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コロナ下でもネット質問受付やライブ配信なし・・・なぜ一部テレビ局は株主総会非来場者への代替措置を用意しないのか聞いてみた

 こんにちは、すずきです。

 6月は株主総会シーズン。上場企業3768社のうち、7割ほどの3月期決算企業が6月に株主総会を開催します。

 かつては総会屋が荒らしていたものですが、会社法改正で企業から総会屋への利益供与が厳しく罰せられるようになったことから、総会屋はほぼ消滅。その代わりに、株主・投資家との建設的な対話の場としての役割が問われるようになっています。

 扱うサービスを会場で展示したり、株主総会後に事業説明会を開いたり、会社見学を行ったりする企業も増えてきたのですが、コロナ下でそうした取り組みは一時休止。密のリスクを避けつつ、いかに株主総会の体裁を保って開催するかに焦点が移っています。

代替措置を用意しない一部テレビ局

 2020年4月に経済産業省が公開した「株主総会運営に係るQ&A」では、「感染拡大防止策の一環として、株主に来場を控えるよう呼びかけることは問題ない」としているのですが、良心的な企業は来場しない株主に向けた代替措置を用意しています。

 例えば、KADOKAWAパナソニックのように株主限定のライブ配信を行う企業、バンダイナムコHDのようにネットでも質問を受け付け、株主総会で回答したものについては後日概要をネットで公開する企業などです。

 一方で、株主に不親切な対応が目立つのがテレビ局(正確にはテレビ局の親会社である持ち株会社)の株主総会。株主総会の招集通知に「来場を見合わせてほしい」と書いておきながら、代替措置を用意していない企業が多いのです。

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 2021年6月株主総会のコロナを受けた代替措置を、各企業公式サイトの内容をもとに、東証の時価総額上位3企業とテレビ局とで比較したのが次の表です。

企業名 招集通知ネット掲載 事前質問ネット受付 ライブ配信 質疑応答含む概要掲載
トヨタ自動車 2012~21年 ×

トヨタイムズで
後日、掲載

ソフトバンクG 2003~21年 書き起こし+
寄せられた質問全問開示
ソニーグループ 2018~21年
日本テレビ 2021年のみ × × ダイジェスト動画を
期間限定公開
テレビ朝日 2021年のみ × × ×
TBS 2021年のみ × × ×
テレビ東京 2017~21年 × × あり
フジテレビ 2017~21年 × × ×

 事前質問は通常は郵送なのですが、ネットで送れるとなると手間が省ける上に、心理的なハードルが下がるため、コロナ下で多くの企業が取り入れるようになっています。加えてライブ配信や概要掲載があれば、会場に行く必要性が薄くなります。ちなみに日本テレビなどは、事前質問を郵送した場合でも、当日参加しないと回答しないことにしているので、結局会場に行かないとダメなんですよね。

 ソフトバンクグループでは「自社に都合のいい質問を選んで回答しているのでは」という懸念を払しょくするため、ネットで受けつけた質問を回答しないものも含め、すべて公開してもいます。「孫さん、顔が死んでますが大丈夫ですか!!」といったカオスな質問(?)もあって、担当者の苦労がうかがえます。

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 一方、テレビ局はどうか。日本テレビとテレビ東京は後日、概要をネットで公開する予定ですが、テレビ朝日、TBS、フジテレビの3局は現地に行かないと何も分かりません。コロナの問題が発生して間もない2020年なら仕方がないと思うのですが、今年も同じなのはいかがなものでしょう。

 IRに人員を割く余裕のない企業と違い、テレビ局は年間売上1000億円を超える大企業。放送が本業で各局ともYouTubeチャンネルを10年以上運営しているので、ネット中継のノウハウもあるはず。そもそも報道で他社に情報公開を求める立場なのに、なぜ自社の情報公開には消極的なのか。

 なお株主総会は議事録を作成することが法律で義務付けられています。

 そこで概要をネットで公開していなくても、議事録を見れば株主総会の詳細が分かるかと思い、概要を公開した日本テレビとテレビ東京、現地参加したフジテレビを除いた、テレビ朝日とTBSの2社に2020年秋、議事録の閲覧請求をしました。

 詳細は書かない条件で閲覧請求したので、具体的な内容には触れないのですが、僕の想像とは違い、全体的に法律的な要件を満たしているだけで、どういうやり取りが行われたかは分からない議事録となっていました(別件で2019年に閲覧請求したテレビ東京は質疑応答の詳細まで書いていました)。

代替措置がない理由を聞いてみた

 来場自粛要請に従った時、どう手を尽くしても株主総会の内容が分からないのはダメなのでは」と思ったので、テレビ朝日、TBS、フジテレビの3社のIR担当に電話で代替措置について聞いてみることにしました。

