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電通グループ株主総会2023レポ|松井巖取締役「(東京五輪談合事件の)調査委員会の報告を内々にする気は会社としてない」、五十嵐博社長「委員会の答申を受け、外部識者の方々に参画していただき、内部統制強化の実効性を担保する」

 3月30日10時から行われた電通グループの株主総会。

 言わずと知れた広告代理店の雄。一方、2月に東京五輪に関わる談合事件で、逮捕者も出しています。

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前回株主総会 電通グループ株主総会2022レポ|五十嵐博・新代表取締役「ウクライナ、ロシアの問題については、国際社会と連携しながら、制裁や人道支援について丁寧に対応している」

 業績は増収減益。ただし、買収関連費用の影響を除いた調整後営業利益ベースでは増益とのこと。来期は増収増益見込み。

 2013年にイージスを買収して以来、電通グループでは海外売り上げが国内を上回るようになりました。

 ディールラボによると、広告代理店の世界市場シェア(2021年)は1位WPP(5.41%)、2位オムニコム・グループ(4.47%)、3位ピュブリシス・グループ(3.71%)、4位アクセンチュア(3.22%)、5位インターパブリック・グループ(3.19%)で、電通は6位(2.95%)。

 電通は顧客企業のマーケティング戦略の策定から、ECサイト構築、アプリやSNSを通じた消費者との関係作りなど、マーケティング全般を担う「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」への注力を宣言。“テレビ広告の代理店”から“マーケティングコンサル会社”への転換を狙っています(電通が急ぐ「デジタル化」、加速するM&Aの狙い目 | 週刊東洋経済プラス)。

 そのため、世界中でM&Aを積極的に行っており、ネット広告やコンサルを中心に2024年までに2500~3000億円を投資する予定。すでに2021年10月にはセプテーニHDを完全子会社化しています。

 日本の広告市場全体に目を向けると、総広告費は前年比4.4%増の7兆1021億円。コロナ禍前の2019年を超え、1947年に推定を開始して以降、過去最高となりました。

 特にインターネット広告費が前年比14.3%増と伸びが止まらず、ついに3兆円に達しました。

 電通でもセプテーニHDなどをM&Aしたことで、急速にネット広告比率が高まっています。

媒体 2021年総広告費(電通売上、シェア) 2022年総広告費(電通売上、シェア)
新聞 3815億円(579億円、15.1%) 3697億円(530億円、14.3%)
雑誌 1224億円(121億円、9.8%) 1140億円(116億円、10.1%)
ラジオ 1106億円(123億円、11.1%) 1129億円(123億円、10.8%)
テレビ 1兆8393億円(6681億円、36.3%) 1兆8019億円(6245億円、34.6%)
ネット 2兆7052億円(3052億円、11.2%) 3兆912億円(4020億円、13.0%)

 日本最大の広告賞であるACC TOKYO CREATIVITY AWARDS。最高賞にあたる総務大臣賞/ACCグランプリの受賞作品(2022年)は以下の通り。

 電通は2部門で受賞。

部門 広告主 商品名 広告会社 制作会社
テレビCM 大塚製薬 カロリーメイト 博報堂/catch/ENOAD AOI Pro.
ネット 奇譚クラブ 企業 - GOSAY studios
フィルムクラフト 森ビル 森ビル 電通 Dentsu Craft Tokyo/電通クリエーティブX
ラジオCM エフエム群馬 特殊詐欺対策キャンペーン 電通 中部支社/マザーゲイト/TRUE ビー・ブルー
オーディオ 該当なし - - -
マーケティング・
エフェクティブネス
LIFULL FRIENDLY DOOR 博報堂 -
ブランデッド・
コミュニケーション
(デジタル)
クロススペース クロス新宿ビジョン - オムニバス・ジャパン
ブランデッド・
コミュニケーション
(プロモ)
COTEN COTEN RADIO - BOOK/FUBI
ブランデッド・
コミュニケーション
(PR)
静岡市 静岡市 博報堂ケトル
/静岡博報堂
アオイネオン
ブランデッド・
コミュニケーション
(ソーシャル)
サントリーホールディングス サントリー THE STRONG 天然水スパークリング CHOCOLATE Inc. CHOCOLATE Inc./KASSEN
デザイン コワードローブ キヤスク 博報堂ケトル
/博報堂
アンドアンド
メディア
クリエイティブ
あの夜を覚えてる ニッポン放送 ノーミーツ -
クリエイティブ
イノベーション
NOT A HOTEL コネクテッドハウス NOT A HOTEL/GO    

