こんにちは、すずきです。
12月11日13時から株式会社サイバーエージェントの株主総会が行われました。ネット広告代理店として成長してきましたが、近年はスマホゲームやABEMAの運営としても知名度を上げています。
直近経営資料 | 2020年9月期決算説明会資料、CyberAgent Way 2019(統合報告書) |
---|---|
株主総会資料 | 定時株主総会招集通知 |
前回株主総会 | サイバーエージェント株主総会2019レポ|「『ウマ娘 プリティーダービー』は今(事業)年度中リリースを目指して鋭意開発中。退社した石原プロデューサーに代わり、木村唯人が取締役として関わっており、専任Pも任命している」 |
業績は増収増益。来期も増収見込みですが、営業利益は減益寄りの予想
サイバーエージェントが取り組む事業は「インターネット広告」「ゲーム」「メディア」の大きく3つ。
主力のインターネット広告事業はコロナ下で苦戦はしているものの、増収増益を確保。四半期ベースでみると、第2四半期(1~3月)までの貯金が大きく、第3四半期(4~6月)が売上横ばいで減益、第4四半期(7~9月)が増収減益。
先行き不透明な中、ここをいつ増益基調に戻せるかが、サイバーエージェントだけでなく、ネット広告業界全体の行方を占う上でも注目されます。
電通の「日本の広告費」によると、2019年にネット広告の規模がテレビ広告を超えています。サイバーエージェントの時価総額が一時、電通を超えるなど、ネット広告業界にとってはひとつの到達点に達した一年と言えるかもしれません。
ゲーム事業は巣ごもりの恩恵も受けて、増収増益。
タイトル別では2014年度作品のグラブル、2018年度作品のプリコネが大きく貢献しています。新作の『この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ』『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』も好調なようです。
ちなみに第1四半期資料では、好調な新作として『ワールドフリッパー』『ブレイドエクスロード』が挙げられていたのですが、調整ミスで大失速したからか、通期資料では存在が消されていました。
今後の新作で注目されるのはやはり『ウマ娘 プリティーダービー』。通期決算資料で「2020年提供予定」と書いてあるのですが、もう12月も半ば。
TOKYO MXなどでのアニメ再放送の最終回が12月27日で、「ぱかライブTV」Vol.2を12月に予定していることから、「その付近で何か動きがあるんじゃないかな」と個人的には予想しています。
【生放送情報!】
— ウマ娘プロジェクト公式アカウント (@uma_musu) December 11, 2020
「ぱかライブTV Vol.2」の放送が12月19日に決定!ウマ娘のキャストをスタジオに迎え、先日発表したTVアニメ第2期に関する情報やゲームの最新情報、さらに『ウマ娘』の新たな展開を盛りだくさんでお届けします!https://t.co/GnFQdYxTo5#ウマ娘 pic.twitter.com/Ayfkhv0JKc
売上規模は最小ですが、現在の最重点項目となっているのがメディア事業。藤田晋社長自らがAbemaTV社長として指揮をとっています。その甲斐あってか、週間アクティブユーザーは増加基調。
一方、業績は増収減益で、年間180億円の赤字は改善していません。ただ、今期は特に第4四半期が売り上げが大きく伸びています。
売上増加の大きな要因となったのがペイパービュー。
iPhoneの9月セールスランキング推移を見ると、9月19~26日のLDH祭りに合わせて、ABEMAがランキングを上げているのが分かるでしょう。
ただ、ペイパービューに加えて、月額課金のABEMAプレミアムも伸びているのに、先行投資がかさんでいることから赤字が減らないんですよね。「無理に黒字にしようとしていない」とは言えるのですが、先行投資の影響がなくなったらどうなるのか気になるところです。
ここ一年の主な動き
2019年11月27日 スマホゲーム『ワールドフリッパー』配信開始
2020年1月14日 タレントYouTubeチャンネルの企画・開発支援サービスを開始
1月29日 プロレスリング・ノアがサイバーエージェントグループ入り
2月27日 スマホゲーム『この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ』配信開始
春 テレビ朝日×AbemaTV初の共同制作ドラマ『M 愛すべき人がいて』をAbemaTVで独占配信
5月27日 テラスハウスでの木村花さんの訃報を受けて、「ABEMA」が番組出演者向けに誹謗中傷等インターネット上の被害に関する相談窓口を設置
6月5日 ABEMAが有料オンラインライブ「PayPerView」機能をリリース
6月15日 LDH JAPANとの合弁会社CyberLDHを設立
7月27日 プロレス事業会社CyberFightを設立
9月30日 スマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』配信開始
議案
(1)剰余金処分→期末配当金を1株につき34円に
(2)取締役5名選任→監督と執行を区分するため、取締役を大幅減員
前年株主総会 | 今回候補者 |
---|---|
藤田晋 | 藤田晋(創業者、代表取締役社長) |
日高裕介 | 日高裕介(共同創業者) |
◆岡本保朗(ネット広告) | 中山豪(全社機能管轄) |
中山豪 | 中山恒一(社外、元リクルート副社長) |
◆小池政秀(AbemaTV) | ◇高岡浩三(社外、元ネスレ日本CEO) |
◆山内隆裕(CyberZ社長) | |
◆浮田光樹(アプリボット社長) | |
◆曽山哲人(人事) | |
◆内藤貴仁(広告技術・デザイン) | |
◆長瀬慶重(AbemaTV開発) | |
◆山田陸(AbemaTV広告) | |
中山恒一 |
今回、大きく役員体制が変わるので、創業以来の取締役メンバーの変遷を動画でまとめてみました。
