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コミケの評論・情報ジャンルで販売した同人誌を国立国会図書館に納本して、誰でも読めるようにした

 こんにちは、すずきです。

 今回は永田町にある国立国会図書館に来ています。

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 国会図書館は日本で出版されたすべての出版物を収集・保存する施設。蔵書数は400万点を超えており、僕は普段、新聞記事データベースを閲覧するために利用しています。

 ただ、今回は逆に、閲覧するための本を納める立場として訪れました。

 2018年末のコミックマーケット95の評論・情報ジャンルで頒布した同人誌『株主総会に行こう! すずきの潜入ドキュメント』を納本するのです。

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 「同人誌でも納本できるの?」という疑問を持つ人も多いと思いますが、実は納本は義務。

 国立国会図書館法で「原則として、頒布を目的として相当部数作成されたすべての出版物を納めなければならない。自費出版でも、相当の部数を作成し配布されているものは納本の対象」(国会図書館Q&A)と定められているのです。

 「納本対象となる“相当部数作成されたすべての出版物”の“相当部数”とはどのくらいなのか」が気になるところですが、国会図書館の担当者に確認すると「100部が目安」との回答。株主総会本はコミケに持ち込んだ200部が、おかげさまで完売したので納本対象となります。

 恐ろしいことに罰則もあって、正当な理由なく納本しなかった場合には、価格の5倍の金額以下の罰金。とはいえ、罰則は厳密には適用されていないようで、中小出版社では納本していないこともあるそうです。

 ただ、罰則は別としても、頑張って書いた本を国会図書館に保存してもらえるのは大変な名誉。株主総会本は類書が見当たらないジャンルでもあるので、社会的な意義も大きいはずです。家で保存していたら、ソースをこぼしたり、ネズミにかじられたりしますしね。

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 納本するには国会図書館に持参するか、郵送するかの2つの方法があります。せっかくの機会で担当者さんの話も聞けそうなので、直接持っていくことに。

 新聞記事データベースなどを閲覧する場合は国会図書館の東側から入るのですが、納本する場合は西側から入ります。

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 西口には「関係者以外立入禁止」との表示がありますが、建物に入ったところにある受付で手続きすれば進めます。

 手続きの際には訪問目的を描く必要があり、「納本」と書いたのですが、他にも何人か同じ目的の記述がありました。

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 中に入って右に進むと、納本の受付があります。

 受付のお姉さんに納本に来た旨を伝えると、納本申請書を渡されて名前や住所などを記入。同人誌2冊を納本して、5分ほどで手続きは終わりました。2冊納本するのは、東京の国会図書館本館だけでなく関西館にも置いてもらうためです。

 個人だと無償での寄贈しかできないのですが、法人が納本する場合は定価の半額で買い取ってもらうこともできます。ただ過去には、とある出版社が適当な中身の超高額本を買い取らせて、「不正に儲けているのでは」と指摘された事件もあったりしました。

 →謎の高額本「亞書」 国立国会図書館が発売元に返却 代金136万円も返金要請(ねとらぼ)

 申請書を書きながらお姉さんに聞いたのですが、コミケで出した同人誌かは分からないものの、個人出版の納本は年間2000冊ほどあるとか。それも、著者本人ではなく、第三者が寄贈する例が目立つそうです。

 著作権的に微妙な二次創作本でも、国会図書館としてはチェックはなし。権利主から訴えがあれば対応するとのこと。

 1月25日付の受理印を押してもらった納本受領書をもらって帰宅。

 法律上は「発行日より30日以内の納本が義務」なので、前年12月31日の冬コミに出したことを考えるとギリギリでした。

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 納本の一週間後、国会図書館からお礼状が届きます。

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 封を開けると「資料を御寄贈いただき厚くお礼申し上げます。広く公共の利用に供するとともに、国民共有の文化的資産として永く保存してまいりたいと存じますので、今後ともよろしくお願いいたします」との用紙が一枚。

 ただ、納本の手続きは終わったものの、データベースで検索&利用できるまでには1カ月前後かかるとのこと。

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 それからは毎日、国立国会図書館サーチで検索。

 2月下旬に検索に出るようになったのですが、「書誌作成中」という表示でまだ借りることはできず。

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 2月下旬に関西、3月上旬になって東京にも、右上の「見る・借りる」の項目にデータが入りました。

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 ドッキリの可能性もあるので、本当に保管されているか確かめるため、実際に借りてみることにしました。

 国会図書館は当然、館内撮影禁止なので、手続きの様子は写真で紹介できないのですが、PCで申し込みして、30分ほど待つと書庫から出してくれました。

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 自分の本をここで読むのは不思議な気分でしたが、さすが国会図書館だけあって保存状態は良好。

 表紙裏と裏表紙にバーコードのシールを貼って管理。↓のサンプル画像と同じようなもので、国会図書館の印鑑も押されているので本の格が上がった感じがします。

 表紙裏のシールには「Ⅰ種」との表示もありました。「どういう意味なんだろう」と受付の方に尋ねると、これは永久保存されるものの分類で、納本されたものは基本的にこの分類になるそうです。

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 先日、同人誌の値段が高いのではとの議論がネットでありましたが、「怪しげな本に金は出せねえ」という学生さんなどは、ぜひ借りて読んでいただければ。

 館内でしか読めないのですが、将来、研究等で国会図書館を利用する際の練習にもなると思います。

 ただし、18歳未満の場合は事前手続きが必要なのでご注意を。

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 国会図書館で読んで気になったり、国会図書館まで行けないという方は、ぜひKindle版(500円)を購入いただければ! コミケ後に改めてチェックして加筆修正している部分もあるので、買った方も再ダウンロードしてみてください。

 Kindle UnlimitedやPrime Readingの利用者は無料で読めるので、ぜひチェックしていただければ。

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■納本手続きで参考にさせていただいたブログ

国立国会図書館へ同人誌を納本してきました/クム(只今、π/(パイスラ)研究中!)

国立国会図書館に同人誌を納めに行ったよ。(夕立ノート)

プロコンの同人CDと同人誌を国立国会図書館に納本した話(SYSKEN ONLINE)

国会図書館に自主制作した本を納本してみた(私的標本:捕まえて食べる)

国会図書館に、プリキュア同人誌を納本しました。(プリキュアの数字ブログ)