが好きですか? #電通株主総会
会場のベルサール汐留に着いた。
— すずき (@michsuzu) March 28, 2025
電通本社はすぐそば(かつては自社ビルでしたが、現在は賃貸契約)。この辺は再開発がうまくいっていないのですが、最近、ビルの2階にYouTuberのヒカルさんがコラボするかきだ鮨をオープンしていて、盛り上げようとしてるのかなと感じました #電通株主総会 https://t.co/iIYWJYpVs2 pic.twitter.com/a3EUD91Owv
株主総会開始5分前の9時55分時点の参加者数は100人弱
— すずき (@michsuzu) March 28, 2025
前方スクリーンでは電通の関わった広告が流れる。最近の電通は単一広告だけでなく、企業全体の方向性に関わるコンサル的な役割も引き受けていて、パーパス策定にも関わったりしているのですが、そういう感じの広告も流れています #電通株主総会 pic.twitter.com/9bzPcO61c8
定刻の10時になって株主総会開始。議長は五十嵐博CEO。SDGs的な流れもあるのか、右の方に手話通訳してる人がいた。
— すずき (@michsuzu) March 28, 2025
議決権を持つ株主は4万2047人、行使する株主は1万3535人。監査委員長の松井巖さんから監査報告、「格別指摘すべき事項はない」とのこと #電通株主総会 pic.twitter.com/cOQBGrQf1m
4分間の映像で事業報告、内容は決算説明会資料と同じ。
— すずき (@michsuzu) March 28, 2025
その後、五十嵐議長が新中期経営計画も含めた対処すべき課題について説明。こちらは招集通知の通り #電通株主総会
決算説明会資料→https://t.co/XTpvbRMKQH
招集通知→https://t.co/EQOUyDZnN2
新中期経営計画→https://t.co/Ri4M2YDiNX pic.twitter.com/IUD9YI8hFm
取締役11名選任の議案について説明。取締役会議長だったティモシー・アンドレーさんが外れて、社外取締役が3人増える人事
— すずき (@michsuzu) March 28, 2025
10時23分から質疑応答へ #電通株主総会 pic.twitter.com/V99oM50OYP
Q 株価が結構下がっている。2000億円の減損も計上しているが、対応策と今後、また減損を計上しないようにする方法について聞きたい
五十嵐:株価低迷については、株主のみなさまにご心配をおかけしていることを真摯に受け止め、業績回復に努めていきたい。
執行役全員で今回の中期経営計画をしっかり策定し、実行していく。そして我々の課題であるコスト構造の改革、不振事業を一層して改善することを優先して取り組む。
また、今回の中期経営計画でも明確に示した通り、従来獲得したアセットの効果をしっかり発揮させるため、前期から取り組んでいて、今期以降もですが、内部投資にフォーカスして、この獲得したアセットのシナジー効果が出せ、競合と差別化が明確になり、クライアントの課題に応えられ、そして結果としてクライアントと一緒にグロースのパートナーとして成長していけるよう、中期経営計画の3年間でしっかりと結果を出していきたい。
四半期ごとに結果を開示していくので、進捗を見守っていただければ。
曽我有信:ご指摘の通り、2024年度に当社は約2000億円の減損損失を計上しました。減損損失を計上するということは、これまで私たちが海外に対して行ってきた投資残高に対して、将来の収益性をフェアに見積もった上で、その投資価値を引き下げたということです。
これが起きないようにするためにはどうしたらいいのか」については、ひと言で言えば「ここからあがる利益を上げること」に尽きます。
そのために内部投資によって、我々が持っている資産の収益性を上げていく。
それから、2025年度に構造改革として、新しい事業基盤を作るための一時費用約500億円を計上しています。これによって、グループ全体で高止まりしている管理コストを下げていく。
トップライン(売上)を上げていくことと、それを支えるための費用を下げていくことによって利益水準を上げることで、これから先、これ以上の減損損失が発生しないよう、経営陣一丸となって取り組んでいく。
