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日本ファルコム株主総会2025|近藤季洋社長「来年、日本ファルコムは設立45周年でたくさんのニュースが控えていて、年間を通じて盛り上げていきたいので段階的に年明けから発表していく」

 12月18日13時30分から行われた日本ファルコムの株主総会。

 英雄伝説の軌跡シリーズやイースシリーズで知られるRPG業界の老舗。今期は軌跡シリーズの初代リメイク『空の軌跡 the 1st』がスマッシュヒットしました。

直近経営資料 2025年9月期決算短信決算補足説明資料、有価証券報告書
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回 日本ファルコム株主総会2024|近藤季洋社長「『空の軌跡 the 1st』でニッチ化している軌跡シリーズをもう一度盛り上げたい」

 業績は増収増益で、純利益率は34.4%と非常に高め。来期はほぼ横ばい予想ですが、この会社は保守的に予想するのが通例です

- 売上 営業利益 純利益 PER PBR 時価総額
日本ファルコム・23年9月期 24.7億円 13.2億円 9.1億円 15.2倍 1.28倍 121億円
日本ファルコム・24年9月期 25.2億円 12.4億円 8.5億円 14.7倍 1.16倍 118億円
日本ファルコム・25年9月期 26.1億円 13.4億円 9.0億円 17.9倍 1.48倍 161億円
日本ファルコム・26年9月期予想 26.0億円 13.0億円 9.0億円      
任天堂・25年3月期 11649億円 2825億円 2788億円 37.1倍 4.62倍 145193億円
スクエニHD・25年3月期 3245億円 405億円 244億円 60.3倍 3.06倍 10406億円

※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績

 売上は、自社製タイトルの売上を示す製品部門と、多言語版やアプリなどでの他社へのIP貸し出しから売上を得たライセンス部門の2つに大きく分けられます(ライセンス部門にはダウンロード版やDLCの売上も含まれているそうです)。

 近年は、海外売上が伸びているからか、ライセンス部門の割合が上昇しています。

事業年度 製品部門売上 製品比率 ライセンス部門売上 ライセンス比率
2011 14.00億円 89.6% 1.62億円 10.3%
2012 9.91億円 77.9% 2.80億円 22.0%
2013 14.99億円 81.4% 3.41億円 18.5%
2014 18.95億円 74.5% 6.46億円 25.4%
2015 7.70億円 48.9% 8.04億円 51.0%
2016 8.17億円 55.8% 6.47億円 44.1%
2017 11.43億円 55.5% 9.13億円 44.4%
2018 11.23億円 47.6% 12.34億円 52.3%
2019 8.11億円 33.0% 16.42億円 66.9%
2020 10.41億円 41.7% 14.55億円 58.2%
2021 6.67億円 26.9% 18.10億円 73.0%
2022 6.40億円 25.2% 18.93億円 74.7%
2023 6.45億円 26.1% 18.28億円 73.9%
2024 6.46億円 25.6% 18.78億円 74.5%
2025 7.31億円 28.0% 18.81億円 72.0%

 地域別の売上は次表の通り。

 単年度の売上は発売スケジュールによって大きく変動するので、長期的な動きを見ていただければ。近年は北米・欧州の伸びが顕著となっています。

事業年度 日本 アジア 北米・欧州
2014 20.3億円 3.4億円 1.5億円
2015 10.5億円 3.5億円 1.7億円
2016 11.8億円 0.3億円 2.3億円
2017 17.2億円 0.2億円 3.0億円
2018 20.3億円 1.4億円 1.7億円
2019 18.5億円 1.9億円 3.9億円
2020 20.2億円 1.0億円 3.7億円
2021 14.1億円 3.8億円 6.7億円
2022 14.9億円 2.1億円 8.2億円
2023 14.1億円 2.1億円 8.4億円
2024 14.8億円 0.3億円 10.0億円
2025 15.5億円 0.6億円 9.9億円

ここ一年の主な動き

2025年3月18日 元日本ファルコム会長・加藤正幸氏の「お別れの会」が挙行。佐藤辰男氏や新海 誠監督、ヘンク・ロジャース氏ら大勢の参列者が故人をしのぶ(電ファミニコゲーマー)