 足元で社会を騒がせているのが、東京オリンピック・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件。元電通の社員が逮捕されたことなどを受け、調査検証委員会を設置しています。

 ただ、設置が2月28日なので、まだ報告書は出ておらず、株主総会で質問されても「調査中なので何も言えない」という回答になるんじゃないかなとは思います。ず、ずるい……。

ここ一年の主な動き

2022年5月10日 企業のイノベーションや変革を支援するイグニション・ポイントと業務提携

5月25日 企業のメタバース活用支援を開始

5月31日 デジタルマーケのディグ・イントゥ社を買収

6月15日 Salesforceコンサルのペクスリファイ社を買収

8月17日 元電通で東京オリパラ組織委員会理事だった高橋治之氏が受託収賄容疑で逮捕(NHK)

11月14日 ロシア事業を現地パートナーへ譲渡

2023年1月23日 KADOKAWAが東京五輪関連事案に関する調査報告書を公開

2月28日 五輪談合事件 電通など6社を起訴 大会組織委の元次長など7人も(NHK)

2月28日 東京五輪関連事案に関する調査検証委員会を設置

手元資金(ネットキャッシュ)の推移

 ネットキャッシュが2021年にプラスに転じているのは、本社ビルを売却(リースバック)したことによるものです。

- 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期
営業CF +883億円 +1397億円 +808億円
投資CF +1370億円 +2622億円 -243億円
財務CF -966億円 -2321億円 -1881億円
- 2020年12月末 2021年12月末 2022年12月末
現預金 5306億円 7235億円 6037億円
短期有価証券 0円 0円 0円
有利子負債 5848億円 5791億円 5324億円
ネットキャッシュ -541億円 1443億円 713億円

議案

(1)定款一部変更→指名委員会等設置会社移行にともなう変更

(2)取締役10名選任

前年株主総会 今回候補者
ティモシー・アンドレー ティモシー・アンドレー(取締役会議長)
五十嵐博 五十嵐博(代表取締役社長CEO)
曽我有信 曽我有信(チーフ・ガバナンス・オフィサー)
ニック・プライデイ ニック・プライデイ(CFO)
▼ウェンディ・クラーク(海外担当) 【社外】松井巖(元福岡高等検察庁検事長)
▼榑谷典洋(日本担当) 【社外】ポール・キャンドランド(元ディズニー・ジャパン社長)
▼髙橋祐子(経理担当) 【社外】アンドリュー・ハウス(元SIE社長)
▼大越いづみ(電通出身) 【社外】佐川恵一(元リクルートHD・CFO)
【社外】松井巖 【社外】曽我辺美保子(公認会計士)
【社外】ポール・キャンドランド △【社外】松田結花(公認会計士)
【社外】アンドリュー・ハウス  
【社外】佐川恵一  
【社外】曽我辺美保子  

株主総会のTwitter実況

 株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#電通株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、まとめておきます

参考に読んだ本

・ヴィヴ・シムソンら著『黒い輪―権力・金・クスリ オリンピックの内幕』(光文社)

・田崎健太著『電通とFIFA~サッカーに群がる男たち~』(光文社新書)

・本間龍著『東京五輪の大罪 ──政府・電通・メディア・IOC』(ちくま新書)