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質問通告時間が遅い国会議員名を公開しようと全省庁に開示請求したら通告時間が黒塗りの資料が開示された

 週明け1月23日に召集される通常国会。

 政府から60法案が提出されるとの報道もある裏で不安視されているのが、委員会質疑前に国会議員が行う質問通告の遅れ。

官僚が自転車で疾走~真夜中に届けるものは…(NHK NEWS WEB)

 原則「審議2日前の昼までに出す」というルールがあるのですが、2018年の第197回臨時国会では質問通告が出そろった平均時刻は委員会前日の20時19分。どの部局が答弁を担当するかを割り振り終えた平均時刻は22時28分で、一番遅かった時は26時35分(=当日2時35分)になったとのこと。

 答弁作成が徹夜作業になるだけでなく、割り振りが決まるまでは担当する可能性のある部局のメンバーが待機しなければならないため、中央省庁職員の長時間残業の温床になっていると言われています。

国会に関する業務の調査(2016年6月16日)

国会に関する業務の調査・第2回目(2016年12月22日)

国会に関する業務の調査・第3回目 (2018年12月28日)

 「こんな状況だと優秀な人材が流出してしまう」という問題意識から2021年、民間の「深夜閉庁を求める国民の会」が働き方改革を提言し、与野党が質問通告早期化で一致することとなりました。

キャンペーン · 各省庁を22時から翌朝5時は完全閉庁し、緊急の業務はテレワークで行う体制を作ってください。(Change.org)

質問通告、早期実施に努力 与野党が一致(日本経済新聞)

 その甲斐あってか、2022年の第210回臨時国会では平均で19時台には答弁作成に着手できるようになったようです。

国会対応業務に関する実態調査 結果(内閣官房、2023年1月20日)

 しかし、質問通告が多少早くなったとはいえ、すべての答弁作成が完了するのは日をまたぐのが普通で、業務時間外に働いている点では変わっていません。そして、質問通告が定時(17時)以降となっている例もまだ少なくないようです。

 与野党が質問通告早期化で一致してるのに遅くなるのは、党の問題ではなく国会議員個人の資質に問題があるはず。調査では全体の状況については書いているのですが、どの国会議員の質問通告が遅かったかは書いておらず、そもそも個別の質問通告時間に関しては、どこにも公開されていません。

 霞が関方面からも恨み言が聞こえてくるので、「質問通告の時間をすべて公開すれば、どの国会議員に問題があるかが分かり、問題解決につながるのではないか」ということで、全省庁に開示請求することにしました。

全省庁に開示請求してみた

 ただ、質問通告の時間を開示請求するといっても、どういう形で開示を求めれば求めている資料が出てくるか分からないんですよね。

 そこで、全省庁に「第208回国会(2022年1月17日~6月15日)における本会議・委員会で国会議員が事前通告した質問(要旨)文書すべて(省庁側の受け取り時間も分かるようなもの)」と広めに指定してみました。

 問題意識が質問通告時間にあるのに、特定の質疑だけを対象とするのは良くないですからね。

 とはいえ、広めなので普通は一発で全部開示されることはなく、基本的には現実的に開示可能な範囲について担当者とすりあわせていくこととなります。官僚の働き方改革を目的に開示請求しているのに、担当者の負担を増やしすぎるのは本末転倒ですし……。

 各省庁の担当者とすり合わせた結果、基本的には「各省庁の所管委員会の所信質疑(最初の質疑)についての質問通告」に限定して開示請求することにしました。過去の質問通告時間をフェアに比較することは困難になりますが、「質問通告時間が開示されうる」と明らかにすることが、今後の質問通告早期化につながると考えたからです。

 そして、開示請求から2カ月、先行して開示請求していた経済産業省から届いた開示決定通知書がこちらです。

 そもそも文書が存在しなかったり、破棄されていたりもするので、開示が決まったこと自体は喜ばしいこと。

 ただ、ちょっと気になる文言がありました。

 不開示とした部分について、「受信日時、送付先、提出した国会議員の所属及び氏名、質問通告の内容並びに国会職員が記載した手書き部分等の各記載内容部分については(中略)法第5条第6号に該当するため、不開示とした」とあります。

 「ん??? それって全部不開示なのでは?????」と思いつつ、受け取った質問通告資料がこちら。

 ほぼ黒塗り!!!!!!!!!!
 受け取った質問通告資料は全部で7通あったのですが、すべて同じように黒塗りされていました。

 黒塗りの根拠となった行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第6号とは以下のようなもの。

 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの

 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

  公的機関の情報公開においては、当てはめようと思えば、割と何にでも当てはまる項目のようにもみえます。

 なお、開示内容に不服がある場合は、担当大臣に審査請求、もしくは行政訴訟することもできます。

 過去の判例を見ると、国立療養所南愛媛病院の社会福祉法人への経営移譲にかかる厚生労働省と地元関係者の協議会の議事録が不開示となり、取り消しを求めて訴訟となった時は、「自由かつ率直な意見交換がよりよい政策決定に資するもので、そもそも議事録も非公開前提だったので、公開すると信頼関係が失われる」ということで退けられたことがあります(高松高判平成17・1・25)。