8月30日 日本ファルコム創設者,加藤正幸氏 追悼企画:前編。PCゲーム黎明期から素晴らしい作品を送り出してきた氏の人生 ビデオゲームの語り部たち:第42部

9月4日 『イース』『ドラスレ英雄伝説』『風の伝説ザナドゥ』現行機への移植開発決定

9月19日 『空の軌跡 the 1st』発売

10月21日 日本ファルコム創設者,加藤正幸氏 追悼企画:後編。近藤社長や古代祐三氏,難波弘之氏が振り返る加藤氏との思い出 ビデオゲームの語り部たち:第43部

11月18日 『空の軌跡 the 1st』制作の裏話も。高い評価を獲得した“古きよきRPG”のフルリメイクをするうえでこだわったポイントは?【近藤社長インタビュー:前編】(電撃オンライン)

11月21日 『空の軌跡 the 1st』で“RPGの初心者を増やしたい”。『空の軌跡SC』以降の『軌跡』シリーズのリメイク予定についても聞く【近藤社長インタビュー:後編】(電撃オンライン)

12月3日 スマホRPG『英雄伝説 ガガーブトリロジー』を日本リリース

2026年 『空の軌跡 the 2nd』発売

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 無借金経営で、手元資金も売上4年分近く抱えています。ただ、12月4日に41万2500株の自社株買い(約6億円)を行ったため、やや減らしているとは思われます。

- 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
営業CF +9.0億円 +8.4億円 +10.1億円
投資CF -0.0億円 -0.0億円 0.0億円
財務CF -2.0億円 -2.0億円 -2.0億円
- 2023年9月末 2024年9月末 2025年9月末
現預金 89.0億円 95.4億円 103.5億円
有利子負債 0億円 0億円 0億円
ネットキャッシュ 89.0億円 95.4億円 103.5億円

議案

(1)剰余金処分→期末配当を1株につき20円に

(2)監査役2名選任→石原彰生さん(呉ソフトウエア工房代表取締役)が再任、西田紀子さん(税理士、米国公認会計士)が新任

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#日本ファルコム株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

Q Switch2版『イースⅩ -Proud NORDICS-』は完全版という形をとったが、既存ユーザー向けにDLC方式で配信する形もあったのでは。二重購入の負担を減らすためにDLC方式を検討するか

近藤:DLCがないということで話題になった。『イースⅩ -Proud NORDICS-』についてはSwitch2版の研究開発のためにプロジェクトを開始した。ゲームの根本部分が高スペックマシンに対応しているため、DLCとして切り離すことができない。心苦しいが、Switch2専用版として発売した。今後、DLCとして切り離せるようなプロジェクトなら検討するが、『イースⅩ -Proud NORDICS-』については技術的に難しい

 

Q 軌跡シリーズの販売戦略について。個人的には『界の軌跡』が完結しなかったのが残念。リメイクは完結してからの方がいいのでは。今回リメイクをはさんだのは新規ユーザーを増やすメリットと、既存ユーザーが離れるリスクを天秤にかけた結果なのか

近藤:『界の軌跡』をお待たせしており、ご心配をおかけしている。

 『空の軌跡』リメイクを挟んだのは、新規ユーザーの獲得が目的にある。『界の軌跡』はPS専売だが、ユーザーの先細りが明確になっている。プラットフォームを絞っていたこともあり、『界の軌跡』が完結に向かう前に、卒業した人やシリーズを気にはしているが途中から参加が難しくて敬遠している人が参加する確率を引き上げるため、『空の軌跡』リメイクを一回挟む判断をした。

 『界の軌跡』は開発コストがボリューム的に大きい。軌跡シリーズも20年で、開発チームもオンラインゲームの運営に疲弊している。いったん彼らを休ませるというか、『界の軌跡』の完結に向けてモチベーションを上げてもらうため、初心に返って『空の軌跡』を見つめ直したいという社内事情がある

 

Q 『東亰ザナドゥ』続編のティーザーサイトがあったが、その後、情報が流れていない。続報を知りたい #日本ファルコム株主総会

近藤:来年、日本ファルコムは設立45周年、今日発表したニュースが物足りないなと思っている方がたくさんいらっしゃる。45周年でたくさんのニュースが控えているので、年間を通じて盛り上げていきたいので段階的に年明けから発表していく。ケチっているわけではない。

 