 各社の回答は次のようなものです。

テレビ朝日:ネット配信は今回、行う予定はない。議事録は去年と同じ形式で書く予定(質疑応答の詳細は書かない)。回答内容を書くかはまだ検討中。概要については、株主総会後にWebサイトで何らかの形でお知らせできればと準備を進めている。議事録に沿った内容を想定しているが、質問と回答を書くかどうかについては、弁護士も含めて検討しているところ。最低限、所要時間やどのような質問があったかは公開させていただく。株主限定ライブ配信は検討したが、技術的な問題や中断するリスク、株主なりすましの問題などの懸念があって、今回からやることについては踏み込めなかった。株主以外の方がご覧になることを、どこまで厳しく見ておく必要があるのかという問題があった。もともと株主総会自体の入場株主についても厳しくチェックしているので、それと同等のものをライブ配信でどこまでできるか検討したが、今回は結論が出なかった。今年いろんな実例や方法も紹介されるだろうから、来年以降はライブ配信も選択肢として検討していく

TBS:ライブ配信の検討はした。しかし、セキュリティや株主のみなさんが接続できるか不確かだったり、費用対効果も考えて、今回は実施に至らなかった。今後の研究課題。デジタルデバイドの問題もあるほか、つながらなくて株主さんにご迷惑をかけた時に責任をとることが大変だということもあります。ネットでの事前質問受付や、概要のネット掲載も予定していない。議事録は昨年と同じ形式(質疑応答の詳細は書かない)の予定

フジテレビ:ライブ配信や概要のネット掲載はない。『最終的にこうなりました』ということは例年通り、決議通知でお知らせするが、株主総会そのものがどうだったかというものはお出しする予定はございません。議事録には質疑応答の質問と回答も書くようにしているので、閲覧請求すれば分かるようになっている。来年以降の代替措置については、今のところ予定していない

 ・・・聞いてみると、いろいろ検討はしたようですね。「テレビ局は映像のプロなので、ライブ配信とか楽勝では」と思っていたのですが、そうでもないようです。

 とはいえ、そういうハードルを乗り越えて、多くの企業では事前質問のネット受付フォームを設けたり、6月株主総会では14%(前年比8.8ポイント増)の企業がライブ配信(バーチャル総会)を予定しているのも厳然とした事実ではありますが。

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日本テレビ、テレビ朝日、TBSは株主総会集中日に同時刻開催

 今回は代替措置に絞りましたが、そもそもテレビ局の株主総会は日程面でも問題があるんですよね。

 今年と過去3年の株主総会開催日を、東証の時価総額上位3企業とテレビ局とで比較したのが次の表です。

株主総会開催日 集中日(集中率)
2018年 6月14日:トヨタ自動車
6月18日:ソニー
6月20日:ソフトバンクグループ
6月26日:フジテレビ
6月27日:テレビ東京
6月28日:日本テレビ、テレビ朝日、TBS
6月28日(31.0%)
2019年 6月13日:トヨタ自動車
6月18日:ソニー
6月19日:ソフトバンクグループ
6月25日:テレビ東京
6月26日:フジテレビ
6月27日:日本テレビ、テレビ朝日、TBS
6月27日(30.9%)
2020年 6月11日:トヨタ自動車
6月18日:テレビ東京
6月25日:フジテレビ、ソフトバンクグループ
6月26日:日本テレビ、テレビ朝日、TBS、ソニー
6月26日(32.8%)
2021年 6月16日:トヨタ自動車
6月17日:テレビ東京
6月22日:ソニー
6月23日:ソフトバンクグループ
6月25日:フジテレビ
6月29日:日本テレビ、テレビ朝日、TBS
6月29日(26.9%)

 時価総額上位3企業は2020年はコロナの影響で開催時期を遅らせたため、ソフトバンクグループとソニーは集中日近辺の日程ですが、基本的には早めの日程。一方、日本テレビ、テレビ朝日、TBSの3社は例年、集中日の10時開始なので、同時に参加することは困難です。

 日本取引所グループのデータによると、集中日前の1週間もそこそこ集中しているので、フジテレビも参加しにくくなっています。一方、テレビ東京は以前は集中時期に開催していたのですが、2020年からは行きやすい日程に変更しています。

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 20年ほど前までは、総会屋が大挙して押しかけないよう、株主総会集中日の集中率が90%以上と高かったのですが、もうそういう時代ではないんですよね。

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 株主総会は株主との対話の場ということだけでなく、チェック機能という意味でも重要。「株主の声に従うべき」とはまったく思わないですが、問題があった時に突っ込める公的な場があることが、不正が起こりにくい土壌を作る上で大切です。

 チェック機能を期待される社外取締役が役割を果たさない例も多いですし(東芝は取締役11人中10人が社外取締役です)、有識者も番組に出演する関係でテレビ局には突っ込みにくいので。ちなみにフジテレビは2014年株主総会で、突っ込まれることを嫌がったからか、社員株主を質問に立たせて、質問した16人のうち8人が社員株主だったことがあります(決議取り消し訴訟を起こされた)。

 報道の雄でもあるテレビ局の株主総会では政治的に偏った質問も頻発するのですが、公共の電波を使って日々発信している強い立場であり、プライドを持って番組作りしているわけなので、堂々と受けて立ったらいいんじゃないかなとは思います。それが昨今低下しているテレビの信頼度を上げることにもつながるのではないでしょうか。