Q(すずき) フジテレビで広告のAC差し替えやキャンセルが発生し、広告料を請求しないこととしたため、2025年3月期のフジテレビの広告収入は233億円の下方修正となった。広告代理店として電通が関わっている広告も多いと思うが、電通はこの影響をどのように受けるのか
佐野傑:確かにCMの差し替えはあったが、フジテレビ以外の放送局やデジタルメディアなどへの差し替えを積極的に実施したことで、結果的に我々の業績にはそれほど大きい影響はないと認識している
Q(すずき) 接待に関しては、電通でも社員の尊厳が傷つけられるようなものも過去にはあったのではないかという話も聞くが、今回の問題や昨今の社会情勢を受けて、「こういうことはするべきではない」とか方針が変わったことがあれば教えてほしい
綿引義昌:結論から先に申し上げますが、現時点において、そのような事実は確認できておりません。
電通グループでは行動憲章を定めていて、その中で、責任ある行動、誠実な行動、適切な通報と違反への対応を役職員全員に求めています。
さらに当社のすべての従業員とサプライヤーを対象に、国際的に認められたすべての人権の枠組みと原則を尊重した電通グループ人権ポリシーを定めています。
また、従業員に対してはハラスメント、インテグリティ、電通グループ行動憲章などの研修を徹底的に行っています。
合わせて何かあった時にグループ内外から通報できるスピークアップという制度を電通も作っていて、外から見て不審なことがあれば通報していただく仕組みを作っています。
これらの取り組みや日々のコミュニケーションの中で、類似した事象が起きないよう、未然に防ぐ体制を整えているとご理解いただければ。
五十嵐:スピークアップという通報制度に関しましては、社外も社内もこちらに通報する制度となっています。
特に社内からはここに通報することへの躊躇などが起きないよう、心理的な安全性をどう担保するかも大事だと思っている。そういったことを経営者やマネジメント層が繰り返し社員に伝えて、この通報制度を活用するよう徹底している
Q NHKが昭和30年に放送した軍艦島についての番組での捏造で、稲葉延雄会長が島民に謝罪していた。公共性の高いNHKがこういうことをやるのは問題。NHKへの影響力の大きい電通が番組審議会などで発言してはどうか、電通の社会的な信用もそれによって高まるのでは
佐野:NHKのあり方に関して、あるいはスクランブル放送に関して、弊社として回答する立場にないことはご理解いただければ。
また、付け加えますと、弊社から番組審議会などに参加していることはございません。もしそのような機会がございましたら、その場に応じて適切に意見を申し上げたい。
Q 先ほどの質問で、広告はフジテレビ以外に出すことで埋めたということだが、もう少し詳しく教えてほしい。フジテレビからもらえなくなった手数料収入については補償を請求するべきでは。報道されている元編成部長や港浩一元社長、中居正広氏らに賠償請求訴訟しないのか
佐野:例えばクライアントが「CMを100本流したい」と、5局の放送局に20本ずつCMを流そうと考えていて、今回フジテレビは使えないとなった時、他局で25本ずつ流し、合計100本になるという考え方です。
なので、フジテレビ分が20本なくなったからといって、100本流すCMが80本になるということはない。クライアントはフジテレビに流すことが目的ではなく、生活者のみなさまにCMをお届けすることが動機なので、そのように差し替えている。
ただ、他局が全部受容しきれるかというところがあるので、そのリーチが足りない分は、デジタルなど他の広告媒体で補っている。
返金に関しては、ニュースでご覧いただいている通り、フジテレビは広告収入を返金している状態で、そこに広告取引は成り立っていないと認識していて、クライアントに返金している中、広告が成立していないにも関わらず、私たちだけ手数料を取るのは適切ではないかなと考えて、そこに関しては請求しないこととしています。
綿引:中居さんやフジテレビの問題は、クライアントに影響を及ぼす懸念すべき事案だと弊社も考えている。
ですので、フジテレビや中居さんに対して、「クライアントから頂戴している指摘や要望については真摯に対応していただきたい」と、いくつかの申し出を行っています。
