スズキオンライン

なにか役立つことを書きたいです

ヤフー親会社が株主総会でヤフオク転売の質問をスルーしたのは適切か?――6月にバーチャルオンリー株主総会を開いた全8社に質問の取捨選択基準を聞いてみた

 こんにちは! すずきと申します。

 僕は株主総会マニアとして、いろんな株主総会に参加して、質問したり、レポートを書いたりしています。Twitterでも株主総会の模様をツイートしているので、ご覧になったことのある方もいるかもしれません。

 株主総会はかつては総会屋が暗躍する場でしたが、法改正で総会屋への利益供与が厳しく禁じられるようになってからは、ほぼ絶滅。かわって会社と株主の対話の場としての役割が大きくなってきました。株主の理解をより深めるため、株主総会後に事業説明会を開く企業も増えています。

 しかし、そんな株主総会にここ数年、大きな変化が訪れています。

 理由はコロナ。

 「多くの株主が集まる株主総会が“密”である」という声も挙がったことから、ネット配信を活用したバーチャル株主総会が急速に増えているのです。日本取引所グループによると、2022年6月開催の株主総会では上場企業の18.7%がバーチャル株主総会を予定していたとのこと。

 ひとくちにバーチャル株主総会といっても、いくつかの種類があります。

 現状はリアル会場とバーチャルを併用するハイブリッド型が一般的ですが、2021年の法改正により、リアル会場を設けず、バーチャルのみで完結する株主総会(バーチャルオンリー株主総会)を行うことも可能となりました。

 経済産業省によると、直近の株主総会集中月である2022年6月には、全8社がバーチャルオンリー株主総会を開催しているとのこと。

 リアル会場がいらなくなることで会場費を節約できるなどのメリットもあるのですが、導入前から株主サイドから心配されていたのは「議事運営が公正になされるか」ということ。

 それは特に質疑応答の部分。リアル株主総会では発言を求めて挙手した株主を議長が指名して質問してもらうのに対し、バーチャル株主総会では株主がテキストで質問を入力して送信し、運営がその中から取り上げる質問を選ぶ流れとなります。

 そこで「運営側が質問を選ぶとき、都合の悪い質問をスルーするんじゃないか」と言われていたのです。

 リアル会場だと指名した質問者が話し始めるまでどんな質問をするか分からないのですが、バーチャルオンリー株主総会だと質問を選ぶ段階で内容が分かっているので、都合のいい質問だけを選ぶこと(チェリーピッキング)が仕組みとして可能なのです。

 こうしたことから米国の議決権行使助言会社のISSが、バーチャルオンリー株主総会を開催するための定款変更議案に反対推奨を出したこともあります

 バーチャルオンリー株主総会導入の前に経済産業省が行ったパブリックコメントでも、チェリーピッキングを懸念する意見がありました。

 その懸念に対して、経済産業省は「恣意的な議事運営は許されない」と回答しているのですが、恣意的な議事運営が行われてしまった場合の罰則等は設けられていません。

 ある意味で、性善説で運営される前提に立った姿勢と言えます。

 僕も「上場企業なのでそこはちゃんとやるだろう」と思っていたのですが、2022年6月のバーチャルオンリー株主総会で、質問の取り上げ方に問題があった企業が現れました。

 ヤフーやLINEなどの親会社であるZホールディングスです。

ヤフオク転売の質問を株主総会でスルー???

 Zホールディングスではバーチャルオンリー株主総会の模様をライブ配信するだけではなく、配信をアーカイブとして残し株主総会当日の質疑応答の内容をテキストで公開、さらに株主総会当日に回答しなかった質問への回答もテキストで公開しています。

 株主総会が6月17日なのに対し、回答のテキストを公開したのは7月1日と、少し時期は離れているのですが、情報公開のフォーマットとしてはすばらしいと言えます。しかし、その内容を見ると、「あれっ」と思うことがありました。

 ヤフオクの転売に関する質問が4~5問もあったにもかかわらず、株主総会当日に回答せず、後日回答する分に回されていたのです。

 質問を読むと「ちょっと書き方がトゲトゲしいな」とも思うのですが、プロの記者と違って株主は質問の素人。ある程度は歩み寄って、理解してあげる必要があるでしょう。要は「社会的に問題とされている転売行為の規制についてどう考えているか」を、株主は問うているわけですね。それぞれの質問の文面は結構似ているのですが、1人1問の制限があるので、これだけの人が同様の問題意識を抱いているということです。

 会社法では「株主総会ではその目的事項について株主から説明を求められたとき、必要な説明をしなければならない」と定められています。

 ”目的事項”が何を指すかというと、「提出されている議案だけではなく、報告事項も含まれる」と一般には解釈されています(会社法の「株主総会の目的である事項」の意味は、条項ごとに異なるのか? - 弁護士川井信之の企業法務ノート)。

 テキストの回答では「株主総会の目的事項ではない」と書いてあるのですが、株主総会招集通知の事業報告にはヤフオクが含まれているので、明確に説明義務のある目的事項なんですよね。

 これとは別に「株主総会では都合の悪い質問に答えないこともできますよね」という質問もありました。

 それには「株主総会では目的事項に関連するご質問の中から、多くの株主様からお寄せいただいた ご質問や、株主の皆様のご関心が高い事項について、優先的にお答えしています」と回答。

 Zホールディングスは大会社で質問も多く寄せられるため、どうしても回答できない質問もあります。

 しかし、本当にこの方針で質問を選んでいたとしたら、ヤフオク転売の質問は4~5問とほかの質問より明らかに多く、目的事項にも合致しているのに株主総会で取り上げないのは不自然です。

 ヤフオクやメルカリでの高額転売は昨今、社会的に問題視されており、コロナ初期にはマスクやアルコール消毒製品の転売規制が行われたこともありました

 SNSで批判されることも多いセンシティブな問題なので、「回答を避けたんじゃないか」と僕は感じました。

 一方で、事業報告に含まれておらず、質問も1つだけのメタバースについては株主総会で回答していたりするので、「質疑応答という名目で、自社が言いたいことを言っているだけではないか」とも思いました。

 この件についてZホールディングスに聞いたところ、「業績や事業報告に書かれている内容を膨らませて、株主に成長戦略のグランドデザインを示すことが重要だと考えた。ヤフオクやヤフー知恵袋といった個別事業というより、どういう風に業績を立てていくのか、というところを答えていった。より厳しい質問にも回答している。チェリーピッキングではない」との回答。

 僕はチェリーピッキングだと思うのですが、読者のみなさまはどう思われるでしょうか。

 

 「株主総会で回答しなくても、後日回答しているならいいんじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。

 ただ、後日回答する形だと公開まで2週間空くこともあり、読む人が減るんですよね。いつ公開かも予告していなかったので、スケジュールにも入れられません。読んでいるのは僕みたいなマニアだけで、質問を送った人も忘れているんじゃないかと思います。実際、テキストのURLをTwitterで検索したところ、つぶやいていた人はゼロでした

 そもそも株主総会では質疑応答の後に取締役選任などの議案の採決があります。

 ヤフオク転売の質問に「社会的な問題なんか知らん!」と取締役が回答したら、「ヤベー奴だ」とその取締役の選任に反対する票が増えそうですが、回答が株主総会後だったら反対票を入れることはできないので良くないわけです。

6月にバーチャルオンリー株主総会を開いた全8社に運営方針を聞いてみた

 今回、Zホールディングスを批判しているわけですが、「質疑応答にチェリーピッキングがあったんじゃないか」という問題は、同社が質問を全公開するなど、情報公開に積極的だったからこそ分かったことです。