Q(すずき) 従業員数の見通しについて。少数精鋭で少しずつ増やしながら69人となっているが、最近、プログラマの募集をよく見かける。新作に加え、リメイク開発も求められる中、社員数は積極的に増やすのか。3年後に何人くらいとなるイメージなのか

近藤:現在69人ということで少なかった時の倍ほどになっている。昨今のゲーム開発に人員と工数がかかることに関しては弊社も変わりなく増加をたどる一方、現状でも足りていないと感じている。特に今年は採用強化して、4月から例年にないくらいの人数を採用する予定。

 3年後ということだが、通年採用しているので、幅広く人員を求めている。目標は考えていなくて、10人でも20人でも入れることはあるし、ファルコムとカルチャーが合わない人が多いなら少ない年もある。

 今のマルチプラットフォーム展開だと、人数を増やしたところで結局作業量は変わらないので、100人前後必要とは考えている。年間2本以上出すために必要な人員を積極的に採用していきたい

Q 製品部門とライセンス部門の売上について。『空の軌跡 the 1st』のSteam売上が増えると、ライセンス部門が増えた分だけ製品部門が減ったように見える。ファルコムの自社開発が減ったように見えるので、株価に影響するのでは #日本ファルコム株主総会

近藤:Steamは今のところ弊社が直接販売をしていなくて、ライセンシーが行っている。開発はエリアによっても違っているが、今のところライセンスはライセンス部門の売上となっている。製品部門とライセンス部門の線引きについては引き続き議論していく。

 Steamについては自社で国内でやるところから始めていく。これについてはライセンス部門から製品部門に切り替わっていくと思うので長い目でみていただければ

Q SwitchやSteamへの参入、世界同時発売と展開した経営陣の努力を支持するが、今後に強い懸念がある。『空の軌跡 the 1st』の評価は高いが初週販売数は『界の軌跡』より減少した。現状の施策では限界では。スマホアプリなど現状打破のための施策は

近藤:売上が下がっているのは、国内のことだと思う。国内は計画していた本数を大きく下回ったことに懸念を抱いている。事前からそういうこともあるだろうと想定して、世界同時展開した。海外は今回特に北米で一番売れた。中国市場でもSteamを中心に大きく数を伸ばしている。国内はパッケージ市場が厳しいので企業努力だけでは限界を感じている。

 スマホはゲームジャンルによって向き不向きがある。商品としてスマホに向いているならもちろん挑んでいきたいが、現状、展開しているIPをスマホに持っていって販売できるかというと、スマホに向けたローカライズが必要で費用がかかる。

 ゲーム制作の人件費、外部委託費もここ1年で大きく上がっている。一方で商品の価格転嫁ができておらず、会社で吸収している。そういうところが厳しい。今後どうしていくかは、海外とマルチプラットフォームを主軸に置いていく

 

Q 『イースⅩ -Proud NORDICS-』のような展開(後に”完全版”を販売する)は心情的な反発を招き、買い控えを招く。安価なDLCでコンテンツを補完してはどうか

近藤:プラットフォームの関係でDLC化できないものもあるので、そういうものに関してはややこしいが製品パッケージとして販売する。

 DLCに適したもの。今後、パッケージ販売が厳しくなってきていく中、オンラインとパッケージの中間の半運営型のものができてくるんじゃないかと思っていて、中国・韓国のゲームメーカーはそういう方向で動いている。そういう状況を注視しながら、ユーザーに受け入れられるなら積極的にトライしていきたい

 

Q 3~5年後の御社の姿について。オリジナルの新作、現行IPの続編をどのように販売する会社を目指しているのか

近藤:一番の強みはオリジナルゲームを制作できること。ライセンス部門は売り上げの6割強を占めているが、基本的には取引先から提案してもらったものが100%。製品に魅力を感じていただいて、ご提案いただいてライセンス部門と製品部門の売上を両輪で回していく。

 日本ファルコムとしてはオリジナルゲームを一生懸命作りたい。新作を出すと同時にシリーズものもしっかり作る。もっと事業を拡大しようとすると、タイトルの数が必要。外部も使うし、社内の新作の数を増やすのも急務。人数が増えてきたので、来年は新作も予定している。『界の軌跡』やイースの続編、完全新規作品も控えている。