ただ、現時点で損害賠償訴訟などは検討していません。
今回の問題に適切に対応していただき、まず社会から信頼を取り戻していただく。これはフジテレビに対してということになりますが、電通ジャパンにとっても重要なことであると考えています。
もちろん中居さんにも、広告宣伝など取引があった案件については真摯な対応を求めているところですが、これ以上の内容に関しては、個別の取引になるので回答を差し控えさせていただきます。
現段階では、改善を要請していますが、損害賠償訴訟に関しては検討していないというのが回答になります。
Q フジテレビで昨日、経営刷新の発表があったが、あまり期待できない。今後どうなるか心配だ。キー局が5局から4局になるかもしれない。市場が縮小しないよう、昔プロ野球で楽天が参入した時のように、電通が財界からの融資を募ってTOBして経営陣を入れ替えてはどうか
佐野:昨日、経営陣の交代が発表されたが、いずれにしても第三者委員会からの提言がこれからある。 その上で、改めてフジテレビとして改革案などを策定、発表し、実行していくことが考えられるので、我々は引き続きそこを注視した上で、対応を継続していきたい。
TOBに関しては、民間放送が5局ある方が健全だとはおっしゃる通りだと思うが、私たちがTOBをするかについてはひとつのご意見として受け止めさせていただきたい
Q 取締役選任議案について。取締役候補からティモシー・アンドレーさんが外れているが、指名しなかった理由は。また、ガバナンス強化ということで社外取締役の人数が増えているが、現任を維持し追加する理由、また全員が当社株式を保有していないことについて
佐川恵一:今回、アンドレー氏から辞任の申し出がありました。その申し出を踏まえて、指名委員会として取締役会の体制を議論した結果です。
社外取締役の数の増加については、指名委員会で議論するにあたって数ありきで何かを議論することはない。電通グループ全体が今置かれている状況を踏まえて、その中で取締役会の構成員に求められるスキル・経験はどういうものが必要なのかを改めて議論して、招集通知にも記載されているスキルマトリックスという形で整理した。
我々が今求めるスキル・経験をもう1回棚卸しする中で、事業経験、グローバル経験、グローバル企業のマネジメントをした経験、構造改革を実際に指揮した経験、事業開発を推進した経験、危機管理に対する経験、あるいはその領域における人的ネットワークを豊富に持つとか、そういったスキル・経験を重視して、新たに候補とする取締役を決定した。加えて、ジェンダーや国籍といったバランスに多様性も意識して取締役会の構成を検討し、今回上程させていただいた。
株式の保有については、先ほど言った理由で、まず経験・スキルをベースに人選を行っている。 保有については、取締役個々の考えということで対処させていただいている。
Q 昨年、ある株主から「北朝鮮に拉致された人たちの救出を願うための啓発運動の提案」があった。この提案について、やるやらないははっきり言われてなかったが、この1年、特別取り組んできたという感じは受けていない。なぜ取り組まなかったのか、今後は取り組むのか
曽我:当社も「B2B2S」、ビジネスからビジネス、その先の社会課題の解決ということで事業に取り組んでいる。
その中で、これは個人的な意見も含めてだが、北朝鮮の拉致問題は非常に重要なアジェンダだと思っているが、社会課題の解決という大きなアジェンダの中で北朝鮮の問題に積極的に取り組んでいるということはない。
今後取り組んでいくのかということについても、社会課題といっても非常に多くのアジェンダが現在ある。日本だけでなく海外にも多くの課題があって、全てに取り組むことはできないので、グループ全体として社会課題の解決の優先順位をつけながら、クライアントのサポートもいただきながらやっているところ。
北朝鮮の問題をこれから取り上げられるのかについて、現時点で明確な計画を持っているわけではない。ただ、会社としても、この問題は非常に重要なアジェンダのひとつということは認識している。
Q 中期経営計画について。全体の数字については説明いただいたが、4地域(日本、米州、欧州・中東・アフリカ、アジア太平洋)ごとの内訳についても説明してほしい。後ほどWebサイトに掲載する形でもいいので、ご検討いただきたい