 実はバーチャルオンリー株主総会を開催した企業でも情報公開の量に差があるため、チェリーピッキングが検証できないことがあります。

 そこで6月にバーチャルオンリー株主総会を開いた全8社の情報公開について、次表のようにまとめました。

企業名 株主総会日 配信アーカイブ 全質問の公開 全質問に回答したか
Zホールディングス 6月17日
アルヒ 6月23日
意見は除いた
AIAIグループ 6月23日

質疑部分なし

エイベックス 6月24日 × ×
RIZAPグループ 6月24日
ただし7月限定
×
ただし書面上は非公開
アステリア 6月25日
うるる 6月28日 ×
Unipos 6月29日 × × 〇※
ただし書面上は非公開

※上限数を超えた質問や制限時間外の質問は除く

 エイベックス、RIZAPグループ、Uniposの3社は寄せられた質問を公開していないため、チェリーピッキングが行われているか検証できません。もっと言えば、公開している企業でも都合の悪い質問をこっそり抜いていると分からないのですが、そこは企業を信頼することにしましょう。

 バーチャルオンリー株主総会は歴史の浅い制度であるため、今回の事例が後々同様のことを行う企業のモデルケースとなります。

 「ダメな例が引き継がれてしまうのは良くない」と思ったので、各社に株主総会議事録の閲覧・謄写請求をして、合わせてバーチャルオンリー株主総会の運営方針および質問の取捨選択基準について、閲覧時もしくはメールでインタビューさせていただきました。

 バーチャルオンリー株主総会はチェックする公的な機関がないので、適当にやっても普通はバレません。ただ、こうやって聞くことが抑止力となって、「うるせー奴がいるから、ちゃんとやるか」となればいいなと思っています。

 そもそもバーチャルオンリー株主総会は、大勢の株主が会場にいるリアル株主総会と違い、会場に身内しかいないので緊張感が薄れ、結果、質問の取捨選択が甘くなってしまう可能性があるのでは、とも思います。ある開催企業では株主総会終了後にマイクを切り忘れ、役員の不適切な発言が配信されてしまったのですが、それはバーチャルオンリー株主総会ならではの緊張感の緩みも一因となったでしょう。

 「一介の個人株主のお前に何の権限があってIR担当者さんに負担をかけるんだ」という声はもっともで、僕もそう思います。本当は制度設計した経済産業省がチェックするべきだと思うのですが、そうなっていないので「許してください!」というところです。

 インタビューの対象は6月にバーチャルオンリー株主総会を開いた8社と、バーチャル株主総会の先駆者で、Zホールディングスの実質的な親会社であるソフトバンクグループの全9社です。お忙しい中、ご協力いただき、大変ありがとうございました。

 貴重なお話をうかがえたので、できるだけ詳しくご紹介していきます。

 また、7月上旬から手続きを始めたのですが、どれくらい時間がかかったか分かるよう、議事録謄写とインタビューの日付を加えています。メール返信や申請書提出など、僕はほぼ即レスを返したのですが、全社終わったのは9月下旬となりました。

うるる(議事録7月29日、インタビュー7月29日)

 ネット上で不特定多数に業務を発注する「クラウドソーシング」を活用するサービスが事業の中心。

 IR担当者がSNSを活発に更新するなど、IR活動に積極的なためか、最も早くお話を聞くことになりました。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブなし」「全質問の公開あり」「全質問の回答あり」です。

ーーバーチャルオンリー株主総会開催の経緯は
うるる:2021年は普通にリアルで株主総会を行ったが、「バーチャルでやるかどうか」という検討もしていた。ただ、当時の検討では「コスト面でリアルとコストが変わらないのでは」という結論になって、2021年は普通に開催することになった。
 普通に開催したのだが、参加者は1ケタ。遠方に住んでいる人は、東京まで来るのは難しい。当日、スタッフに開催負荷もかかっていた。

 「社内的な負荷軽減と、遠方の人でも参加しやすくするためにはバーチャルオンリー株主総会だな」ということで検討して、やることになった。
 結果、コストはリアルより安くなり、当日の社内的な動員も少なく済んだ。

ーーバーチャルオンリー株主総会開催までの流れは
うるる:1年前から動いていて、システムを担当するコインチェックとの打ち合わせが始まったのは2021年7月くらい。コインチェックに決めたのは、数社からお話を聞いたところ、コスト面で一番メリットがあり、システム内容を聞いても使いやすそうだと思ったから。2021年9月に正式決定した。
 信託銀行にも相談した。信託銀行にとっても前例がないので、「本当に大丈夫ですか」といろいろ調べてくれた。うるる、コインチェック、信託銀行でミーティングして、法的な論点や、回線が切れた時のバックアップなどについて議論した。

 具体的には、紙とシステムの両方で議決権行使できるので合算方法をどうするか、単元未満株主が参加できるようになっていないか、当日の運営で議長にどう集計結果を報告するか、株主から質問がスムーズにできるようになっているか、ログインできない等の時の窓口対応、リハーサルをどうやるか、など。リハーサルは本番と同様の環境を整えて行った。
 今年の会場は会社の会議室で、当日の同時接続者数は30人ほどだった。

ーー当日質問はどのような形で募集していたか。受け付ける期限は
うるる:株主総会開始から、最後までずっと受け付けていた。質問は全部で9件だったが、いつもの倍。質問がめちゃめちゃ来た場合でも、2時間くらいは受け付けようと決めていた。

 株主総会自体の時間は44分ほどで、そのうち10~15分を質疑応答に割いた。

ーー株主から届いた質問は開示しているか

うるる:原文のまま開示している。

 時間が許す限り、誠実に全部答えることが一番と思っており、質疑応答内容はすべて公開していて、公開した時にTwitterでもツイートしている。

ーー取り上げる質問を選ぶ基準は。どういう立場(役職)の人間が選んでいるか

うるる:事務局が質問を確認したら、取締役や監査役に「質問が来ました」と伝えて、事務局が質問を読み上げて、議長が取締役に回答を振る。基本的に質問が来た順番に取り上げた。

 役員は全員、システムにログインしていて、来た質問は見られるようになっている。

ーー質問の取捨選択が適切だったか判断する社外の人はいるか

うるる:いない

ーー株主総会のアーカイブ動画を残していないのはなぜか

うるる:そこまでしても、あまり見る人はいないのではないか。社内的な負荷がかかるし、法的な確認もしないといけない。株主が一番見たいのは質疑応答のところなので、そこはテキストでしっかりと出している。

 IR担当が2人しかいないので、どこまでやるかが課題。

ーー次年度もバーチャルオンリー株主総会で行うのか

うるる:コロナの状況にもよる。

 そもそも今回は産業競争力強化法の特例期間を活用して行ったもので、次回もやるとなると定款を変更しないといけない。

 バーチャルオンリー株主総会に関する定款変更はバーチャルオンリー株主総会ではできないので、来年はリアルとのハイブリッド株主総会になりそう。そこで定款変更も図る可能性がある。

ーーバーチャルオンリー株主総会についての課題は感じているか

うるる:性善説によるところが少しあり、会社としてはそこが問われる。

 株主側にも会社側にもメリットが大きいと思ったので、柔軟に引き続きやっていきたいと思っている。参加しやすいし、質問もしやすい。株主側からすると強いメリットでは。会社もリアルより負担が減る。

AIAIグループ(議事録8月2日、インタビュー8月2日)