役員体制を大きく変更するのは、昨年の株主総会で議決権行使助言業者が外部取締役比率の低さから、藤田晋社長選任の反対推奨をし、その結果、賛成比率が57.56%と非常に低くなったことを受けてのこと。
ちなみに、現社内取締役TwitterのFF関係は以下の通り(相互は赤線)。みんな基本的に相互フォローなのですが、一部つながっていないところがありますね。
日高裕介さんは最終ツイートが2012年ということもあり、片思われが多め。最年少役員の山田陸さんは片思いが多めで、役員内での立場の低さを感じます。藤田晋社長は唯一、山田陸さんだけ未フォローなので、フォロー返してあげるといいのでは。
(3)ストックオプションとして新株予約権を発行→内部取締役3名(予定)を対象に、25万3000株上限。行使期間は割当日の4年後からの6年間。権利行使時にサイバーエージェントに勤めていることが条件
株主総会の実況解説配信
サイバーエージェントでは新型コロナ拡大を受けて、来場自粛のお願いと、ライブ配信実施を発表しています。
僕のTwitter(@michsuzu)で「#サイバーエージェント株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしたので、ここでまとめておきます
定刻の13時になって株主総会開始。議長は藤田晋社長。会場参加者数は50人ほど、ライブ配信閲覧者は80~100人ほど。株主数報告や監査報告は簡略化して、映像で事業説明。内容は招集通知や決算説明会資料と同じ #サイバーエージェント株主総会 https://t.co/dKSdDZHL2h https://t.co/OK1USiXOfb pic.twitter.com/iZX4TfJUHv
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
13時15分に質疑応答開始。基本的に1人1問とのこと。最初に誰も手を挙げる人がいなかったので、藤田議長が「ないですか?」と会場に問いかけると、質問者が登場 #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
Q ABEMAの年間制作費はいくらくらいか。将来的にどのくらいかかると見込んでいるのか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
小池政秀:年間制作費は190億円前後 #サイバーエージェント株主総会 https://t.co/puT1l9Dvzl
Q 将来的に制作費は増加していくと思うが、どのくらいと見込んでいるか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:ビジネスモデル的にもマーケット的にも新しい事業をやっているので、事業の進捗を見ながら、制作費の規模は柔軟に変えていく。基本的には売上規模も制作費も大きくしていこうと考えている #サイバーエージェント株主総会
Q 具体的な額は。来年200億円とか、再来年は300億円とか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:毎年予算を決めているが、その時のマーケット環境や売上の伸び方、競争の状況も見ながら決めているのが実情 #サイバーエージェント株主総会
Q メディア事業の赤字が続くのはいいが、制作費で他の大手と競り負けてる感じがするので、増やしてほしい
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:年間制作費は民放が1000億円弱、NHKが約3000億円。世界ではNetflixやAmazonが非常に大きな制作費。その中で戦えるか見ながら、身の丈の中で判断している #サイバーエージェント株主総会 pic.twitter.com/rQijjfWUvB
Q Netflixの今年の制作費は2兆円近いと聞く。ディズニーやコムキャストも制作費をかけている。こういう事業で成功するためにはそれなりに制作費がかかるのでは #サイバーエージェント株主総会 https://t.co/cWrFNHiGsn
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:ハリウッドと同じで、世界市場を対象にしている企業は、それくらいの規模になる。日本市場だけだと限界がある。それも踏まえて、我々がマーケットを広げるのと並行しながら、制作費も増やしていきたい #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
Q 制作費は民放やNHKの額を意識して増やしていくのか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:把握はしているが、意識はしてない。WOWOWやスカパーの制作費も300~500億円と把握しているが、意識してない。ネットは今までのビジネスモデルとは違う。それらをにらみつつ、制作費が大きいところに #サイバーエージェント株主総会
藤田:優秀なクリエイターや出演者が流れるので、そういう中で勝てる戦略を考えながら、予算規模を決めていく
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
Q ABEMAの海外展開は
藤田:来年以降は市場を海外に広げていくのが一番重要な命題。いつまでも日本国内だけで競争してるわけにはいかない #サイバーエージェント株主総会
Q 具体的な国や地域は
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:話せるような内容ではないが、Netflixみたいな予算規模で制作するのは無理なので、グローバルに通用するようなニッチ市場を探して展開していく #サイバーエージェント株主総会
Q 今現在、広告代理店の事業所を置いている国や地域と考えていいか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:それはまったく関係ない。広告ビジネスではない形、直接課金する形で考えている #サイバーエージェント株主総会