曽我:中期経営計画では2025年から3年間をかけて、不振ビジネスからの脱却、内部投資を中心にして目の前のアセットの収益性を上げていくことを大きな柱にしている。
現時点で4地域ごとの計画を開示しているわけではないが、不振ビジネスはどの地域にあるのかについては明確に認識している。
多くのM&Aを重ねた結果、複雑になっている管理部門のコストをシンプルにすることで収益性を上げる、それによって赤字から脱却することを計画している。
地域ごとの計画については、現在明確に具体化してるところ。
まず、初年度の今年に500億のコストをかけて、コスト基盤を下げていくことに全体として取り組んでいく。その上で、2026~2027年に成長軌道に持っていくという、二段に分かれた内容になっている。
2月に説明した中期経営計画の内容だけで、投資家のみなさんに納得していただいているとは思っていない。本当にこの経営陣でできるのかについては、我々の実行の結果、進捗を適切に見ていただくしかない。
その進捗について適宜説明をしていく中、中期経営計画の実効性、地域ごとの計画の進捗についても、みなさんとコミュニケーションしていきたいので、もう少しお時間をいただきたい。
五十嵐:特に今年については、果断に大胆にこの取り組みを進めないといけないと思っているし、何よりも実効性が非常に求められると思っている。
従って、適切なタイミングでその進捗状況をみなさまにもご理解いただけるような形で共有させていただくことを前提に、今期進めさせていただきたいと思うので、ぜひご理解いただければ。
Q 配当性向を35パーセントと設定した根拠は
曽我:我々の資本配分の考え方として、まずは中長期の視点に立った成長のための投資を行う。次に、株主のみなさんに対して、できる限り安定的に漸進していく配当で還元していく。3番目に、キャッシュフローやバランスシートの状況を見ながら追加の還元をしていく。この3点を資本配分方針という形で掲げている。
配当という形で株主のみなさんにどのくらい還元すべきかという議論では、日本の状況、我々が競合として考えている欧米のPRグループの状況を見て、配当性向を決めた。
これまでは安定配当ということで金額が安定的に漸増していくことが主だったが、数年前に配当性向35パーセントの方針を決めた。
配当原資となるのは、当社の現時点では調整後の当期利益になるが、これが上がっていくことで株主のみなさんに対する配当も上がっていくことを前提にしている。
五十嵐:安定的に株主に配当を続けることは、経営としても非常に優先度の高いものだと思っている。
先ほど申し上げた通り、今期についてはかなりのコストをかけて、リストラ&内部投資をする。そのため2025年度は2024年度と同額の配当を考えていると申し上げた。
この中期経営計画で業績を改善して、配当性向35パーセントでの金額が、株主の方々にも納得いただけるような業績をしっかりあげていきたい
Q 中期経営計画では日本の他に米州も重要な地域となる。電通ジャパンの中にグローバル経営能力というものは育ってきているのか。どう獲得していくのか
五十嵐:私たちが海外事業を強化する時、日本型の今のビジネスが海外に展開できるのか、組織的に可能な状態になっているのかについて、私自身もこの責務を担うようになってから常に考え続けている。
今回の中期経営計画の中でも、スポーツ&エンターテインメントを強化するという話がある。
これについては電通スポーツインターナショナルという組織があり、今現在は電通ジャパンで管轄している組織となる。この組織の中にはMKTGというグローバルのスポーツコンサルティングを主な事業内容とする会社が入っている。今週、そのメンバーが日本で一堂に会していた。
ブレイクスルーするまで、あるいはまとまって事業を進めるまでにいささか困難もあったかと思うが、直近、非常にその組織の中に日本人、それから海外の人材を交えて成果が見られている。年度の成長率も2ケタで今推移している。日本、米州、欧州・中東・アフリカ、アジア太平洋の人を取り込みながら活用していくことはできているかと思う。
組織的なアビリティという意味では、そういったところがひとつの中核点になるかと思っている。