 保育や介護が主事業。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブあり(質疑部分はなし)」「全質問の公開あり」「全質問の回答あり」です。

ーーバーチャルオンリー株主総会開催の経緯。開催までの流れは
AIAI:2019年12月の上場以来、定時株主総会を2回行ったが、問題意識として大きかったのが参加者数の少なさ。

 タイミングの悪いことに、上場して初めての株主総会がコロナ第一波が来た2020年3月。わけの分からないウイルスで、「会場には来てくれるな」という風潮もある中で開催。それでも「少しは盛り上がるのでは」と期待していたが、参加者は7人だけだった。
 翌年、2021年3月の株主総会のタイミングでは「もうちょっとIR的な要素で広くお伝えするやり方はないか」と、リアルとバーチャルのハイブリッド型を試みた。

 本社15階のフロアを会場として運営し、身内で動画を撮って配信する形。「できるだけたくさんの人にリーチしたい」という目的だったが、結果はリアル、バーチャル含めて想定を大きく下回った。
 それを踏まえて「何とかしないとマズい」ということがあったのが、バーチャルオンリー株主総会をやってみようと考えたきっかけ。

 考えた時期も今も、コロナの影響がずっと続いているので、「このままリアルで続けて開催するより、どのみちバーチャルオンリーの方向に振れるなら、早めにスタートすればいいのでは」とアドバイスももらったので、「今年、やってみようか」となった。
 2021年12月くらいから準備を開始。自前ではできないので、業者を選定して、月に1回打ち合わせ。他社事例もほとんどない。どんな代物になるのか、まったく想像がつかなかった。

ーー懸念していたことは
AIAI:一番は通信障害。通信がダメだと成立しないので。ビル内で当時、Wi-Fiの環境がちょっと不安定なことがあった。業者を呼んで改善して、開催のタイミングでは問題はなかったが心配していた。
 質疑応答やタイムラグの発生など、バーチャルオンリー株主総会はどういう形で進めていくべきなのか、分からないながらも質問したりしていたのが、GW前くらいまで。

ーー参加者数は

AIAI:当日のリアルタイムの同時接続数は6~7人くらい。

ーー質問はどのような形で募集していたのか。期限は

AIAI:事前質問2問、当日質問1問に回答した。

 当日質問は実際は2問あったが、1問は制限時間が切れた後に飛び込んできた。その質問は当日回答せずに、後日、IRサイトで公開するテキストで回答するという形で対応した(リンク先のQ4が該当)。

 当日質問は株主総会開始時から募集。テキスト形式で入力。報告事項の説明が終わった後、「質問の時間を設けます」とアナウンスしてから3分後に締め切りという形。締め切りのアナウンスのタイミングと、質問をシステム上で締め切るタイミングがずれたことがすれちがいの原因。タイムラグもあるので、もうちょっと研究が必要かも。ただ、「その後、IRサイトで回答すれば我々としての役目は果たせるかな」と考えた。

ーー取り上げる質問を選ぶ基準は。どういう立場(役職)の人間が選んでいるか
AIAI:基本的に全部答えようと思っていた。時間の制約がなさそうではあるが、1~2時間も受けるわけにはいかないかなとは思っていた。これほど参加者数が少ない中、興味を持っていただけた方にはちゃんとお答えしようという方針。
 質問は「1人1問でお願いします」と説明。ただし、入力する上での制限はない。

 取り上げる質問はIR担当が選んでいる。取捨選択の基準はあまり決めていなかったが、来た順番にIR担当がプリントアウトして議長に渡し、議長が答えるという流れ。
 「明らかに質問ではないもの」というのはなかった。悪い反応があったとしても、それは認知してもらっていることの裏返しでもあるので。
 質問自体が少なかったので、取捨選択さえもできなかった。もし質問がめちゃめちゃ来た場合でも、とりあえず答えようという方針だった。
ーー質問に全部答えている場合は、「すべての質問に回答した」と明言していただくと株主サイドとしては安心するかもしれません

AIAI:それはそうですね。

ーー株主総会のアーカイブ動画に質疑応答が含まれないが
AIAI:動画は「短めの方がアプローチいただきやすいだろう」ということで、「投資家や株主が興味のあるだろう事業戦略にフォーカスした方がいい」という判断。

 質疑応答を入れていないことに他意はない。

ーー次年度に向けての課題は感じているか。あるとすればどんなものか

AIAI:感想としては、「リアル開催であれ、バーチャル開催であれ、会社としての実力や認知を上げる努力をしないといけないな」という当たり前のこと。「業績を上げたり、事業規模を大きくしたり、社会的に認められる企業になることがベースにないと、どんな伝え方をしたところで有益なものにはならない」と強く感じた。

 リアルでもバーチャルでも工夫はしたつもりだが、思ったような成果は得られなかった。もうちょっと伝え方の工夫とか、株主総会だけでなく会社としてどう成長していくのかを伝えるかというところですね。株主総会後も常々言っているが、やっぱり業績が大事。そこを頑張らないとなというところ。

 我々は特殊かもしれないが、上場してからの株主総会はずっとコロナ下で参加者が少ない。来年もバーチャルオンリー株主総会。会場も場所もここ。具体的な運営については、時間が経ったら考えていく。
 これから他社事例が多く出てくると思うので、それを踏まえてより良くするツールとなるように研究したい。とにかくサンプルがない。
 上場して間もなくで、参加者も限られているので、バーチャルオンリー株主総会を開催する上でのハードルはなかった。「社長に挨拶するためにリアル株主総会に来た」みたいな人もいないので、わりと軽いノリでというのはないですが、そういう意味では決断は難しくはなかった。歴史のある企業の方が大変なのでは。

 バーチャルオンリー株主総会の感想についてのアンケートはとっていない。とるとしてもまんべんなくとらないといけない。
 バーチャルオンリー株主総会は1回目なので、「最低限の運営をできて、まずは良かったな」と思っている。ここから運営のブラッシュアップをしていく。

アステリア(議事録8月2日、インタビュー8月2日)

 企業内ITツールの開発・販売が主事業。2008年からバーチャル株主総会を行っていますが、バーチャルオンリー株主総会は今年が初めて。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブあり」「全質問の公開あり」「全質問の回答あり」です。

ーー株主総会の配信自体は2008年自体から行っているが、バーチャルオンリー株主総会開催の経緯は
アステリア:会社のビジネスモデルがデジタル化。そのため、場所を問われない形で、株主や投資家に公平に配信したいという思いが、トップとして強い。特に問題ないなら配信したいというのがあった。当初、東証からは「物理的に会場を用意してほしい」という要請があったが、うちが配信していくなかで緩和されていった。
 決算説明会も東証のルールで「年に〇〇回やってほしい」とか決まっているが、小さい会社なので来る人も少ないし、決まった質問しかない。会社についての幅広い意見を聞いていきたい。
 ネットで質問を受け付け始めたのは、2021年のリアル+バーチャルのハイブリッド型株主総会から。ハイブリッドでしかそういう仕組みができなかった。経産省のバーチャル株主総会に関する法改正には注目していて、水面下でどうなるか質問していた。バーチャル株主総会だと、どういうことが懸念されるか知りたかった。