 一方、経済産業委員会の会議録はネットでも公開されているもの。これを伏せるのか……という感じはします。

 ただ、質問通告した内容と実際の質問は異なることも多いので、質問通告の内容については国会議員の発言・表決の免責特権(日本国憲法51条)の範囲かなという気もしなくもありません。

※ちなみに2019年に質問通告の内容が漏洩した時、「国会議員の質問権の侵害にあたるのでは」という質問主意書が出たことがあるのですが、その際に政府は「具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難」と回答しています。

 でも、質問通告した内容はダメだとしても、国会議員名と質問通告時間に関しては、思想信条とは関係ないので、公開していい類の情報に思えます。

 経済産業省の担当者に尋ねると、「通告時間を伏せるのは人によって出す時間が違うので、出す時間が遅かったりすると、良くないとか分かるかもしれないから。また、質問通告はまず国会に出して、そこから省庁に降りてくるものなので、途中で何かあると記されている送信時間が実際の提出時間から離れている可能性があるため。質問通告の方法も、FAXやメールなどと人によって異なるので公平ではなくなる」とのこと。

 提出時間の遅さを秘匿することで国会議員と省庁の信頼関係が維持されることより、国家公務員の働き方が改善されるメリットの方が大きいし、提出時間から離れている場合も弁明可能なので、質問通告時間については出していいのではと僕は思うのですが、行政的な考え方としてはどうなんでしょう。

 ここは審査請求を出す予定ですが、僕は行政関係は素人でよく分かっていないので、「審査請求の理由はこう書くといいぞ!」「そもそもお前のやってることは間違いだぞ!」といったご意見などがあれば、コメントやTwitterなどで気軽にいただければありがたいです。

他省庁への開示請求状況

 経済産業省は先行して開示されたのですが、他省庁への開示請求の状況はこちらの表の通り(動きがあれば追記していきます)。

 省庁によって結構対応も違うので、質問通告時間が開示されるケースも出てくるんじゃないかなとは思っています。

省庁名 開示状況 開示部分 不開示部分の理由など
内閣府 期限延長    
デジタル庁 期限延長    
復興庁 開示 タイトル これを公にすることにより、行政事務の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあり、同法第5条第6号柱書きに定める不開示情報に該当する部分があることから、これらの部分については不開示とした
総務省 不存在   探索したものの、その存在を確認することができない
法務省 不存在   廃棄済みのため保有していない(委員会が終了した時に廃棄)
外務省 期限延長    
財務省 開示手続   当該情報を公にすることにより、議員との信頼関係が損なわれ、今後の国会質問対応等の行政事務に必要な情報の入手が困難となる等、行政事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため
文部科学省 開示 タイトル 質問通告内容等の議員が公表していない情報を公にすることにより、議員との信頼関係が損なわれ、今後の国会質問対応等の行政事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある部分については、法第5条第6号柱書きに該当するため不開示とした
厚生労働省 期限延長    
農林水産省 不存在   (委員会が終わり次第、質問文書は廃棄)
経済産業省 開示 タイトル 当該対象文書の提供を受けたFAXの受信日時、送付先、提出した国会議員の所属及び氏名、質問通告の内容並びに国会職員が記載した手書き部分等の各記載内容部分については、公にすることにより、議員事務所から本件対象文書が提供された日時、各国会議員の関心事項及び問題意識等が明らかになり、仮に議員の特定につながらなくとも、一定の範囲の議員に対しての国民からの一方的な評価や誤解を招きかねず、当該議員の不利益となる恐れがあること及び当該不開示部分を同省が一方的に公にすることにより、国会議員との信頼関係が損なわれ、今後の国会質問等の行政事務に必要な情報の入手が困難となる等、同省の事務の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあり、法第5条第6号に該当するため、不開示とした
国土交通省 期限延長    
環境省 期限延長    
防衛省 期限延長    

【追記】その後、開示された復興庁も経済産業省と同じタイプの黒塗り。

 文部科学省も同じタイプだったのですが、「お世話になっております」のようなあいさつも開示されました

 

 法務省や農林水産省などは、委員会が終わり次第、文書を廃棄しているので「不存在」とのことでした。

 また、質問通告が遅れる背景には、委員会の日程が直前に決まることも一因となっているようです。「明日やります!」といきなり決まった場合、ルール通り2日前に質問通告をすることは不可能ですよね。

 なので、委員会の日程が決まる過程、議院運営委員会の議事録を開示請求することも必要なんじゃないかなとは思っています。僕は事情を知らないのですが、ルール通り2日前に質問通告できるよう、日程は3日前には決まっているのでしょうか?

 質問通告の遅れは野党に多いとも聞くのですが、現与党が野党だった時も同じだったそうなので、特定の政党に問題があるわけではなく、構造的な問題のようです。

野党の先生(ぱらぐち|note)

 答弁作成の時間を減らして失言を狙うといった時代でもないので、公務員がよりよい働き方ができるよう、事前通告のルールが守られる状況となることを願っています。

 本当は開示請求なんかしなくても、質問通告の時間が自動的に公開されるのが一番いいんですけどね。