また、コンサルティングの領域でも、日本事業ではビジネストランスフォーメーション(BX)と呼んでいる領域だが、日本でBXをやってきた人間が中核となって各マーケットに展開しているところ。
その領域は豊田祐一という役員がリードしているが、それぞれのマーケットにBX担当というような人間が配置されている。
単なるマーケティングの課題、コミュニケーションの課題ということだけでなく、事業変革に対する、あるいはサービス開発に関する提案が非常に評価され出している。
日本で始めたこういった取り組みが組織的にもグローバルにしっかりと根付き始めて、成果もあげ始めているので、この中期経営計画の期間内にしっかりと利益貢献できるような形に持っていきたい。
注力マーケットは日本と米州だが、米国が主戦場になるとは見ている。こういった巨大なマーケットに対して、グローバル経営の能力を発揮できる人材育成についてどういう状況になっているのかという質問については、谷本から。
谷本美穂:グローバル経営能力、グローバルリーダー人材の育成は、私たちとしても非常に重要な課題と認識している。
米国や海外の重要マーケットにおいて、国籍に関係なく活躍できる、強いグローバル人材を育てることは非常に重要な課題と認識していて、努力を進めている。電通ジャパンの人材の育成も含めて、努力を進めている。
具体的には、この課題を指名委員会で共有して、サクセッションプランのプロセスをしっかりと組んでいる。そこから見えてきた課題を踏まえ、選定された人材に対して、成長を加速するためのプログラムをいくつか用意している。
例えば、電通リーダーシップコネクトといった形で、世界から40人を日本に集めて、日本と海外を交えて、電通の強みを一緒に探求していく。
また、電通ジャパンの人材向けには、電通ネクスト20という次世代のリーダー20人を特定して、グローバルでの実務経験を積ませることもやっている。
今後も、こういった形で経営陣と一緒に、指名委員会とも相談しながら、このグローバル人材、理念、リーダーの育成の加速に努力していきたい。
五十嵐:もちろんグローバル経営にしっかり貢献できる日本人の育成は大事なことだと思っているが、私たちは「one dentsu」にするという大きな目標を掲げていて、日本人だけが経営を担うということを全く想定していない。海外の優秀な人材がリードすることも必須だと思っている。
従って、海外の優秀な人材を我々グループの中に取り込んでいくためのパイプラインや検討はずっと続けている。
我々のグループがしっかりと新しい価値を作っていくことに思いを馳せて、このグループに参加したいという有能な人材がたくさん生まれるよう、まずは経営、そして我々のグループのカルチャーをしっかりと磨いて高めていきたい。
Q 今回、グローバルで大きな減損を発表したが、この状況下で五十嵐さんは引き続きグループ社長をされるのか。英語で展開できる電通生え抜きの人間が現地にいけば、こんな傲慢な買収に対してもケンカできたのではないか
佐川:五十嵐CEO任用のプロセスについて少し説明する。大変厳しい業績と株価で、指名委員会としても大変重く受け止めていて、今後どうするのかという議論を進めてきた。
今回の中期経営計画の最大のポイントは海外事業の立て直しに置いているが、2つの観点で見直しをしていく。
1つは、経営基盤そのものを再構築する、赤字事業、不振事業について徹底的に見直しをかけていく。当然、コスト削減以上のものもあり得ると考えている。
そういったある種の止血を徹底的にまずやった上で、次の成長戦略、競争力の構築をやっていく。これを同時並行で進めていく中期経営計画になっていると認識している。
現場の経営チームをまとめて、これを策定したのは五十嵐氏。これまで五十嵐がやってきた「one dentsu」コンセプトの上に、今言ったような止血、新たな競争力の構築というものを載せていって中期経営計画を実行していく流れ。
一方、そういったことをやりながら、電通グループの企業風土そのものも合わせて引き続き変えていくことも経営上の重要なテーマとしていると認識している。こういった流れの中で、誰がそのリーダーシップをとっていくのがいいのか、重ねて議論してきた。
後継候補も選択肢に入れながら、誰が経営計画、企業風土改革でリーダーシップを発揮していけばいいのかを議論する中で、五十嵐CEOにリーダーシップをとってもらおうという結論に至った。