 弊社はシステムを独自で運営している。「ブロックチェーンで構築している議決権行使の仕組みが法的に通用するのか」「法整備でどういうことが必要になるのか」といったことは、我々が勝手に決めるわけにはいかない。
 2021年6月の法改正でバーチャルオンリー株主総会を開催できるようになったが、法改正だけでは分かりづらいことがあり、「どういうものが用意されていないといけないか」が具体的に分からないものがあった。同意の問題、予備の通信回線の問題など。予備回線は用意するが、参加者側と役員側の回線も違うので、動くか確認しないといけない。今までとは違う。「テザリングレベルで用意すればいいのか」とか確認した。
 最終的には法務大臣と経済産業大臣の許可をとる必要があった。「通信障害が起こった時にどうするか」とか、1つの資料で提出しないといけない。1カ月ほどかかった。ただ、資料を出す前の調整の方が大変で、「こういう文書を加えてくれ」とか経産省の人が確認してきた。弊社がシステム含めて、バーチャルオンリー株主総会の準備を始めたのは1月になってから。
 バーチャルオンリー株主総会だと物理的な場所を用意せずに済むし、場所に関わる運営スタッフも必要ない。バーチャルになることでスタッフも余計に必要にはなるが、場所に関する警備などが必要なくなる。

 配信でYouTubeLiveを使っているのは、昔から使っていて、誰もがアクセスできるものだから。

ーーバーチャルオンリー株主総会を振り返ってみてどうだったか
アステリア:配信作業が結構大変。

 取締役や監査役はZOOMで参加するが、ZOOM自体は配信できないので、YouTubeLiveに映して配信。切り替えたりするスタッフが結構大変だった。音声がおかしかったりしたら、内部的に補正したりもした。映像や音声に関わるスタッフが大変だっただろう。数名でやっているので、リソース的にもうちょっと人数がいた方がいい。コスト面もあるので、外部の配信業者を使わずに、自社スタッフのみでやっている。

 「当日にZOOMが使えなくなる」とかは想定していないが、「通信回線のトラブルで進められない」とかは想定していて、その場合は議長の判断で予備日に振り替えられるようにしていた。リアルの株主総会なら、そんなことはないが。ちなみに、Clubhouseでも音声だけだが同時配信していた。

ーー当日質問はどのような形で募集していたか。質問の期限は

アステリア:質疑応答がスタートしてから10分後まで受け付ける方式。質問数は限定していない。

ーー株主から届いた質問はすべて開示しているか
アステリア:基本的に全部の質問に回答していて、動画アーカイブで見られる。
 バーチャルオンリー株主総会は初めてなので、質問を全部開示するということは考えていなかった。

ーー取り上げる質問を選ぶ基準は。どういう立場(役職)の人間が選んでいるか

アステリア:事務局が基本的に来た順番に選ぶ。ただ、2つあとに同じ質問があったりすると、まとめたりする。ベースは来た順番。

 今回は、来た質問の趣旨は分かりやすかった。事前質問が多かったので、「こういう趣旨だよね」というのを役員と共有していた。

ーー質問がめちゃめちゃ来た場合はどうするつもりだったか
アステリア:「基本的に来た質問はすべて答えたい」というのが社長の方針。株主総会だけでなく、事業戦略説明会とかでもそう。社長からすると、無限に来るのはたぶんうれしいだろうが、「ある程度の数で落ち着くのでは」と想定していた。今回は少ない方だった。

ーーバーチャル株主総会のアクセス数などは

アステリア:同時接続数は100人ほど。

ーー次年度に向けての課題は感じているか。あるとすればどんなものか

アステリア:運営が課題。映像や音声をチェックするスタッフが「今の人数では足りない」と言われている。今は1人であれもこれもやっている。そこを増やさないといけない。

 議決権行使のシステムは、ブロックチェーンの技術を使っていて、ある程度確立されている。ただ、日々変わっているので、「今年のシステムが来年そのまま動くか」というのがあるので、テストしないといけない。
 質疑応答については、株主総会後に事業戦略説明会をやるのだが、そこで説明した方がいい質問については、そちらで説明をするようにしている。

 株主総会後にアンケートをとったが、否定的な意見は比較的なかったのでは。
 リアルでの株主総会を望む声が大きければ考えなくはなかったが、世の中的にバーチャル寄りになっている。今回、バーチャルでやっていない会社も、絶対、検討はしている。リアルでやることは、うちには考えづらい。海外株主など、物理的に来られない株主もいるので。

Unipos(議事録8月4日、メール回答8月8日)

 社内交流ツールの開発・販売が主事業。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブなし」「全質問の公開なし」「全質問の回答あり」です。

ーーUniposでは2020・2021年にハイブリッド参加型バーチャル株主総会、2022年にバーチャルオンリー株主総会を開催しています。それぞれ導入するにあたり、どのような経緯があったのでしょうか
Unipos:2020~2021年は新型コロナウイルス感染状況を鑑み、オンライン・リアル両者のみなさまが参加可能なハイブリッド参加型バーチャル株主総会を行いました。

 2021年6月よりバーチャルオンリー株主総会の開催が可能となり、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、どのような形で開催することが望ましいかの検討を続けた結果、バーチャルオンリー型が最も株主のみなさまに安心してご参加いただくことが可能である形と判断し、2022年はバーチャルオンリー株主総会を開催いたしました。

ーーバーチャルオンリー株主総会について、いつごろからどのように準備されていたか。また、どのようなことを懸念していたか
Unipos:検討開始は2021年秋ごろから、本格的な準備開始は2022年2月からでした。

 懸念事項は、まずは経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることが前提のため、その確認を確実に受けることが可能かどうか、という部分でございました。

ーー当日質問は1人1問ということでしたが、株主総会のどの時点までの質問を取り上げることにしていましたか
Unipos:リアル開催の場合と同じく決議直前まで質問を取り上げる予定でおり、結果も、決議の間際まで質問を受け付けいたしました。

ーー質問は何問あって、質疑応答には何分くらい時間をとったのでしょうか。また、寄せられた質問は答えていないものも含めて全部で何問でしたか
Unipos:質疑応答時間は15分程度、質疑応答時にいただいた質問は全9問、うち1つはタイミングが質疑応答打ち切り後になってしまったため、8問回答いたしました。

ーー株主総会で取り上げる質問を選ぶのはどのような立場(役職)の人でしたか。また、質問の取捨選択が適切だったか判断する人はいましたか
Unipos:質問回答の取り回しは当社役員を含む事務局が行っておりましたが、時間切れで扱えなかったものを除きすべての質問に回答いたしました。

 また、いただいたすべての質問を全取締役・監査役・弁護士がリアルタイムで確認できるようにしておりました。

ーーUniposではアーカイブ動画、質疑応答概要、株主からの質問の全開示などについて、どのようにお考えでしょうか
Unipos:開示については検討中でございます。

ーー2021年株主総会の会場出席者数と配信の参加者数(ユニークユーザー数)、2022年株主総会の配信の参加者数(ユニークユーザー数)を教えてください
Unipos:あいにく具体的な数は非開示につきお伝えしかねますが、2021年の会場出席者数・配信の参加者数と比較し、2022年の出席者数は1.5~2倍でございました。

ーーバーチャルオンリー株主総会を開催しての感想は。次年度も行う予定か、行うとすればどのような課題を感じているか
Unipos:出席者数・質疑応答数が前年比より伸びたという点での結果より、バーチャルオンリー株主総会を開催して良かったと思っております。

 来年については、経済産業省の制度改正の状況によりますので、現時点では未定でございます。

アルヒ(議事録8月9日、書面回答&インタビュー8月9日)

 住宅ローンの貸出・取次が主事業。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブあり」「全質問の公開あり(意見は除く)」「全質問の回答あり(上限数を超えた質問は除く)」です。