 今までやりたくてもやれなかったことをやれるようになっている。ゲーム会社としての基本的なところ、新作とIPの活用、ワールドワイドに拡販していくことをしっかりやっていく

 

Q 過去のIP資産の有効活用について。『ロマンシア』『ソーサリアン』など強力なIPが眠っている。リメイクや新作で活用していないのは機会損失ではないか

近藤:外部を使って休眠IPを何とかするのは社内で始めている。制作を行う一方で休眠IPの活用も始めていて、今日は詳細を申し上げられないがそういう動きはある

 

Q 『イースVIII -Lacrimosa of DANA- モバイル』の現況と今後の見通しについて。なかなか発表できない状況が続いているが、そもそもこれから出していこうという考えなのか。出さないという決断もあるのか

近藤:だいぶ時間が経過しているが、ぜひリリースしてほしい。ライセンシー(bilibili)にお任せしている。

 開発で考えているクオリティに達していないとか、開発に停滞があるとかあるかもしれないが、定期的に声をかけている状況。契約の問題もあり、長引くと「続けていくか」という判断もしないといけない。引き続きライセンシーと協議しながら、リリースに向けて進めていきたい

 

Q リメイク作品の開発体制について。『空の軌跡 the 1st』はグラフィックが大幅に進化して好評だが、若手の技術継承と最新技術の活用とどちらがメインなのか

近藤:『空の軌跡 the 1st』は若手育成と技術のアップデート両方。他と違うのは、現場に大きな裁量を持たせて進めたこと。

 『界の軌跡』は最新作なのでディレクターが内容を決めて主導していたが、『空の軌跡 the 1st』は作品内容が最初から共通認識としてスタッフにあるので、強力なディレクションより伸び伸びとやってもらった。若手にはイベントのカットシーンで「元気にやってね」と現場に一切の裁量を与えたので、軌跡らしいフレッシュな場面が出来上がったのでは。

 プログラム技術や根本を支えるところは、『界の軌跡』のエンジニアがアップデートする形になっていて、両方で成り立っている。

 今後のリメイクはまたいろんな状況で、目的も違ったりする。新人に移植を任せるのはいい材料にはなる。空の軌跡は軌跡シリーズの転換期としてもCGや技術のアップデートもあるので、毎回同じではないがそう考えていただければ

 

Q 今年、軌跡シリーズは『ラストクラウディア』『Echocalypse -緋紅の神約-』とコラボしたが、『Echocalypse -緋紅の神約-』でキャラクターが到底しゃべるとは思わないセリフをしゃべっていた。監修はどうしていたか

近藤:初期段階でコラボ先に裁量を持って作っていただく。ファルコム側で監修はしている。監修の状況によっては原作の人間が必ずしも見られないので、ライセンス部門が担当することもあるが、恐らくそこでちゃんと見られていなかったのでは。今後はちゃんと見ていく

Q 新規向けの施策について。『空の軌跡 the 1st』が出たが、軌跡シリーズはたくさんある。『空の軌跡』から入った人を、どう『界の軌跡』につなげていくかという施策はあるのか

近藤:非常に今、社内でも課題になっている。『空の軌跡』から『界の軌跡』にはつながらないと思っている。

 軌跡シリーズを遊んでいて、『創の軌跡』までやったという人はいっぱいいる。休眠ユーザーが数十万人いるはずなので復帰してもらう、オンラインゲームの復帰キャンペーンじゃないが。一足飛びに『界の軌跡』までは難しいが、何もやらないよりはやった方がいいのではないか。

 『空の軌跡 the 1st』はプラットフォームにもよるが、新規ユーザーが14~15%いて、決して無視できない。広報も毎回、議論している。ショートムービーでストーリー解説をするとか、試行錯誤していきたい

 

Q 『空の軌跡 the 1st』は体験版を出した。今までしてこなかったと思うが、どういう目論見だったのか。『空の軌跡 the 2nd』や新作など後発タイトルでも体験版を出していくのか。個人的には出してほしい

近藤:『空の軌跡 the 1st』の開発状況はわりと順調に進んだ。シナリオがフィックスされていて、いつもよりゆとりがあったので、体験版が実現できた。内容に手ごたえがあったので、新規を増やすことを一番に掲げていた。