とはいえ今後、指名委員会としては、五十嵐CEOの後継候補の充実も図っている。
国籍を問わず後継者になりうる人材を充実していって、先ほど谷本がお話ししたように、様々な研修や仕事の機会を提供して育成しながら、グローバルの経営能力を高めていくことに邁進できればと思っている。
五十嵐:株主のみなさまに非常にご心配をおかけしていることを、私も強く認識している。
今回の中期経営計画についても、通常であれば4年程度が適切な時期だと思うが、2025~2027年の3年で何とかこれをやり遂げるスピード感も非常に重要だという認識のもとに策定している。
特に2025年については、あるとあらゆる課題に対して、果断に対応していきたいと思う。
株主のみなさまにも、その進捗状況をしっかりご理解いただけるようなコミュニケーションもとっていくので、しっかりと我々の進捗をご確認いただければ。
Q フジテレビ関連の質問。電通社内でフジテレビを担当していた人がしょぼくれているという話も聞く。成果オンリーで人事評価すると気の毒なことになってしまうと思うが、配慮してあげるのか
佐野:私たちは個人の評価を売上や業績のみでするようなことは今、していない。もちろん数字も大事だが、それ以外にも日々の立ち振る舞いや、周りに対してポジティブな影響を与えられたかとかが評価指標に入っている。
今回、フジテレビ担当の売上が下がったのみで、彼ら彼女らの評価が下がるようなことはないのでご安心ください。彼ら彼女らが意図してない状況で数字に変化があったことに関しては、もちろん十分に考慮しているので、ご安心いただければ。
Q 賠償請求を考えていないとのことだが、「不適切接待は電通にもあるのでは」との疑念を招く。毅然とした対応を取らないとグレーにみられる。ここ数年の性犯罪の多さには目に余るものがある。それは厳しい賠償請求を業界がしなかったからでは。抑止力としてやってほしい
綿引:ハラスメントに関しては、弊社グループも非常に厳しく対処していかなければいけない事案であるとは考えている。しかし改めてだが、損害賠償に関しては現時点では考えていない。その根拠はクライアントから賠償を請求されている事実がないから。
また、「電通にもやましいことがあるんじゃないか」と言われましたが、「やましいことがない」ということをまず申し上げておきたい。
電通グループ行動憲章並びに電通グループ人権ポリシーなどを設けて、我々としても研修などを通じて、これを重視すべくやっている。外からの目線でも、スピークアップで通報していただける仕組みを設けている。こういったことが起きないような環境を作っていこうと日々実施していて、やましいことがない状態にある。
改めてだが、貴重なご意見ではございますが、損害賠償訴訟に関しては現段階では検討していない。
曽我:電通ジャパンの二人からコメントがあったので、私はグループの視点だけでお話ししたい。
言うまでもないことだが、賠償請求するためには賠償の対象となる明確な根拠が必要となる。当社として賠償の根拠になるようなものを明確に認識してるわけではないので、現時点で賠償請求は考えていない。
逆に言うと、賠償の根拠になるようなものが明確にあった場合には、本件に限らず適切に賠償請求する対応をこれまでも取っているし、これからもとっていきたい。
性加害や人権に関わる当社としての対応については、グループの行動憲章とポリシーに基づく取り組みについて説明した。
加えて、当社には調達ガイドラインというものがある。フジテレビは当社の調達先の1社なので、当社としても、当社の今お話ししたようなポリシーに基づいて調達先にも明確な人権対応を求めていく。
本件についても、我々のポリシーに基づいて、フジテレビやフジ・メディアHDに対して、当社や当社の取引先に対して、真摯に対応してもらいたいという要請はしている。
残り3人とアナウンスしたところから3人を当てたので、質疑を終えて議案の採決へ。問題なく通過して、11時42分に株主総会閉会
— すずき (@michsuzu) March 28, 2025
閉会後に新任取締役の河村芳彦さん、高嶋智光さん、市川奈緒子さんを簡単に紹介して散会 #電通株主総会 pic.twitter.com/rR9irnka1G