ーーアルヒではバーチャル株主総会を開催すること自体も初めてですが、バーチャルオンリー株主総会を導入するにあたり、どのような経緯があったのでしょうか

アルヒ:1つ目は、増加した株主さまとの公平なコミュニケーションの促進。弊社の株主さまはこの1年で約3倍に増加しました。遠隔地にお住いの株主さまや来場を躊躇する株主さまの株主総会への参加障壁を低減することで、すべての株主さまに平等な形式での株主総会への出席の機会を提供し、質問や議決権行使ができるようにするため、バーチャルオンリーの方式といたしました。

 2つ目は、新型コロナウイルス感染拡大防止。新型コロナウイルス感染症がいまだ収束しない中、ハイブリッドですと、株主のみなさまおよび社員の新型コロナウイルス感染のリスクを完全に払しょくすることはできないことから、感染リスクをともなわないバーチャルオンリーの方式といたしました

 3つ目は、コストコントロール。株主さまの急増により、出席者数の見積もりが難しい局面であったことを踏まえ、当期の営業収益目標の達成に向けコストコントロールを適切に行うため、バーチャルオンリーの方式といたしました。

ーーバーチャルオンリー株主総会について、いつごろからどのように準備されていたか。また、どのようなことを懸念していたか

アルヒ:バーチャルオンリー株主総会、リアル株主総会、ハイブリッド株主総会のそれぞれのメリット、デメリットの検討や、他社状況等の調査は2021年の株主総会が終了して間もなく検討を開始いたしました。

 また、ご存じの通り、バーチャルオンリー株主総会の開催には、経済産業大臣・法務大臣の確認を取得する必要がございました。

 そのため、この確認の取得については2022年の年始から着手いたしました。

ーー株主総会の時間とその中での質疑応答の時間は

アルヒ:株主総会は2時間弱で、質疑応答は1時間半くらい。一般的な株主総会の所要時間は1時間ほどなので、相当長い。
 「質問が尽きるまでやろう」という感じでしたが、同じような質問が増えてきて、意見や重複する質問ばかりが増えてきたので、「審議を尽くした」ということで弁護士と相談の上、2時間ほどとなりました。いろいろな質問が来ていたら、まだ続いたと思いますが。4時間くらいかかることまでは覚悟していました。

ーー質疑応答前に議長不信任動議などが出ていた。一般的な株主総会では動議提出者が理由を述べる流れがあるが、それを省いていた理由は

アルヒ:本株主総会では、テキストにて質問及び動議を受け付けておりましたため、運用上そのような対応となりました。

 顧問弁護士の助言のもと、法令に基づき適切に運営しております。

 取締役選任議案についてなど、動議によっては理由を読み上げた議案もありました。動議に対する賛否の開票をしない理由や、意見なのか理由なのか分からないものは読みませんでした。

ーー当日質問は1人3問ということでしたが、株主総会のどの時点までの質問を取り上げることにしていましたか

アルヒ:株主総会の開始時点から受付を開始し、十分に審議を尽くした後、議案の採決に移る時点で質問の受付を終了いたしました。

 また、3問を超えて8問くらい送られた方がいらっしゃったので、それは最初の3問だけを取り上げました。

ーー事前質問も、当日に質問しないと取り扱わないとした理由は

アルヒ:本株主総会においては、ご質問は株主さまお一人につき3問までという制限を設けさせていただいておりました。

 事前質問を別枠とすると、当日の3問の枠を超えて質問が可能となってしまい、株主間の公平を図ることができなくなるため、このような運用とさせていただきました。

ーー株主総会で取り上げる質問を選ぶのはどのような立場(役職)の人でしたか。また、質問の取捨選択が適切だったか判断する人はいましたか

アルヒ:質問については、基本的にいただいた順に処理し、回答を申し上げており、取捨選択はいたしておりません。

 質問に対する回答義務の有無および回答内容については、事務局は顧問弁護士と同じスプレッドシートを連携して、都度相談をしております。「恣意的」「バイアスがかかっている」とか言われないようにやっていました。

 なお、当日いただきましたすべての質問について、重複する質問をまとめるなど整理をさせていただいた上で、回答を弊社サイトで公開させていただいております。

 「どこまで広く答えるか」が論点で、報告事項になかった質問でも回答、さらに事後的に文書でも細かく回答しました。

ーーバーチャルオンリー株主総会は株主側からみてブラックボックスになる部分が多いため、公正に運営されていると分かるよう運営側が努める責任があると思います。アルヒではアーカイブ動画、質疑応答概要、株主からの質問の全開示&回答など積極的に公開されていますが、公開に至るまでの考え方を教えてください。

アルヒ:ご指摘いただきましたとおり、弊社において初の試みでありましたバーチャルオンリー方式での株主総会につきまして、公正に運営されているということを株主さまにお示しするよう努める責任があると考えたこと、および当日ご参加いただけなかった株主さまにも株主総会の様子を広くお伝えすべきであると考えたことから、株主総会の模様、および質問とそれに対する回答を公開させていただきました。

ーー一方で、却下した動議がいくつかあったようですが、動議内容については公開されていないので、株主側からすると却下した判断が適切であったか分かりません。動議内容を公開していない理由についてうかがわせてください

アルヒ:今回、テキストで動議を提出いただくシステムを採用しましたことから、動議欄に動議ではなく、ご意見を記載いただいた例がございました。

 これらについて、顧問弁護士と相談の上、個別に取り上げない対応とさせていただきました。もっとも、いただいたご意見については、貴重なご意見として社内で検討させていただきます。

ーー2021年株主総会の会場出席者数、および2022年株主総会の配信の参加者数(ユニークユーザー数)を教えてください

アルヒ:詳細の開示は控えさせていただきますが、2021年と比較して、約4倍の株主さまにご出席をいただきました。

ーーバーチャルオンリー株主総会を開催しての感想は。次年度も行う予定か、行うとすればどのような課題を感じているか

アルヒ:多くの株主さまにご出席いただき、活発にご質問等もいただきましたので、株主さまとの充実したコミュニケーションを図ることをできた会になったものと考えております。また、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大を考慮すれば、結果として適切な判断であったと考えております。

 来年につきましては、他社の状況、当社を取り巻く環境等を踏まえ、今後、検討してまいります。

Zホールディングス(議事録8月9日、インタビュー8月9日)

 ZホールディングスはヤフーとLINEが統合して誕生した持ち株会社。ZOZOやPayPay、GYAOなども子会社としています。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブあり」「全質問の公開あり」「全質問の回答あり」です。

ーーZホールディングスでは古くからライブ配信を通じたバーチャル株主総会を開催していたが、いつからか。どのような経緯があったのか

ZHD:親会社のソフトバンクは昔から配信していたが、ヤフーでは2013年の株主総会から。実務に当たっては、ソフトバンクの担当とお話しすることもあった。

 ヤフーは創業が1996年で、1997年に店頭公開。2000年ごろから一般的には行われていなかった四半期ごとの決算発表会も動画配信し始めた。

 インターネット企業なので、「ネットで決算説明会するのが普通だよね」と、そこに対しての抵抗感はなかった。
 株主総会も、ネットで招集通知を出しているし、質疑応答で営業秘密や未公表の事実を出すこともないので、「ぜひ配信しようよ」となった。