Q ABEMAの赤字が続いているが、何年後くらいに黒字化すると想定しているか。どういう状況になれば黒字化するのか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:「黒字化が何年後か」は一切答えないようにしている。上場企業20年やっているが、何か喋ると必ず公約になり、事業展開していく上で支障をきたす #サイバーエージェント株主総会 pic.twitter.com/cpNRP4X6ml
藤田:決算説明会でも、ファンドマネージャーとの会合でもそう言っている。「朝起きて新聞を読む」「家に帰ってテレビを見る」とか、基本的にメディアは視聴習慣を作ると勝ちになる。長く続けるほど成功確率が上がると考えている。できるだけ長期間で立ち上げたい #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:メディアで取材を受ける時は「10年がかりで立ち上げている」と言っているが、今、4年経ったところ。もうすぐ半分経つが、長い目で投資を続けながら、規模を拡大する。WAU(週間アクティブユーザー)を増やして、広告課金だけでなく、周辺ビジネスの売上も伸ばす #サイバーエージェント株主総会 pic.twitter.com/XotYWAtY89
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:シンプルに言うと、見てる人を増やして、売上も増やす。無理やり黒字を目指すのではなく、自然と損益分岐点を超えて、利益を出していくのが理想
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
先ほどの話でもあったが、制作費は市場で事業が成功する規模がベースだが、 #サイバーエージェント株主総会
藤田:一方で、全社の売上利益をあげていく上で、アナリストの予想数字のコンセンサスから、株価を維持できそうな水準を考えながら、投資額を決めている。逆に言うと、他の事業が順調なうちは投資していくが、そこが狂うと事業計画を修正していかざるを得ない #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
Q 2号議案について。役員の数を大幅に減らす理由を説明してほしい。今後の取締役会の役割は
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:「全体の方向性としては、当面は取締役の数を増やして、あるタイミングでシェイプアップする」と社員総会でも説明していたが、いつか来るタイミングではあった #サイバーエージェント株主総会 pic.twitter.com/ke4RxRYpmV
藤田:昨今のコーポレートガバナンスを強化していく流れ、国もそういう方向性を打ち出しているが、社外取締役比率3分の1以上を達成するために、このタイミングで監督と執行を分けて、取締役会は本来の役割通り、監督の役割に徹することにした #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:(現状の)各役員は執行役として日々の執行を行うということで、監督のために残る役員は常勤からは3人として、社外取締役との比率を50対50とした #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
Q 事業報告で人材の強化について触れていたが、御社にとって優秀なクリエイターとはどういう人を指すのか。また、育成ではどういうことをするのか
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:優秀なクリエイターの定義はひとことでは言いずらい #サイバーエージェント株主総会 pic.twitter.com/CVEJMxn0hy
藤田:例えば、ゲーム部門で一番高収益なCygamesには優秀なクリエイターが集まっていて、ものすごい金額の制作費を使っているが、それだけに世界水準でも最高クオリティのゲームを送り出していて、ユーザーに支持されている #サイバーエージェント株主総会 https://t.co/XWcTJll08Y
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
藤田:世界水準で通用すること、世界的にみてもオリジナリティがあることが企業価値で、会社の競争力となる。そういったクリエイターを確保し、育てること、活用できる場を作ることが、企業価値を上げることにつながる #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
Q 優秀なクリエイターの採用基準は。ゲームだとリリースしないと分からないこともある
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
曽山哲人:クリエイターは学生と中途の両方を採用している。基本的にポートフォリオ、制作物がもともとある状態の人が対象で、 #サイバーエージェント株主総会
曽山:それをサイバーエージェント社内のクリエイター幹部で議論して決める。それとは別にインターンシップもしていて、課題に対する制作物をどれだけ作れるか、どれだけの人の心を震えさせられるかをみて、判断している。なるべく早く経験を積めるようにしてる #サイバーエージェント株主総会
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
手を挙げる人がいなくなったので、質疑応答終了。議案採決に移り、3案とも問題なく可決。最後に新任取締役の高岡浩三さんが「これまでの私自身の経験に加え、みなさんのご指導もいただいて、誠心誠意努めていきたい」とあいさつして、13時32分に株主総会終了 #サイバーエージェント株主総会 pic.twitter.com/Ic0gviuyBL
— すずき📊サイバーエージェント株主総会📈 (@michsuzu) December 11, 2020
取締役会の構成を変えて、社外取締役の比率を高めたことが評価されてか、藤田晋社長選任議案の賛成率が昨年の57.56%から95.6%へと、大幅に改善しました