 ユーザーアンケートの購入動機でも強かったのは体験版。Steamの体験版を遊んでXでポストして口コミで広がったのが導線としてあり、体験版の重要性を認識した。

 後発タイトルはなるべく実施した方がいいと思うが、エリアやパブリッシャーの意向もあり、毎回検討していく形になるのでは

 

Q 対処すべき課題の広告・広報活動について。ゲーム媒体のインタビューは近藤さん一人が担っている印象がある。『空の軌跡 the 1st』はYouTuberやVTuberも取り上げていたので、彼ら彼女らと協力しては。また、近藤さん以外に広告塔を担える人はいないのか

近藤:(創業者の)加藤正幸が担当していたが、(昨年)逝去したことで今年、社内の体制を変えようとしている。通販やSNSの担当者と毎週1回ミーティングをして、広告・広報の内容を今まで以上に頻繁に議論している。『空の軌跡 the 1st』のキャッチコピーもフレッシュな感じがしたと思うが、若返りを図りたい。

 私の代わりについては常々声をかけているが、立候補者が出てこない。外部のタイトルとかで無理やり私が話すのは違うのではと思うこともあるので、外部のプロデューサーに担当してもらうことは思い描いている

Q 生成AIの活用でコスト削減をすることは考えているか

近藤:開発費が高騰する中、削減するひとつの手段としてAIは有効。一方、法的な課題があるため、製品に関わるところでの活用は慎重に行っている。

 社内の生成AIを使用した事例としては、ちょっとしたイメージを伝えるイメージボード的なものを作る他、シナリオライターがブレストする相手になってもらう。ファクトチェックも必要だが、図書館とかで調べるより、まずはAIにざっと調べてもらうと、2~3時間かかっていたものが10分で済むものもある。差し支えのないところで積極的に活用していきたい。

 シナリオの誤字脱字もみなさんから非常にご指摘いただくので、ある程度、AIでできないかという研究を始めている。シナリオのスクリプト化を自動化したことで、今までの半分くらいのスピードで実現できたケースもある。初期投資には時間も費用もかかるが、長期で効果をあげられるようなことには積極的に活用していきたい

 

Q 今期の売上見通しについて。前期に『空の軌跡 the 1st』で今期は『空の軌跡 the 2nd』と新作があるということだが、売上が変わらないのはどういうことなのか

近藤:かなりコンサバな見通しと自分でも見ている。国内のパッケージ市場が急速にシュリンクしている。『空の軌跡 the 1st』も国内でもっと行くと思っていたが、見通しが違った。

 市場や環境のせいにせず、『空の軌跡 the 2nd』は『空の軌跡 the 1st』とセットで売っていくが、『空の軌跡 the 2nd』で大きく跳ねるかというと、しっかりとした見通しを立てられない。

 海外についてはパブリッシャーの協力が得られると決まってから販売が決定する。完全新規作品はパブリッシャーに期内に協力をいただけるかということがあるので、コンサバな見通しとなっている

Q 12月4日に自社株買いをしたが、買った株の使い道は。今回は積み上がった現金の活用が目的なのか、それとも別の理由なのか。現金が多いと、アクティビストが入ってくる懸念もあるがどう考えているか

近藤:株主還元が主目的。合わせて、将来的な資本政策の選択の幅を広げる。具体的にどう利用するかは現段階では言及を控えるが。その2つが大きな目的。

 積み上がっている現金の使い道については、今後の状況をみて判断する。外部を使っての開発のチャレンジも始めているので、IPに投資するのが一番。人員の確保、開発費に振るが、いきなり大きく入れるのはおかしいので、まずは足場からという形で進めている

 

Q 『空の軌跡 the 1st』のSteamでの販売について。販売開始直後にミスがあったと思う。後に直ったが、地域別販売価格の設定ミスがあり、お客さんを逃した。『空の軌跡 the 2nd』の販売もあるので、最初の段階から決めておくべきでは

近藤:価格は基本的にパブリッシャーにお任せだが、本社にもインドネシアから「高すぎる」とかいただいたり、「買えたのに買えなくなっている」とかもあった。

 現地パブリッシャーと協議するが、北米のパブリッシャーということで発売でもたついたのは大きな反省点。『空の軌跡 the 1st』でこういう形でやろうよとまとまったので次はもたつかないのでは