ーーバーチャルオンリー株主総会は今年初めてだが、導入するにあたり、どのような経緯があったのか

ZHD:最後のきっかけになったのはコロナ。

 ただ、2017~2018年の株主総会あたりから、「株主総会では株主のみなさんとのどういう対話が正しいか」ということを勉強し始めていた。

 国際フォーラムで1000~1500人の参加株主に向けて株主総会をしていたが、「私の甥が結婚したので社長から祝電がほしい」「私には親戚がいて銀座に土地を持っているので活用するにはどうすればいいか」「スイスでダボス会議があったが見解を聞きたい」とか、目的事項に当てはまるかどうかという質問も事実としてあった。「それっていいのか」と。

 とはいっても企業は、株主の発言を選べない。ただ、そういう質問が出ると、「あの質問はなんだ」とヤフーファイナンスの掲示板で書かれて、なぜか怒られたりする。
 2017~2018年にかけて、「何か知恵を絞れないものか」と考えて、3つくらいの案が出た。事前にWebを通じて質問を受け付けて、関心の高い事項が数値として出たなら、株主総会の冒頭でお答えするとか。
 「結婚式の祝電がほしい」「会員費がまだとられているがどうしたらいい」「暗証番号が分からない」とか株主さまにとっては切実な問題でも、株主総会での質問としてはどうかというものは、ご本人のお困りごととして別の形でフォローできないかと、ロビーにブースを設けて、「そこでぜひ聞いてください」とした。サービスについてはヘルプで聞く体制を事業部側でも作っていたが、株主総会でもやろうとなった。
 「今はネットで配信しているだけだけど双方向でできないか。そうすることで株主総会がより充実した形にならないか」と研究し始めたのがそのころ。ただ、動議がネットで出た時の処理などもあって、理屈で分かっていても、実行することは難しかった。ネット企業なので、「ネットを使うことで経営の部分でも世の中に価値を提供できないか、より株主総会を充実させられないか」と考える中、コロナが来た。
 2020年3月に臨時株主総会を開催したが、2月後半からコロナで大変になった。当時、クラスターが出始めたり、一日二日で世の中が一変するようなことがあった。招集通知は発送し終わっているし、経営の決定事項なのでやらないといけないので、株主のみなさん、スタッフ、外注業者も含めて、気を付けながらやった。
 実際にやってみて、「次は株主も経営者も従業員も感染拡大のリスクが一番怖いだろう」ということが後押しになって、2020年6月の定時株主総会はハイブリッド出席型で開催した。オンラインで議決権行使、質問もできるようにして、会場参加者は18人のみ。
 その後、コロナはいったん落ち着いたり、また広がったりしたが、2021年6月の株主総会は、「落ち着いてきたなら、会場を押さえておくべきだろう」ということで、大きな会場を押さえて2020年と同じように開催。50席設けたが、10人ほどしか来なかった。

ーーバーチャルオンリー株主総会について、いつごろからどのように準備されていたか。また、どのようなことを懸念していたか

ZHD:まず、2021年株主総会のバーチャルオンリー株主総会についての定款変更で、株主の了解を得た。

 導入の経緯は各社さまざまだが、我々は「ネットの力を使って世の中を良くしていきたい、課題解決をしたい」と掲げて、20年以上成長を遂げてきた。「インターネットを加えることで価値を上げていきたい」というのが、事業部門だけでなくコーポレート部門でもあった。より対話を重視するためにできるのであれば、バーチャルオンリー株主総会も活用するべきではないかと。

 2020年以降の株主総会は、当社含めて、上場会社ほぼすべてが時間も規模も縮小してやった。

 ただ、ハイブリッド出席型の株主総会は2回開催したが、2020年に初めてやった時、会場質問3問、ネット質問3問、あとは時間の経過とともに1問足すか引くかと、政府の方針に従いながら想定していた。実際は会場から3問、その後ネットの質問にお答えしていたが、議長が質問をすぐ読み終えられるので、来た8~9問の質問に短い時間でほぼ全部答えられた。

 リアルの株主総会の時は2時間のうち1時間を質疑応答に割いても、10問くらいしか答えられなかった。今年は17問に回答した。

 株主は東京に出てこないといけないという制限がなくなるし、会社としてもより多くの質問に答えられるメリットがある。株主総会を対話の場、付随してネット企業としてネットの価値をここでも活用できると世の中に示していきたいという軸で行っている。

ーー株主総会で取り上げる質問を選ぶのはどのような立場(役職)の人でしたか。また、質問の取捨選択が適切だったか判断する人はいましたか

ZHD:事業説明の動画を流している間、寄せられた質問をバックヤードで議長が見て、「議案に対する質問なので、これは指定してくれ」などと、どの質問を取り上げるか決めていた。それは社外取締役も見ていた。

 「質問が50~100来たらどうしよう」とは考えていた。

ーーヤフオクの転売について質問が5つもあったにもかかわらず株主総会で取り上げなかった理由。ヤフオクは報告事項に入っているが、入っていないメタバースを取り上げた理由

ZHD:業績や事業報告に書かれている内容を膨らませて、株主に成長戦略のグランドデザインを示すことが重要だと考えた。ヤフオクやヤフー知恵袋といった個別事業というより、どういう風に業績を立てていくのか、というところを答えていった。より厳しい質問にも回答している。
 海外で言うチェリーピッキング(都合のいい質問だけ取り上げる)がないような状態が絶対的に正しいので、それをいかに追求するかが今後の課題なのかなと思っている。
 オンライン主体にして変えたことはなくて、国際フォーラムで株主総会を開催した時も2時間やっても手は挙がり続けた。時間に際限がなければできるだろうが、より多くの方からご質問をお受けするために1人1問というやり方を採っている。社内でも「1人2問までの方がいいのでは」という議論がなくはないです。現時点では社長とも相談して1人1問までとしている。

 株主総会終了後にアンケートをとって、振り返っている。公開していないので詳細は言えないが、株主のみなさんのご感想から、運営全般についての問題を確認し、来年トライしないといけないことをまとめている。
 「株主総会とは何なのか」ということに立ち返ってやっていくこと。

 年に1回の報告の場、対処すべき課題や役員報酬を報告する場。議案があり、それに対するご質問に答えるのがベース。それにどういうことを加えていくか。通信を安定させることとか、経営を前に進めるために欠かせないことを説明するとか。いただいた意見なども参考にして、運営も常にPDCAを回していく。

ーー後日公開の質疑応答の回答が7月1日公開と総会から時間が空いている理由は

ZHD:実務など、準備するための時間。回答は含めずに、質問だけ先に全公開するのはひとつのアイデアだとは思う。

ーー2021年株主総会の会場出席者数、および2022年株主総会の配信の参加者数(ユニークユーザー数)を教えてください

ZHD:出席者は409人、株主じゃないかもしれない人も含めた配信の同時接続者数は1618人。

 2019年の時の配信の同時接続者数は200人だったので、毎年倍倍で増えている。質問はしないまでも、見ておきたい人は一定数いるのでは。

ーーバーチャルオンリー株主総会を開催しての感想は。次年度も行う予定か、行うとすればどのような課題を感じているか

ZHD:より多くの対話を重ねられる手法であるとは思った。日本全国どこからでも出られる。リアル会場のように質問に時間が集中することはなくなり、株主のみなさまの間でも平等性は高まるなと思っている。
 来年も同じようにバーチャルオンリー株主総会を開催する予定。今日のようないろいろなご意見もあるので、結果は分からないが、どういう見直しができるかとかは部内で検討する。

ソフトバンクグループ(議事録8月16日、インタビュー8月16日)

