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KADOKAWA株主総会2022レポ|夏野剛社長「ANYCOLOR(にじさんじ運営)の株価を見ていると『もっと我々のところでVTuberをビジネス化できていればよかったな』と思っている」

 6月24日14時から行われたKADOKAWAの株主総会。

 出版の角川グループとニコニコのドワンゴが合併して誕生した会社ですが、近年はゲームや教育など事業が多角化しています

直近経営資料 2022年3月期決算短信決算説明会資料
株主総会資料 定時株主総会招集通知
前回株主総会 KADOKAWA株主総会2021レポ|青柳昌行執行役員「ベテラン作家だけでなく新人育成にも力を入れている」

 業績は増収増益。来期は増収減益見込み

 セグメント別にみると、出版とゲームでの営業利益の伸びが目立っています

 出版事業は、紙書籍の海外事業が日本IPの人気の高まりを背景に、会社想定を上回る売上・利益となったようです

 売上・利益ともに大きく伸びたゲーム事業は、2月25日発売の『ELDEN RING』(フロム・ソフトウェア)によるもの。

 3月末までの世界累計出荷本数は1340万本。日本での累計出荷本数は100万本超なので、海外比率が9割超という計算になります。任天堂作品でも海外比率が9割を超える作品はまれです。

 なお『ELDEN RING』は国内販売はフロム・ソフトウェアですが、海外販売はバンダイナムコエンターテインメントが担当しています(ロイヤリティは非開示)。

 アニメや実写などの映像事業は増収減益。

 『Re:ゼロから始める異世界生活』第2期の海外売上や『この素晴らしい世界に祝福を!』のゲーム向け権利許諾があった前期からの反動で減益となったとのこと

 出版事業と映像事業に関しては、今年度から作品別の売上も開示しています。

 新刊発売やアニメ放送があった作品が当然、上位に入るわけですが、『ソードアート・オンライン』『Re:ゼロから始める異世界生活』の強さが光ります。

 一方、『聖女の魔力は万能です』のような女性向け作品が伸びているのが今風。いわゆる逆ハーレムものなのですが、主人公の女性が理系女子として活躍するところにも時代を感じます。

 一方、Webサービス(ニコニコ)は減収減益。

 ニコニコのプレミアム会員数は153万人(2021年3月末)→140万人(2022年3月末)と大きく減少。ただ、今期はイベントを開けるようになったことなどから、ほぼ横ばいにまで持ってきたようです。

 プレミアム会員数やアクティブユーザー数、ユーザー属性の推移の動画がこちら。日本の高齢化も影響し、ついに最も多い世代が30代となりました

 最新の数字は2022年3月末のものですが、それ以降にゆっくり茶番劇騒動やおとわっかなどが話題になったので、どう変化しているか気になるところです。

ここ一年の主な動き

2021年1~7月 アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』放送

4~6月 アニメ『聖女の魔力は万能です』放送

8月31日 コムドット やまと『聖域』発売

10月 社史『KADOKAWAのメディアミックス全史 サブカルチャーの創造と発展』(佐藤辰男著)発行

10月29日 中国テンセントグループとの資本業務提携

10~12月 アニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』放送

2022年1月19日 米澤穂信『黒牢城』が第166回直木賞を受賞

2月25日 アクションRPG『ELDEN RING』発売

4月 ニコニコ超会議を3年ぶりにリアルとネットで開催

5月23日 「ゆっくり茶番劇」商標登録に対する 弊社のアクションについて

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 ここ数年、KADOKAWAは手持ち資金に窮していたのですが、2022年3月末にプラスになりました

- 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
営業CF +165億円 +155億円 +217億円
投資CF -299億円 -59億円 -79億円
財務CF -43億円 +79億円 +266億円
- 2020年3月末 2021年3月末 2022年3月末
現預金 381億円 558億円 975億円
短期有価証券 0円 0円 0円
有利子負債 655億円 654億円 652億円
ネットキャッシュ -273億円 -95億円 322億円

議案

(1)定款一部変更→監査等委員会設置会社に移行。株主総会資料の電子提供。バーチャルオンリー株主総会

(2)取締役(監査等委員である取締役を除く)10名選任

前年株主総会 今回候補者
角川歴彦 角川歴彦(創業家、元社長)
松原眞樹 松原眞樹(前社長)
夏野剛 夏野剛(代表取締役社長、デジタル担当)
山下直久 山下直久(代表取締役、角川書店系)
▼安本洋一(財務、DX戦略) △村川忍(営業・マーケティング)
加瀬典子 加瀬典子(アスキー総研)
川上量生 川上量生(元社長、ドワンゴ顧問)
周欣寧 周欣寧(海外担当)
【社外】鵜浦博夫 【社外】鵜浦博夫(元NTT社長)
▼【社外】森泉知行(元ジュピターテレコム社長) 【社外】ジャーマン・ルース マリー(海外)
▼【社外】船津康次(トランス・コスモス会長)  
【社外】ジャーマン・ルース マリー  

(3)監査等委員である取締役3名選任→森泉知行さん(元ジュピターテレコム社長)、船津康次さん(トランス・コスモス会長)が社外取締役から横滑り。渡邊顯さん(弁護士)が社外監査役から横滑り

(4)取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬額決定→年額4億円以内(うち社外取締役分年額5000万円以内)

(5)監査等委員である取締役の報酬額決定→年額7000万円以内に

(6)取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く) に対する業績連動型株式報酬の額及び内容の決定→合計12億円(年間4億円相当)を上限

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#KADOKAWA株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

参考に読んだ本

角川源義の時代―角川書店をいかにして興したか

全てがここから始まる 角川グループは何をめざすか

KADOKAWAのメディアミックス全史 サブカルチャーの創造と発展

最後の角川春樹(毎日新聞出版)