 Steamはパブリッシャーによって商品がバラバラに登録される。指摘されたこともあって、ファルコムの方で一本化して、その下でパブリッシャーに商品を売ってもらう。登録が複数に分かれているのでランキングも分かれるとかなくなるし、中国語版と日本語版を間違って買うとかもなくなると思う。『空の軌跡 the 2nd』では改修した形でお届けできれば

 

Q 他社の決算発表会で完全版が出ることによる買い控えが懸念されていた。ファルコムも現状の方針だと、「完全版が出るまで」と買い控えするリスクがあるのでは。買い控えを防ぐための、商品のライフサイクルをどう設定しているのか

近藤:完全版を織り込んで商品を発売することはない。新しいプラットフォームでは何かを付加した方がいいだろうという開発側のサービス精神でやっている。それを完全版ととらえられるのは難しい。お客さんをダマそうとかハメようとかいう気持ちはない。新しいものを出すんだったら付けてあげようという気持ちで、心外というか不本意。

ただ、受け止められていることは受け止めて商品開発に努める。

 

Q jdkBANDが中国でライブを行っている。地域別の売上をみると、アジアの売上はそんなに大きくないのでリターン的にどうなのか。アジア圏だけでなく、より売上の多い北米・欧州にもアプローチしてはどうか

近藤:jdkBANDの中国大陸横断ツアーは原則、プロモーターからお声がけがあってのことで、費用的な負担は大きくない。アジアでやると赤字になるということはない。

 北米・欧州は現地からオファーがあれば応じたいが、こちらから企画して現地でやるのはハードルが高い。現地の状況を勘案しながらやっていく。数年前にはオンラインでライブして好評だった。条件があれば積極的にやっていきたい

Q 第2号議案の「監査役2名選任の件」について。12月12日に修正が入り、「西田紀子氏は、東京証券取引所の定めに基づく独立役員の要件を満たさない」とのことだが、どういう経緯で分かったのか。監査機能の充実を図る上で問題はないのか

中野貴司:招集通知の印刷をかけた後に監査法人から指摘を受けた。修正の必要があるということで開示した。監査役会からは基本的に問題ないとして承認を受けている

 

Q 『空の軌跡 the 1st』をSteamで発売日に購入した時、すぐにプレイできなくて夕方にアンロックされた。時差の問題かもしれないが、これはどうしようもないのか。日付が変わったタイミングでできないのかを聞きたい

近藤:北米と同時刻ということで実施した。日本版をすぐにプレイできるようにすることは……(スタッフと相談)……できないそうです。できるなら僕も実施したいが、これについてはパブリッシャーとの協議次第

 

Q 新作を作ることが大事だが、人員などの問題で難しいと思う。経験のある人間でないと作れないとか、ここが一番の新作開発のボトルネックとなっているということを教えてほしい

近藤:開発のプロセスの中で一番人材が足りていないのはディレクター部門。ゲームの方針を決めてどういうゲームシステムにするのか、チームにどう役割を配分するのか。商品として責任を持ってフィニッシャーとして売るところのディレクション。

 ある程度のセンスが必要で、経験も必要、ゲーム制作はチームなのでコミュニケーション能力も必要。この辺は生え抜きの社員でも経験を積んだからといってできるものでもない。

 外部のバリバリやっている人が来ても、カルチャーが違うところもあるので、うまくいかないこともある。中途も新卒もじっくり育てていくしかない。

 ファルコムの制作手法の特徴は極端に分業しないところにある。兼務していて、部署ごとにシナリオが終わるまで待たないとかあるのでスピードが速い。外部の人だと、そこにボトルネックを作ってしまって止めてしまうとかある。

 グラフィックなどは外の人の技術も勉強になったりするので取り入れていく

 

Q 『空の軌跡 the 1st』のSteamの売上が大きくなってきていると思うが、自社開発できるのに他社に販売を任せるのはさすがにもったいないのでは。ローカライザーを買収して自社でやっていく方針はないのか

近藤:海外版を自社で展開することについては、常時社内でも議論している。「北米は自社展開の方がいいのでは」と周りからも質問される。

 ファルコムの米国法人を作って、商品を売るとなると商品の球数が必要。年間新作1本で、リメイクや移植も出しているが、現地法人を立ててやるとなるとタイトルの数を増やす必要がある。今はタイトルの数を増やすことに注力していて、それが形になったら考えていく