 孫正義さんが社長を務めるソフトバンクグループ。株主総会のライブ中継も注目を集めており、今回問題視しているZホールディングスの親会社ということもあり、今年はハイブリッド型株主総会でしたが、インタビューさせていただくことにしました。

 四半期ベースで3.1兆円の赤字を発表した直後だったからか、担当の方の雰囲気がなんとなく暗かったです。

ーーソフトバンクグループでは古くからライブ配信を通じたバーチャル株主総会を開催していたが、いつからか。どのような経緯があったのか
ソフトバンク:コロナ前からライブ配信という形では行っていた。コロナになって、「外出が抑制されている中、株主総会をどう運営するか」が検討事項として挙がった。特に孫は個人株主も含めて、株主総会という場を大事にしているところがあるので、「広めにコミュニケーションをとるにはどうしたらいいか」と検討していた。

 その中で、我々はIT企業で、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念もあることから、バーチャル株主総会が挙がってきた。そこがやるに至った経緯。いつ始めたかは分からないが、早い方ではある。ADSLの普及前後からではないか。当時、ネットで動画を流そうという機運があった。
 2012年からはネットで質問も受け付けるようになった。「ちゃんと質問に答えたい」「コミュニケーションの場を大事にしたい」というのがあった。より広く発信したいからか、会場に株主だけでなく、一般の方を入れていることもあった。

ーーコロナを受けて、2020年と2021年はハイブリッドだが、ほぼ株主を入れず、役員もWebを通じて出席して、バーチャルオンリー株主総会に近い形となった。導入するにあたり、どのような経緯があったのか

ソフトバンク:コロナがあるので、クラスターを発生させてはいけなかったから。

 今年の6月は「コロナが終わったかな」という感じがあり、多少安全サイドには寄るがリアル会場でやってみようとなった。コロナが引いていなかったら、ネットからの質問だけになったかもしれない。

ーー2021年に定款変更でバーチャルオンリー株主総会を行えるようにしたが、2022年はバーチャルオンリー株主総会ではなく、株主を入れて、孫さんも会場で参加する形式になった。どのような経緯があったのか

ソフトバンク:「リアルでやりたい」という気持ちがあった。

 定款変更は有事対応のニュアンスが強い。コロナや大震災などがあった時に、何とか開催できるようにするツールとして定款上できるようにはしたが、そこまで想定はしていない。

ーーネット受付の質問を1人1問までとした理由。また、質疑応答開始から5分後に締め切りとした理由。他の質問を受けた質問ができない。また1000問くらい来たらどう選別するつもりだったか

ソフトバンク:ある程度のタイミングで締め切らないと運営ができないので。リアルでも質問が来ているので、ずっとネットで質問を受け付けていると終われない。株主に先んじて説明しておくことでフェアなことは保てるのでは。
 リアルだと株主総会の時間は例年2~3時間くらいだったが、なるべくさばける限りさばくが、最終的には総会の時間との兼ね合いで、「長くなってきたので」と議長の進行で終わらせる。

 質問を選ぶ基準はリアルと同じで、順番に選んでいく。限りなく同じ内容の質問が来たときはマージして回答していた。

ーー株主総会で取り上げる質問を選ぶのはどのような立場(役職)の人だったか。また、質問の取捨選択が適切だったか判断する人はいたか。フェアにやるにはどうすればいいと思うか

ソフトバンク:裏で顧問弁護士と事務局で見ている。基本的には取り上げるスタンス。孫は「しっかり回答したい」と言っている。
 株主として株主総会に来ていて、「基本的には株主総会に関する事項を質問してほしい」とお伝えしているので、そこを踏まえて質問していただけると思っている。特設サイトにログインして質問してもらうので、よっぽど過激な意図を持った人でなければ、基本的に普通の質問をするのではないか。
 バーチャルオンリー株主総会の定款変更の時、経産省と相談して、必要な手続きをとった。基本的には経産省とかが考える範囲内での運営になるというか、適合しているかが確認されたという形。質疑応答の取捨選択がブラックボックスになることについては、特に何も言われなかった。

ーー動議の扱い方。2021年では動議が出た時に、出した理由の説明がなかったが

ソフトバンク:議長の差配の中で、「こういう動議がある」と説明したのでは。ネットからは動議を出せないという問題はあった。基本的にはリアルもネットもなるべく同じ環境にしたかった。当日、会場には来てもらった株主にも、口頭での発言をやめてもらっていたので、ネットから動議する形となっていた。

ーーバーチャルオンリーに近い株主総会は株主側からみてブラックボックスになる部分が多いため、公正に運営されていると分かるよう運営側が努める責任があると思います。ソフトバンクグループではライブ配信のほかにも、アーカイブ動画、質疑応答を含めた書き起こし、株主からの質問の全開示など積極的に公開されていますが、公開に至るまでの考え方は(書き起こしはなぜか2021年はなし)。また、ZHDでは回答しなかった質問に回答していたりもするが、ソフトバンクグループでは回答はしないのか

ソフトバンク:アーカイブ動画は昔から公開している。2021年の書き起こしがない件については、担当範囲ではないが、なにがしかの理由があったのかもしれない。
 質問全開示は年によって公開時期が異なっているが、2021年は2~3営業日後くらい、臨時報告書を公開するタイミングと合わせていた気がする。

 「チェリーピッキングしていません」という趣旨で質問は公開していて、「なるべく早い方がいいかな」とは思いつつも、実務的には株主総会直後は取締役会や決議の最終集計などもあってバタバタしているので、そうならざるを得ない。

ーーここ数年の株主総会の配信の参加者数(ユニークユーザー数)、会場参加者数はい
ソフトバンク:バーチャル株主総会のシステム自体の同時接続者数は100人くらい。

 ただ、誰でも見られる配信の方がもっと人がいた。話を聞きたいだけの人も多かったのでは。

ーー株主総会の運営に関わる人数はどのくらいか。担当者の評価制度はどのようになっているか

ソフトバンク:弁護士含めて10人くらいは事務局として裏方にいる。受付のお手伝いや会場の誘導も含めると、10人くらい増える。

 評価制度については、株主総会は法律事項なので、そこを完遂するのが絶対条件。孫の意向をしっかり反映して、法律内でちゃんとやりたいことをしっかりやれるかがポイントになってくるのでは。

ーー来年以降は

ソフトバンク:状況次第、何が流行ってるか分からないので。
 Zホールディングスは関連会社ではあるが、どうするかは各社の話なので、同じ形式に揃えないといけないということはない。

RIZAPグループ(議事録9月2日、メール回答9月9日)

 トレーニングジム「RIZAP」が有名ですが、積極的なM&Aで美容や健康、アパレル分野など、さまざまな分野の子会社を持っています。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、「配信アーカイブあり(ただし7月限定)」「全質問の公開なし」「全質問の回答なし」です。

ーーRIZAPグループでは今回初めて、バーチャルオンリー株主総会を開催しています。導入するにあたり、どのような経緯があったのでしょうか

RIZAP:コロナ禍における経営改革としてBPX※プロジェクトを進めており、その一環で、株主総会の運営についても抜本的な改革を検討いたしました。

※BPX:ビジネスプロセストランスフォーメーション。従来型のBPR(業務プロセス改革)にDX(デジタルトランスフォーメーショ ン)の要素を融合した同社独自のコンセプト

 当社は全国に10万人を超える個人株主さまがおり、コロナ前では、3000名超の株主さまにホテルニューオータニの会場にご出席いただきましたが、一方、地方・遠方の株主さまから、「参加したくてもできない」という声もあり、遠方でも参加可能となるバーチャルオンリー株主総会(完全オンライン株主総会)の導入を決定いたしました。

ーーバーチャルオンリー株主総会について、いつごろからどのように準備されていたか。また、どのようなことを懸念していたか

RIZAP:産業競争力強化法等の一部改正が公表された時期から検討を開始しております。

 初めての試みのため、これまでの定時株主総会の数倍のリハーサル回数を行うなど、入念な準備を重ね、万全を期して開催に臨みました。

ーー当日質問は1人何問までで、株主総会のどの時点までの質問を取り上げることにしていましたか

RIZAP:当日質問は1人2問まで、質問は開始5分ほど経過してから受付し、決議事項の議案説明が終了してから約10分後に受付終了、にて運営いたしました。

ーー株主総会に要した時間と、その中で質疑応答に要した時間(事前質問含む)をざっくりで構いませんので教えてください

RIZAP:株主総会は10時~11時55分、そのうち質疑応答は約1時間です。

ーー議事録上は事前質問が15問、当日質問が9問ということですが、寄せられた質問は答えていないものも含めて、それぞれ全部で何問だったでしょうか

RIZAP:議事録上は、実際に回答した質問数を記載しており、内容が重複する質問は1つにまとめて回答、その他、総会の目的事項に関係ないものは事務局・顧問弁護士で協議の上、回答しない方針のもと、質疑応答の運営を行っておりますので、おっしゃる通り、寄せられた質問は、議事録の記載数より多い形となります。

 大変申しわけございませんが、寄せられた具体的な質問数につきましては、社内情報となりますので、回答を差し控えさえていただけますと幸いです。なにとぞご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

ーー株主総会で取り上げる質問を選ぶのはどのような立場(役職)の人でしたか。また、質問の取捨選択が適切だったか判断する人はいましたか

RIZAP:基本的には全ての質問に回答する方針にて運営を行いましたが、内容が重複する質問の取捨選択については、株主総会事務局と顧問弁護士にて協議をし、株主総会中に設けた休憩時間中には、議長(社長)も自ら確認の上、複数の観点からチェックするという運営を行いました。

ーーRIZAPグループではアーカイブ動画、質疑応答概要、株主からの質問の全開示などについて、どのようにお考えでしょうか

RIZAP:株主さま限定で、7月5~31日の期間に、バーチャルオンリー株主総会と同じWebサイトにて公開をしておりました。

 詳細はこちらをご参照ください。

ーー2021年株主総会の会場出席者数と、2022年株主総会の配信の参加者数(ユニークユーザー数)を教えてください

RIZAP:494名となります。

ーーバーチャルオンリー株主総会を開催しての感想は。次年度も行う予定か、行うとすればどのような課題を感じているか

RIZAP:今回の完全オンライン株主総会では、質問文字数を250文字以内としており、コンパクトな質疑応答の進行により、これまでより多くの株主さまのご意見をいただき、コミュニケーション面での改善を図ることができました。

 来年は、RIZAPグループが創業20周年ということもあり、最後のリアル総会とする予定です(ハイブリット開催も検討)。

 上場グループ5社(BRUNO、MRK、夢展望、SDE、堀田丸正)においては、来年、完全オンライン株主総会の実施を予定しており、今回のRIZAPグループの運営ノウハウを横展開して効果的に運営を行ってまいります。

 再来年以降は、今回と同様に、完全オンラインでの実施予定となります。

エイベックス(議事録9月14日、メール回答9月20日)

 音楽と映像、タレントマネジメントの会社。所属タレントにはAAAや浜崎あゆみさんらがいます。

 バーチャルオンリー株主総会についての情報公開は、オープンな場での「配信アーカイブなし」「全質問の公開なし」「全質問の回答は不明」です。

エイベックス:個別のお問い合わせに対する回答は控えさせていただきます

情報開示に関するルールと罰則が必要

 唯一、エイベックスからはお話をうかがえなかったのですが、これは僕が個人株主ということもあり、無理をお願いしている立場なので、しょうがないです。

 ただ、エイベックスはそもそも株主全体への情報開示自体にも消極的です。質問の全開示どころか、配信アーカイブさえもオープンな場にありません※。議事録を読んでも、質疑応答の内容を書いていないんですよね。レポートを書いてくれた株主のおかげで、何とか概要がつかめるくらいです。

※エイベックスにはavex shareholders clubという株主専用サイトがあり、3月末・9月末時点の株主のみがログインできます。そこで公開している可能性もあるのですが(筆者はログインできないので確認できない)、誰でも投資できる上場企業として、クローズドな場でIR情報を公開するのは望ましくありません。

 チェリーピッキングしてるか検証できるか以前の問題で、透明性が求められるバーチャルオンリー株主総会を運営する企業としては、いかがなものでしょうか。

 さらに問題なのは、エイベックスが11月に開催する臨時株主総会で、特例を利用することなくバーチャルオンリー株主総会を開けるよう、定款変更しようとしていること。情報開示に消極的で、チェリーピッキングしてるか検証できない企業が、バーチャルオンリー株主総会を開催していいのでしょうか。

 各社の話を聞いて分かったのは、しっかりやっている企業と、そうではない企業が明確に分かれているところ。

 経済産業省の「恣意的な運営は許されない」という方針は努力目標に過ぎず、罰則はないので、エイベックスのようにガン無視してる企業があるんですよね。経済産業省の人がチェックしにくることもないので、やりたい放題です。「やったぜ、メンドイ質問を無視できる!」という動機で、バーチャルオンリー株主総会を採用する企業も現れかねません(すでにいるかもしれません)。

 この状況だと「公正な運営をしましょう」と呼びかけたとしても、それに対応してくれるマトモな企業の負担が増えるだけ。なので、情報開示に関するルール、できれば罰則も決める必要があると思います。

 実はちょうど今夏、経済産業省がバーチャルオンリー株主総会についてパブリックコメントを募集していました。ただ内容は「株主総会資料の電子提供措置に関する制度に係る規定が9月1日に施行されることにともない、バーチャルオンリー株主総会の部分を修正することに対して」というもの。

 経済産業省に聞くと、「パブリックコメントは電子提供措置についてだけで、バーチャルオンリー株主総会自体ではないと理解している。産業競争力強化法は3年に一度、見直すことになっていて、2023年にバーチャル株主総会について見直す可能性がゼロではない。もし見直すなら、その時にパブリックコメントをとるかもしれない」とのこと。

 ただ、バーチャルオンリー株主総会を開催する企業が増える中、仮に来年に見直すとしても、遅いんですよね。

 なので、無理やり電子提供措置に関連付けて、パブリックコメントを送りました。「いただいた御意見は今後の参考とさせていただきます」と塩対応でしたが、意見は公開されるので、問題のある運営をする企業へのプレッシャーとして意味があるんじゃないかと思っています。

 株主総会は株主との対話の場ということだけでなく、チェック機能という意味でも重要。「株主の声に従うべき」とはまったく思わないですが、問題があった時に突っ込める公的な場があることが、不正が起こりにくい土壌を作る上で大切。社内では絶対的な権力を持ち、そんたくされがちなオーナー社長が厳しい声を受け止められるのも株主総会くらいです。バーチャルオンリー株主総会でチェック機能が薄れるとすれば、ゆゆしき事態。

 バーチャルオンリー株主総会はこれから一般的になってきて、参加される方も増えていくでしょう。その際はぜひ、質疑応答の公正さが保たれているかも注目していただきたいです。